Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

お人好しバカ、反撃する

2016-02-05 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
また月曜日か‥



怒涛の週末が過ぎ、再び月曜日がやって来た。

しかし何も変わらないなんてことはなくて、その証拠にこの二人の関係は、

明らかにおかしなことになっている‥。



物凄い形相で後ろをじっと睨む聡美と、それを睨み返す太一。

雪は振り返りこそしなかったが、二人が同じ表情をしていることは見なくても分かった。



いつも雪&聡美と一緒に居る太一が一人離れて座っているのを見て、同期は不思議そうにしていたが、

太一は不機嫌そうに「フン」と言うだけだった。

ドロドロとしたオーラを隣と後ろから感じながら、雪は白目を剥いて自身に言い聞かす。

私は‥もう知らんぞ‥





健太、ファイティン!このまま大企業に就職よ!



一方同じ教室の片隅で、柳瀬健太の携帯が震えた。

そこに表示された母からのメッセージを見て、健太は大きな声で嘆き出す。

「あー!マジで‥!就職就職就職!」



なかなか就活が思うように行かず、健太は苛立っていた。

クッソ‥もっと頑張っておくんだった‥

面接がダメだったら試験‥!くそぉー!


「あたし直美の話聞いたけどさぁ」



頭を抱える健太の近くで、女学生達は過去問盗難事件のことについて大っぴらに話し合っている。

「海にもどうして過去問あげたんだとか何とか言ったんだって?」

「そうみたいですよー」

「マジありえないね。どうしてそんなこと出来るんだか。

あげるのは嫌だけど、盗むのはアリってこと?」




その直ぐ側に、糸井直美が居た。

直美がその話を聞いていることに気づいた彼女らは、素知らぬ顔で話題を変える。

「あ、てか今度あのネイルサロン、キャンペーンで安くなるみたいよ」「マジですかー?」



悔しそうに顔を歪めながら、直美はそのまま足早に離れた席へと向かった。

そんな光景を、雪はじっと見つめている。



どうやら直美さんの友達は、もう完全に彼女をハブる流れのようだ

まだ三年生なのになぁ‥



眉間に皺を寄せて考え込む雪の隣に、柳が「赤山ちゃんオハヨー」と言いながら着席した。

しかし雪の胸中は過去問事件と糸井直美のことでいっぱいだ。

私はただ誰がやったのかを知って決着をつけたかっただけなのに、

まさかこんな風に事態が展開していくなんて‥




想定外の事態へと転がって行く現状を前にして、雪もまた戸惑っていた。

けれど今の状況を、冷静に客観視する自分も居る。

勿論率直な感想は、



机に過去問を置いた人も問題だけど、それを破いて捨てた直美さんも共犯といったら違いない



たとえあの弁解が事実だとしても、

過去問をそのまま私に返してくれていれば、こんなことにはならなかっただろう。

結局本人が、まるで自分が犯人であるかのような墓穴を掘り、今のような事態を招いてしまったのだ。




客観的事実はもう分かりきっている。

けれど割り切れないのは、直美の横顔を見て感じる、自身の心だ。

けど‥あんなに悔しそうな顔をされてしまっては、気にせざるを得ない‥



すると突然、柳瀬健太が皆に向かって口を開いた。

「みんな止めよーぜぇ」



「人をそんな風に追い詰めるもんじゃねーよ」



まぁまぁ、と言いながら女子達に近づく健太を見て、

また首を突っ込んで来た‥ と雪は思った。

そんな健太に向かって、黒木典は自身の言い分を口にする。

「だって謝るならともかく、

ずっと自分は間違ってないって言い張ってるじゃないですかー」




その典の言葉を聞いた健太は、「ま~それはだな」と前置きをした後、

雪の方を見てウインクを飛ばした。

「赤山が許せば全て丸く収まることなんだけどなっ」



はは?



いつもながらのウザめなその言動に、肩をすくめて乾いた笑いを立てる雪。

そのまま頭を抱える彼女を見て、柳がこう声を掛けた。

「赤山ちゃん赤山ちゃん、

糸井とちゃんと話してみた?この空気感、やっぱ嫌な感じじゃね?」


「いえ、特に何も‥」



いつも現状に頭を抱え、予測できない出来事に振り回されている自分。

すると頭の中で、聞き覚えのある声がした。

もっと凛として生きてみろっての。このお人好しのバカが



そう言ったのは、河村亮だった。

言われてやたら腹が立ったのは、きっとそれが図星だからー‥。



いつまでも”お人好しのバカ”ではいられない。

亮の一言が、雪をそこから一歩踏み出させる‥。





雪が鋭い視線を送る先に居るのは、黒木典と話をしている柳瀬健太だ。

雪は彼から視線を外さぬまま、隣に座る柳に向かって静かにこう言った。

「いずれにせよ」



「話をするなら健太先輩と、です‥」



柳はそう口にした雪の横顔を、じっと凝視していた。

あくまで口調は冷静で、その表情は極めて真面目だ。



それでもやはり柳瀬健太への苛立ちを隠せない雪だったが、柳はそれももうあまり気にならなかった。

先程の彼女の言葉とその態度で、真犯人が一体誰なのかが、ハッキリしたのだから‥。

「‥‥‥‥」






そして健太の携帯は、ひっきりなしに母からのメールを受信し続ける。

健太!健太よ!ファイティン!

弟達は内定ゲット‥




伸し掛かるプレッシャー。思わず健太は頭を抱えた。

あーーーもう止めてくれ!

ちっとは気ぃ遣ってくれよ!




健太は三人兄弟の長子だが、

未だ就職出来ていないのは自分だけになってしまったのである。



ノートに赤字で丸された数字の10の後には、「卒業試験合格発表日」と書いてある。

「クソッ‥」



健太は焦燥を持て余しながら、一人悶々とし始めた。

つーかどうしてメール来ねーんだよ?まさか面接落ちた‥?!



このままじゃ駄目だこのままじゃ‥!

ただでさえこの前卒業試験落ちたってのに‥面接も落ちて卒験も落ちて‥ってマジでヤバイって!!

俺がどんだけ苦労して大学生やり続けたと思ってんだ!




どんだけ‥!



柳瀬健太、二十九歳。

何度後輩が先に就職し、卒業して行くのを見て来ただろう。

絶対にもう留年は出来ない、そんなプレッシャーが、健太をおかしな方向へと向かわせてしまったのだ‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<お人好しバカ、反撃する>でした。

雪に焦点が当たるこんなコマでも‥↓



聡美を睨む太一が印象的ですね(笑)


さて次回は<事件簿・その顛末>です。


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多忙な週末

2016-02-03 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
ありえない金曜日までの一週間が、こうして終わった。



なんという一週間だったろう。

過去問盗難事件があり、そのせいで色々なことに振り回された。

しかし時の流れは恐ろしく早いもので、気がつけば雪は再び大学へと登校しているのだ。



そして週末も、あっという間に過ぎて行った。



本当に一日は二十四時間なのだろうか。

自分の周りだけ、その半分以下の時間で地球が回っているとしか思えない‥。



雪は白目を剥きながら、瞬速で過ぎて行ったこの週末のことを思い出していた。

土日の間は‥




まず、金曜の夜。

あの亮との対話の後、雪はなかなか気分を切り替える事が出来なかった。

「ああご立派な二人だこと‥!」



雪はブツブツ言いながら、ノートに河村姉弟のイラストを描いて、

それをペンでぐしゃぐしゃと塗り潰した。

怒り‥!



「ああご立派!ああご立派だこと!

いい加減に!いい加減にしろこいつらぁぁ!!」




その怒りをぶつけるように、夜遅くまでずっとPCを叩いていた。

土曜の朝は少しゆっくり出来るかと思ったが、それは突然の出来事によって白紙になる。

聡美の襲撃

「ゆきぃぃぃぃ~!」



なんといきなり、聡美が雪の実家に訪ねて来たのである。しかも号泣しながら。

「大げんかしたのぉぉ!太一のヤツとぉぉぉ!うぉぉぉん!」



玄関先で大きな声を上げて泣く聡美を、両親も蓮も驚きながら眺めていた。

雪はなんとか彼女を自身の部屋へと連れて行き、なだめながら話を聞く。

「どーしたのよ?!ほら水飲んで

「分かんない‥いきなり超怒り出して‥」



聡美は膝を抱えながら、太一と喧嘩をしてしまった現状を猛烈に後悔していた。

「もうホントに終わりだぁ‥」

「ええ‥何言ってんの‥ちょ、ちょっと待ってね」



雪はアタフタしながら、とりあえず太一に電話を掛けた。

しかし太一は言葉少なに、ただ一言こう言ったのだった。

「俺‥考える時間が必要みたいっス」






スピーカーモードの太一の声は、隣に座っている聡美にももれなく届いた。

すると先ほどまでメソメソしていた聡美が、その答えを聞いて立ち上がる。

「あったま来た‥!おいこのガキ!時間って何よ時間って!

アンタ年下でしょ?!謝ったりはしないわけ?!」


「特に話すことはありまセン」「ちょ、ちょ!一旦切るから!」



雪が慌てて電話を切ると、聡美は再び大きな声で泣き出した。

そしてシクシク泣き続ける聡美を、長時間掛けて雪は慰めたのである‥。



そして、またデートのターン‥。

「そっか、仕方ないね」



その夜、雪は重たい気持ちを押して先輩に電話を掛けた。

明日、約束していた映画にはどうにもこうにも行けそうにない。

「ごめ‥本当にごめんなさい‥先輩‥」



雪は罪悪感に押し潰されそうになりながら、「ああ‥私もうめちゃくちゃだ‥」と小さく呟いた。

そんな雪に向かって、電話越しの先輩は優しく声を掛ける。

「雪ちゃん」



「俺は、雪ちゃんが俺と会うのを負担に思わないでいてくれたら嬉しい」

「え?!違いますよ!負担だなんてそんな‥!」



突然そう切り出した彼の言葉を、雪は弾かれたように瞬時に否定した。

しかし彼はまるで全てを見透かしているかのように、その話を続ける。

「忙しさに追われてる時って、周りのこと全てが負担に感じられるからね」

「‥‥‥‥」



そう言われて、雪はぐっと言葉に詰まった。

確かに先輩とのデートの約束が、課題や勉強の負担になっていたことは確かだからだ。

「俺が会おうって言ったって、絶対そうしなきゃって無理する必要は無いよ。

毎週デートするのも、電話するのも義務的に考える必要はないし」




まるで心の中を覗かれているかのような、彼の言葉。

雪は微かな違和感と共に、穏やかな彼の声を聞いている。



「俺はね、雪ちゃんがこういうことに囚われちゃうよりも、

気を楽にさせてあげる恋愛がしたいんだ。雪ちゃんにとって、そういう存在でありたい。

でも今、俺のことが雪ちゃんの負担になってるんだよな。ごめん」


「そ、そんなことないです!」



そう言ってどんどん持論を展開していく彼に、雪は大きな声でそれを否定した。

フォローするその言葉を、必死になって探しながら。

「先輩はその‥もう十~分過ぎるくらい私に気を遣って下さってますし‥?そのー‥」

「はは!」



きっとその慌てた様子が、電話越しにでも伝わったのだろう。

先輩は優しく笑うと、押し付けがましくない程度で彼女を楽にさせる提案をした。

「財務学会の課題が手に余るようなら連絡して。

一緒に勉強するのもデートだって考えてくれてもいいし」


「分かりました。ありがとうございます」



雪は頭を掻きながら礼を言い、そして二人はおやすみを言い合って電話を切った。

先ほどまで彼の声がしていた電話が、しんと沈黙する。







自分と先輩は確かに”彼氏”と”彼女”のはずだ。

はずなのだが、いつまでたっても対等になれない、なんとなくそんな気がした。

私は先輩に対して、またこんな風に謝って、ペコペコして、

申し訳なく思って‥これが、私の”恋愛”‥?




今胸の中にぼんやりと感じている違和感を、雪は心の中で言葉にしようと試みる。

恋愛というものはお互いを思いやることのはずなのに、

先輩はいつも私の気持ちをまず汲み取って、私が欲しい答えを先に差し出したりする




そしていつも、彼の気持ちはよく分からない。

ああ言ってる先輩だって、忙しくないはずないのに‥



雪の頭の中に、一年前の情景が浮かぶ。

あれはまだ彼が、世界で一番遠い存在だった時のこと。

その時のことを思い浮かべながら、雪は今の自分を省みる。

私は‥

私はあの人の為に、彼が望む何かをしてあげたことがあったかな









彼と会う時は楽しい話だけしようと、雪が決めたのはいつも彼がそう在るからだ。

いつも自分のことを考えてくれる彼の為に、自分は彼の望む何かへと、手を伸ばそうとしたことがあっただろうか‥。






ふと、机の上に置いてあるPCや教材が目に入った。

そこにはまだまだ完成までは程遠い課題や、やりかけの勉強が残っている。

「‥‥‥‥」



はぁ、と息を吐いて、雪は気持ちを切り替える用意を始めた。

とりあえずこれらをやっつけてしまわない限り、彼に会うことすら出来ないから。



そして課題、課題、課題、勉強、勉強、勉強



これが、この一週間の間にあったことだ。




多忙な週末が駆け抜けて行き、そしてまた月曜日がやって来る‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<多忙な週末>でした。

途中出てきた河村姉弟の落書きは‥



スンキさんのお友達が描いてくれたそうですよ。お上手!


さて聡美はなかなか素直になれませんねぇ。太一ともどんな喧嘩をしたのやら‥。あぁもどかしい‥。


そして先輩との電話。

忙しい雪ちゃんにとっては、こうやって先回りして自分の欲しい答えをくれる彼氏って理想なのでは?!

と思っちゃいますが、雪ちゃんにとっては逆に負担‥というか心苦しくなっちゃうんでしょうね‥。

う~ん‥。


次回は<お人好しバカ、反撃する>です。


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彼との対話(4)ー決別ー

2016-02-01 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
「河村氏、今わざとイチャモンつけてるでしょ?」



雪は亮の行動の本質を見極め、困惑した表情でそう問うた。

彼女の鋭い感性を前にして、亮はぐっと言葉に詰まる。



きまり悪くなった亮は、掴んでいた腕をバッと離した。

「何言ってやがんだ」



「わざとじゃねーよマジで言ってんだけど?!

やっすい給料で働くバイトが欲しいんなら他当たれオラァ」


「だからさっきからそういうの‥」



いくら凄んだ所で、本質は雪に見破られている。

しかし亮はそれでも悪役の仮面を被り、意地悪い物言いを更に続けたのだった。

「社長にも言っとけよ。これからバイト雇うんなら給料十分に払えってな。

どんなに人が良かろうが、結局世の中カネなんだよ」




「この‥」

「それに何度も言ってっけど、お前マジでカモ体質だよな。イタイわー」



亮はそう言って、今度はその矛先を雪へと向けた。

「クソビッチに本までやってよぉ。こんなモン‥」



「自分からカモられに行くみてーなモンよ?」



落ちた本を拾った亮は、それを皮肉と共に雪に押し付けた。

徹底的に悪者になる、それが亮の目的だ。

「こんなんいらねぇから、持って帰れよ。捨てるなり売って菓子買うなり好きにしろ」



そして亮は、雪に向かってこう言い放った。

「もっと凛として生きてみろっての。このお人好しのバカが」



乱暴な物言い。けれどそれは亮の本音だった。

そこに掛かる気掛かりや心配を、口や態度に出さないだけのことで。

「あーマジめんどくせぇ‥」



亮はそう言いながら、倉庫の出入り口の方へと視線をやった。

このままドアを出て行けば、もう彼女が自分に近付いてくることも無いだろうーー‥。



ぐいっ!



すると後ろから、凄い勢いでシャツを引っ張られた。

重心を崩された亮は、驚いて大きな声を上げる。

「な、何だぁ?!」



亮は思わず口をあんぐりと開けて固まった。

なぜなら自身を睨む雪の形相が、今までに無いほど凄まじいものだったからだ。



雪は顔を赤くし青筋を立てながら、強い力で亮の胸に本を押し付けた。

「持って帰って下さい!」「あぁ?!」



「このガキ‥」



亮は思わずカッとした。

せっかく雪と静香との繋がりを断とうと悪役になったのに、またその本が戻って来たからだ。

「いらねぇっつってんだろ!!」



亮は声を荒げながら、伸ばされたその手を乱暴に振り払った。

本は勢い良く空を舞い、再び地面へと落ちる。






佐藤から預かったその本が叩きつけられるのを、雪はただ目で追っていた。

バサリと地面に落ちたその無機質な音を聞いた途端、先ほど亮に感じていた猛烈な怒りが、すっと冷める。



「あぁ、そうですか」



雪は抑揚のない声でそう言うと、落ちた本を手に取る為に上半身を屈めた。

亮は力加減が出来なかったことを後悔し、聞こえない程の小さな声でこう口にする。

「このっ‥馬鹿力がっ‥」



しかし雪が本を拾い再び顔を上げた途端、亮はピタと止まって固まった。

自分は今悪者なのだ。またしてもそれを見破られるわけにはいかない。



すると雪が、突然冷静な声でこう言い始めた。

「はい。分かりました」



「もういいです。止めます」



しかしその声のトーンとは裏腹に、彼女の顔はみるみる歪んで行く。



ぎゅっと拳を握りながら、雪は抑えていたその気持ちを口にした。

「自分から先に友達だって言ってきたくせに、

一体何でこんなことをするのかは、最後まで話してくれないんですね。

しかも自己中だしこんなの八つ当たりだし、イミフなのはそっちですよ」




「は?いやそれは‥」「はいはい、その通りですよ」



口を挟もうとする亮の言葉を遮りながら、雪は一本調子で話を続ける。

「私が一方的に勘違いしてたんですよね。

河村氏を家族のように思って未練たらしくグチグチグチグチ。

色々みっともないとこお見せしちゃいましたよね」


「は?おいダメージ、そりゃ‥」



俯きながら言葉を続ける雪。亮はどこか恐ろしいものを感じながらそれを聞いた。

「河村氏の言うとおり、もう連絡も待つこともしませんから‥」

「お‥おお。そうしろってオレが‥」



そして次の瞬間、雪は再び凄まじい形相で亮に噛み付いた。

「どうぞお達者で!!」



「ピアノも達者に弾いて!そんで賞取って!

海外に行ってテレビでも出て下さいな!もうすべてご自由に!!」




「何もかも!ぜーんぶ!」



「どうぞご勝手に!!」



凄い剣幕で捲し立てる雪に、亮はただただ圧倒されてしまった。

その場で固まる亮を、押し退けて雪は退室する。

「どいて!」



バタン!



「‥‥‥‥」



まるで嵐が去って行ったかのようだった。

亮は白目を剥きながら、雪が出て行ったドアの方へとゆっくりと顔を向ける。



倉庫の中に落ちた静寂の中、先ほど起こった事態を亮は徐々に把握した。

そしてそれを実感すればするほど、亮は耐え難くなり頭を抱える‥。



「うわあ!あああ!」

「練習せんならもう出てこーい」



いつまで経っても聞こえてこないピアノの音の代わりに、亮の叫びが倉庫にこだましている。

雪の叔父がそう声を掛けても、暫く彼の叫びは続いていた‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼との対話(4)ー決別ー>でした。

このコマが‥



思わずこれに見えました‥



ドーン。

しかし結局また中途半端になってしまったような。

亮さんも本気で雪と距離を置こうと思うなら、

あの腕掴んだ時に強引に抱き寄せるでもキスするでもした方がよっぽど効果ある気がしますが‥。

そんなこと思うことなく、必死に悪役に徹しようとする亮さんがいじらしくもありますね‥。


さて次回は<多忙な週末>です。


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彼との対話(3)ー虚偽ー

2016-01-30 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
「本当に何とも思ってなかったんですか?」



雪が発したその言葉は、亮の心を突き刺した。

亮は瞬きも忘れたように、雪のことを凝視し続けている。



そしてその視線を外さぬまま、亮は雪の方へと一歩踏み出した。



思わずビクッと反応する雪。



亮は何も言わない。

ただ、雪の方へと一歩一歩踏み出してくる。






雪は幾分動揺しながらその場に突っ立っていた。

自分の方に向かって来た亮が、たった数歩残して立ち止まる。






亮は険しい表情のまま、ただじっと雪のことを見ていた。

雪は何も言うことが出来ないまま、ただ亮のことを見つめている。

「‥‥‥‥」



すると亮が、一言発した。

「オレの感情‥」



先ほど雪から問われたその言葉が、亮の脳内を駆け巡る。

「河村氏は私たちに対して、何の感情も無かったんですか?」







依然として押し黙っている亮を前にして、雪は彼から目を逸らした。

何も言うべき言葉が見当たらない。



亮は先程の険しい表情とは打って変わって、ただ静かに雪のことを見ていた。

やはり何も口にはしない。



二人の間に、しんとした沈黙が落ちる。

雪はもう一度顔を上げ、言葉にならない声を漏らした。

「あ‥」



亮はスローモーションを見ているかのように、

彼女の形の良い唇が、僅かに開くのを見つめていた。



そして再び俯いた彼女の耳元で、柔らかな髪が揺れるのも。



蓋をして押し込めた”感情”が、徐々にその顔を覗かせる。

亮はいつかの亡霊に取り憑かれた時のように、ぼんやりと雪のことを見つめている。



「河村氏‥」と自分を呼ぶ声が微かに聞こえた。

亮はその声に誘われたかのように、そっと彼女に手を伸ばす。






ゆっくりと、雪の方へと伸びて行く右手。

雪は目を見開いたまま、彼の一挙一動をただ見つめている。







ゆっくりと伸ばされたその手は、やがて雪の耳元へと近付いて行った。

その手が微かに触れるか触れないかといった時、雪がビクッと身を竦める。

「あ‥」



すると、亮の手が再び彼女から離れた。

少し下方へと手が下る。



そして亮の手は、その柔らかな頬に触れる代わりに、

雪の腕を強く掴んだのだった。

ぐっ‥







突然強い力で腕を掴まれた雪は、驚きのあまり目を見開き、亮の顔を見上げた。

彼は何の感情も読み取れないような表情をしている。

「?」



その行動の真意が掴めず、困惑する雪。

亮は右手に力を込めながら、元同僚の男が言った言葉を思い出していた。

「結局は捕まって、ズルズル付きまとわれるだけだと思う‥絶対‥」



覗いた感情が、再び奥の方へと逃げていく。

亮は抑揚のない声で、ポツリとこう呟いた。

「感情なんて凍っちまったよ」



ガッ!



雪がその言葉を聞き返すより早く、亮はより一層強く雪の腕を掴み、彼女の方へと身を乗り出した。

「誰が何と言っても出て行くから、今後オレに連絡すんじゃねぇ。待ってても無駄だ」

「か、河村氏?!」

「どうせ淳の傍に居る女がどんなもんか見に来ただけなんだ」



「もう用無しなんだよ。オレが無意味にお前の周りをウロチョロしてるとでも思ったか?」



口元に嘲笑いを浮かべながら、彼は”淳の女”に向かって意地悪く言葉を続ける。

「淳の女の好みがどんなもんか、結局この程度だってのが分かったからもういいんだよ。

今は自分の人生の方が大切だからな。あの野郎の近辺をうろつくのも時間のムダだって気づいたし」




「つーかこれ以上お前に何の用もねぇんだよ」

「何ですって?!」



その失礼な物言いに、雪は青筋を立てて言い返した。

しかし掴まれた腕はびくともしない。

「お前さぁ、どうしてこんなひつこくつきまとって来んだよ。

オレになんか未練でもあんのか?」




蓋をした感情を押さえつけるかのように、亮はより一層強くその腕を握る。

「もう止めろよ。そろそろムカついて来てんだよ」

「うっ‥」



腕に痛みを感じた雪は、思わず声を上げた。

「ちょっと待って!ちょい待ちちょい待ち!」



しかし雪のその声のトーンは、どこか緊迫感の無いものだった。

思わず眉を寄せる亮。

「んだよ」「河村氏、」



そして雪は亮を見上げて、彼の虚偽を見抜いたのだった。

「今わざとイチャモンつけてるでしょ?」







思わず目が点になった。

この女は、どうしてこんなに鋭いんだろうーー‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼との対話(3)ー虚偽ー>でした。

亮さん‥!バレバレ‥!!

最後の目がテンの亮さんが微笑ましいですね。


さて次回、彼との対話は最後です。


<彼との対話(4)ー決別ー>です。

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彼との対話(2)ー悪役ー

2016-01-28 01:00:00 | 雪3年4部(彼との対話~健太との対決)
「どうしてオレが?」






まるで突き放すかのようなその亮の言葉に、思わず目を丸くする雪。

しかし亮は自身の態度を変えることなく、その理由を淡々と説明し始めた。

「おい、オレがもう店辞めたってのは知ってんだろ?一度辞めたらフツーもうグッバイだろーがよ」

「はい?いえあの‥それは分かってますけど‥私が言いたいのは、少しの間でも‥」

「あーもういいよ。つーかお前んちの店な、給料安すぎんだよ」



降って湧いたようなその亮の言葉に、雪は驚きのあまり言葉を失った。

「な‥」「だから新しいバイトも見つかんねーんだって」



「ぶっちゃけ、あんな雀の涙ほどの給料で誰がもう一度働きたいと思うよ?

お前だってイヤだろ?」




ペラペラと喋る亮は、まるで今までと別人のようだった。

というか、辞めた理由が給料云々だなんてまるで寝耳に水なのである。

「いきなり‥どうしちゃったんですか?

河村氏、時給のことで抗議したことなんてなかったじゃないですか」




「てか最初にそれを了承して、オッケー出したのは河村氏でしょ?!それに最低時給は軽く超えてますよ?!

しかも今までバイト抜けてピアノ弾きに行ってたのも、配慮してたじゃないですか!」




「私は、うちの店のバイトは悪く無いって思うんですけど!」

「いや配慮もクソも‥」



正当な雪の抗議。

しかし亮はそれを聞いても、面倒くさそうに答えるだけだ。

「はー‥現実が分かんねぇガキだなぁ。

社長がどんだけクソだったとしても、とにかく金払いが良い所はサイコーよ」




「なぁ?」



亮はそう言いながら、雪の目の前に自身の顔を寄せた。

思わずビクッと身構える雪を、舌打ちをしながら見下ろす亮‥。



雪は相変わらず戸惑っていた。

しかし亮はそんな雪の様子に構わず、先ほどから続けるその主張を尚も口にする。

「つーか給料が低いから辞めんのはオレの勝手だろ?どーしてお前がケチつけてくんの?イミフだっつーの」



「つーかお前、仕事続けろって頼みに来た人間の態度にゃ‥」

「私がただバイト続けて欲しいって言いに来ただけだと思います?!」



雪は亮の方を真っ直ぐに見ながら、遂にその本音を口にした。

今までと違うその態度を受けて、思わず亮は黙り込む。



雪は声を上げながら、彼が自身や赤山家から背を向けるその理由を知ろうとした。

「本当に分からないんですか?!」



「どうしてわざとそんな冷たい態度取るんです?!」



そう叫ぶ雪を、亮は半身を残したまま振り返ってじっと見ている。

雪はずっと心に抱えていたその疑問を、不器用なくらい真っ直ぐに彼にぶつけた。

「私ともそうですし、うちの家族ともそうです!

社長と従業員じゃなくて、人と人との立場で話をしてるんじゃないですか!」


「あーったく!ひつけぇなぁ!!」



すると今度は亮が、大きな声で雪の言葉を遮った。

亮は元来の自信過剰な態度を全面に出して、赤山家への答えを口にする。

「おい、オレも自分が人気者だってのは自覚してんだ。

お前ら家族が勝手にオレに入れ込んじまうのは分かるが、オレのせいじゃねーよ。

オレはそれ分かって上手くやってんの。今までもこれからもな」




亮はうざったそうに溜息を吐きながら、わざわざ敬語でこう問うた。

「つーかアンタ、何が不満なんすか?」



「今何て‥」「あーもういーわ」



問い返す雪の言葉にも取り合わず、一方的に別れを告げる亮。

「オレ行くわ。新しい仕事あるし、もうそっちには戻んねーから。

二度とグチグチ言いに来るんじゃねぇぞ。面倒くせぇからよ」




「あーあ今日のレッスンはパーに‥」



そう言って去ろうとした時だった。

冷静なまでのその声が、亮の後方から聞こえて来たのは。

「そんな言い方しか出来ないんですか?」



亮は後ろを向いたまま、そのリンと響く声を聞いた。

「何かあったんでしょう?」



強い眼差しで亮を睨む雪。意図的に隠された真実を、探り当てようとする言葉が続く。

「父さんも、母さんも、蓮も!

皆河村氏が居なくなるの寂しく思ってるのに!」








亮の脳裏に、赤山家の面々の顔が浮かんだ。それでも彼は動かない。

「理由も何も言わないで、新しいバイトも探さずに突然辞めるって店を出て!」



「どうしてバイトだけじゃなくて、縁まで切るような態度取るんですか?!」



雪は家族の思いと共に、胸の中に満ちる感情のままに言葉を続けた。

「河村氏は私たちに対して、何の感情も無かったんですか?!」



すると一つの単語が、亮の胸に響いた。亮は無意識に、その言葉を口にする。

「感情?」



雪はそれを肯定しながら、今まで彼と構築したその関係性を改めて言葉にした。

「そうです。喧嘩したわけでも何か問題があったわけでもない。

あんなに上手くいってた関係を、こんな風に断ち切る必要は無いじゃないですか。

父も母も行ってほしくないって本気で思ってるんですよ!」




「どうしてこんなことになっちゃったんですか?」



怒気を含んだその言葉が、だんだんと哀愁を帯びたトーンに変わる。

亮は何も口にしないまま、ただ雪の言葉を聞いている。



「私だって‥」



「蓮と同じく、河村氏のこと家族みたいに思ってたし‥。

河村氏だって‥本当の家族とまではいかないだろうけど、

うちに愛着感じてくれてるんだろうなって思ってましたよ」




雪の言葉の節々から滲み出るのは、寂しさだった。

「そうじゃなかったんですか?」



何も言わずにただ背を向けた彼に対して覚える寂しさ。

まるで伸ばしていた手を振り払われたかのような、圧倒的なそれを。



しかし雪は確信していた。

そう感じているのは、自分だけじゃないということを。

「本当になんとも思ってなかったんですか?」







真実を突きつける雪の言葉を聞いて、亮は思わず振り返った。

演じていた悪役の仮面が、その言葉の前に剥がれていく‥。



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<彼との対話(2)ー悪役ー>でした。

話し合い続きますね~。

亮の給料云々を主張する悪役キャラは、雪の発した「感情」という言葉の前に崩れそうです。

押し込めていたその気持ちが、どうここから発展するのか‥?!


次回は<彼との対話(3)ー虚偽ー>です。

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