林を抜けると、とつぜん新しい世界が眩いばかりに出現した。
そこは、コスモスの花ざかりだった。
かつて出会ったものやいま目の前にあるもの、さまざまな季節の記憶がゆるやかに揺らいでいる。どこから来てどこへ行くのか、賑わいと静けさの風が通りすぎていく田舎の、無人駅のような花の駅である。
風が吹くと花の旅立ちがはじまる。どこかにもっと、すてきな世界があるのだろうか。夢想しながら、コスモスの風に運ばれていく。
*
コスモス
ネットオークションで
小さな駅を買った
小さな駅には
小さな電車しか停まらなかった
小さな電車には
家族がいっしょに乗ることができない
いつのまにか一人ずつ
手を振りながら家を出ていった
せっせと駅のまわりに
コスモスを植える
秋になると満開になって
小さな駅は見えなくなった
風が吹くと
コスモスの花がくるくる回る
耳をすますと遠くで
かすかに電車の音がしている
(2011)
ネットオークションで
小さな駅を買った
小さな駅には
小さな電車しか停まらなかった
小さな電車には
家族がいっしょに乗ることができない
いつのまにか一人ずつ
手を振りながら家を出ていった
せっせと駅のまわりに
コスモスを植える
秋になると満開になって
小さな駅は見えなくなった
風が吹くと
コスモスの花がくるくる回る
耳をすますと遠くで
かすかに電車の音がしている
(2011)