中国製の入れ歯や差し歯などの「義歯」を巡り、全国の歯科技工士81人が、国を相手取り、海外への義歯製作の委託禁止などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。
国内では、義歯を製作できるのは歯科医と歯科技工士に限られているが、海外品については規定がない。国は「歯科医が安全と判断すれば輸入は自由」との姿勢だが、技工士側は「無資格者が作っており、放置すれば健康被害を招く恐れがある」と猛反発している。
入れ歯や差し歯、欠けた歯へのかぶせ物などは通常、歯科医が個々の患者の歯型や体質に合わせ、歯科技工士に指示して一つずつ作らせる。歯科技工士は国家資格。無資格者の義歯製作は歯科技工士法で禁じられており、違反すると懲役1年以下の罰則もある。
一方、訴状などによると、近年、主に中国から輸入された義歯が医療現場に浸透。日本の歯科医の指示を中国の技工所に伝え、製作された義歯を輸入する業者も現れた。医療保険は適用されないが、値段は日本で作ったものの半額から3分の1程度。近年、歯科医間の過当競争が進んでいることから、コストダウンを図るための需要は多いとみられ、全国保険医団体連合会が7月に緊急調査したところ、全国2008か所の歯科診療所のうち130か所が「海外発注の経験あり」と回答した。
訴訟で原告側は「義歯製作が厳しく規制されているのは、人の口の中に入れるものだけに安全性を確保する必要があるため。海外なら無資格者がどんな材料を使って作ってもいい、というのでは法律の趣旨に反する」と主張。厚生労働省歯科保健課は「安全性は歯科医が責任を持って判断できるし、海外製義歯の危険が具体的に明らかになった例もない」と反論する。
同省は2005年、「海外品は材料の性状が明確ではない」として、患者に材料などを説明し、同意を得て使うよう求める通達を出した。年度内に海外製義歯に関する研究班を設置し、実態を調べる予定だが、原告代表の歯科技工士、脇本征男さん(66)は「何のために歯科技工士という国家資格があるのか。患者への危険が明らかになってからでは遅い」と話す。
(一部抜粋、続きあり)
(2008年9月5日14時31分 読売新聞)
「何のために歯科技工士という国家資格があるのか。患者への危険が明らかになってからでは遅い」 その通りだと思います。厚生労働省歯科保健課の態度には首をかしげてしまいます。
このニュースを読んで、はっきり言って心配になってきました。義歯やつめものは口に入れるものなので、歯科技工士がしっかりチェックして当然だと思います。厚労相歯科保健課ー「安全性は歯科医が責任を持って判断できるし」・・歯科医が素材のチェックなどできないでしょう。「海外製義歯の危険が具体的に明らかになった例もない」と反論する。」・・って、危険が明らかになるまでは輸入品はチェックしないでOKということですか。(こういう姿勢だから、厚労省は次から次へと問題が起こるのですね。妙に納得してしまいました・・。) これでは、国家資格である歯科技工士は要らないことになってしまいます。国産のものは歯科技工士が責任をもって作る必要があり、違反すれば罰則ありで、輸入品は歯科技工士の手を経る必要はないって、おかしくないですか?