風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

白い線路が続いている

2016年01月30日 | 「詩集2016」

白いチョークで
2本の平行線を引きながら
少年の線路は延びていく
始発駅は細い路地のどんづまり
そこには
大きな猫がいた

線路をたどると
記憶の始まりに行きつく
駅と駅を正確につないでいくように
単調な遊びをくりかえす
少年は電車になりたかった

2本の線を引きつづける
手にもったチョークが鉛筆にかわり
鉛筆がマジックペンにかわり
マジックペンがマウスにかわっても
どこまでも線路は延びていく

夢の中から夢のそとへ
景色の中から景色のそとへ
少年の中から少年のそとへ
運んでゆき運ばれてゆく
背中を押す手は
白い線路をつなぐ白い手だった

その先にはいつも
もうひとつの駅があった
長い旅の途上で待っているのは
もうひとつの電車と
どんづまりの古い路地の
白い猫だった





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