「はぁ?オレのこと待ってたって?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/0d/deef62801e36a1b7acbc633e78060250.jpg)
叔父のカフェから、ピアノが置いてある倉庫へと移動した雪と亮。
亮は自分のことを待っていたという雪を、訝しげな目付きで見つめる。
「はい。課題しながらですけど」
「んじゃ連絡くらい‥」「電話出ないから‥」「う」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/4b/db7f07a9881e9ce75f85228b5d5b4734.jpg)
言い返せず、思わず口を噤む亮。
一息吐くと、亮は雪が自分を待っていた理由を早速尋ねた。
「‥で?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/2f/e7c2a77536a9722e017852aababd7224.jpg)
「あ、はい!これ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/1d/918eb5acd1868f34674c984f6c4551bb.jpg)
雪はそう言うと、鞄から一冊の本を取り出し、亮に向かって差し出す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/b6/6f5b653178ce98de1e0b0e0b9877e3be.jpg)
「えっ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/0b/4b1f904b467324d24f4e4bb8f53e4d29.jpg)
思わず目を丸くする亮。身に覚えの無い話だ。
すると雪は、すかさずその本の説明を始めた。
「静香さんに渡して下さい。この前私がコーヒー零して台無しにしちゃった本なんですけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/e5/4a5b77fbcc4f42a555123433e15455b6.jpg)
「佐藤先輩が‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/52/081f41f23e72fef25e8db893675cc7a1.jpg)
佐藤からは「自分の名前は出すな」と言われていたが、雪は正直にそれを伝えた。
佐藤のその細やかな気遣いに触れた亮は、素っ頓狂な声を上げる。
「ほ~お?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/60/8b26a56587ac49c63a90210a0aa0fa08.jpg)
「おい!マジでか!いやー信じらんねぇ!なんだよクソッ‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/b4/02c06450eb740f0254eeda07c33f70c5.jpg)
亮は雪の手から本を奪うと、大きな声で感情を口に出した。
そんな亮を雪は怪訝な顔で見つめ、そんな雪からの視線で亮は正気に返り、気まずそうに黙り込む‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/f2/c463c28994ac9a55774649d2f7f021ed.jpg)
「‥‥‥‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/c0/b8f0ff047e56016f2031b9a458a13fc8.jpg)
しんとした静寂が、二人の間に重く漂った。
雪は頭を掻きながら、意味もなく軽く笑う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/57/0442417e9be81faee574aa4b5acea0be.jpg)
気を取り直した雪は恐る恐る、近況について亮に尋ね出した。
「あ‥最近どうですか?ピアノ、頑張ってます?」
「は?お陰さまで熱~心にやっとりますが?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/42/5bec7afa6cc1fe487eb83c0e7969bde0.jpg)
あ、ハイ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/af/4cca36243eb3b72e2ed4448a9b3c5779.jpg)
他人行儀にそう答える亮との間に、再び沈黙が落ちる。
けれど雪は、諦めはしなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/b7/5d25a53ae250b672bce90f81706af688.jpg)
「あのですね‥まだ新しいバイトの人が、入ってないんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/be/09136aa06f57473cd840596fcff9a156.jpg)
黙っている亮に向かって、雪は店についての話を切り出す。
「河村氏が忙しいのも分かってるんですけど‥もしちょっとでも時間が出来るなら‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/98/fa389484e54ba3256cfca932d8764c46.jpg)
「店の仕事、続けてもらえないですかね‥?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/68/20328e75a11fbbd7d11675cfd9d69db9.jpg)
話を続ける雪の口元を、亮はじっと見つめている。
「あ、勿論ピアノの練習の邪魔にならない範囲でいいですから‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/14/6d2ba3bf0457543c80bda1c2d6f24516.jpg)
「最近父の腰の調子が良くなくて‥店が上手く回らないんです‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/b7/6d234b9072e8371ea9c4e40bb19ec375.jpg)
腰が痛くて店に立てない雪の父、一人で厨房に立つ雪の母、独楽鼠のように動きまわる蓮や雪‥。
亮の脳裏に、苦労を滲ませながら働く赤山家全員の姿が浮かぶーー‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/81/f89ca9ae7688cf88fb4db476b629994c.jpg)
しかし亮は次の瞬間、雪に向かって言い放った。
「どうしてオレが?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/89/26dfb07a6b62b6f535c1e259bcbf1397.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/b5/1cda009433f928c29bbe1a519c94ffe3.jpg)
素っ気ないその言葉が、だんだんとこの場の空気を変えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼との対話(1)ー静観ー>でした。
「静香に渡す為の本を託す」という名目で亮を待っていた雪が、
「家が困ってるから店を続けて欲しい」という理由で亮を呼び戻そうとする‥という回でした。
が、亮さんからは冷たい返事‥。
彼との対話は、まだまだ続きます。
次回は<彼との対話(2)ー悪役ー>です。
☆ご注意☆
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極力使われないようお願いします!
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叔父のカフェから、ピアノが置いてある倉庫へと移動した雪と亮。
亮は自分のことを待っていたという雪を、訝しげな目付きで見つめる。
「はい。課題しながらですけど」
「んじゃ連絡くらい‥」「電話出ないから‥」「う」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/4b/db7f07a9881e9ce75f85228b5d5b4734.jpg)
言い返せず、思わず口を噤む亮。
一息吐くと、亮は雪が自分を待っていた理由を早速尋ねた。
「‥で?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/2f/e7c2a77536a9722e017852aababd7224.jpg)
「あ、はい!これ‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/1d/918eb5acd1868f34674c984f6c4551bb.jpg)
雪はそう言うと、鞄から一冊の本を取り出し、亮に向かって差し出す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/05/b6/6f5b653178ce98de1e0b0e0b9877e3be.jpg)
「えっ?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/0b/4b1f904b467324d24f4e4bb8f53e4d29.jpg)
思わず目を丸くする亮。身に覚えの無い話だ。
すると雪は、すかさずその本の説明を始めた。
「静香さんに渡して下さい。この前私がコーヒー零して台無しにしちゃった本なんですけど‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/e5/4a5b77fbcc4f42a555123433e15455b6.jpg)
「佐藤先輩が‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2c/52/081f41f23e72fef25e8db893675cc7a1.jpg)
佐藤からは「自分の名前は出すな」と言われていたが、雪は正直にそれを伝えた。
佐藤のその細やかな気遣いに触れた亮は、素っ頓狂な声を上げる。
「ほ~お?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/60/8b26a56587ac49c63a90210a0aa0fa08.jpg)
「おい!マジでか!いやー信じらんねぇ!なんだよクソッ‥!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/b4/02c06450eb740f0254eeda07c33f70c5.jpg)
亮は雪の手から本を奪うと、大きな声で感情を口に出した。
そんな亮を雪は怪訝な顔で見つめ、そんな雪からの視線で亮は正気に返り、気まずそうに黙り込む‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/17/5987a9d11ed30e9f7b0e7a1040bc70ec.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/f2/c463c28994ac9a55774649d2f7f021ed.jpg)
「‥‥‥‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/c0/b8f0ff047e56016f2031b9a458a13fc8.jpg)
しんとした静寂が、二人の間に重く漂った。
雪は頭を掻きながら、意味もなく軽く笑う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/57/0442417e9be81faee574aa4b5acea0be.jpg)
気を取り直した雪は恐る恐る、近況について亮に尋ね出した。
「あ‥最近どうですか?ピアノ、頑張ってます?」
「は?お陰さまで熱~心にやっとりますが?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/42/5bec7afa6cc1fe487eb83c0e7969bde0.jpg)
あ、ハイ‥
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/af/4cca36243eb3b72e2ed4448a9b3c5779.jpg)
他人行儀にそう答える亮との間に、再び沈黙が落ちる。
けれど雪は、諦めはしなかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/b7/5d25a53ae250b672bce90f81706af688.jpg)
「あのですね‥まだ新しいバイトの人が、入ってないんですよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/25/76d74099b026d29f08b7727d32e17357.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/be/09136aa06f57473cd840596fcff9a156.jpg)
黙っている亮に向かって、雪は店についての話を切り出す。
「河村氏が忙しいのも分かってるんですけど‥もしちょっとでも時間が出来るなら‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/98/fa389484e54ba3256cfca932d8764c46.jpg)
「店の仕事、続けてもらえないですかね‥?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1c/68/20328e75a11fbbd7d11675cfd9d69db9.jpg)
話を続ける雪の口元を、亮はじっと見つめている。
「あ、勿論ピアノの練習の邪魔にならない範囲でいいですから‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/14/6d2ba3bf0457543c80bda1c2d6f24516.jpg)
「最近父の腰の調子が良くなくて‥店が上手く回らないんです‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/b7/6d234b9072e8371ea9c4e40bb19ec375.jpg)
腰が痛くて店に立てない雪の父、一人で厨房に立つ雪の母、独楽鼠のように動きまわる蓮や雪‥。
亮の脳裏に、苦労を滲ませながら働く赤山家全員の姿が浮かぶーー‥。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/81/f89ca9ae7688cf88fb4db476b629994c.jpg)
しかし亮は次の瞬間、雪に向かって言い放った。
「どうしてオレが?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/38/89/26dfb07a6b62b6f535c1e259bcbf1397.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/26/b5/1cda009433f928c29bbe1a519c94ffe3.jpg)
素っ気ないその言葉が、だんだんとこの場の空気を変えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼との対話(1)ー静観ー>でした。
「静香に渡す為の本を託す」という名目で亮を待っていた雪が、
「家が困ってるから店を続けて欲しい」という理由で亮を呼び戻そうとする‥という回でした。
が、亮さんからは冷たい返事‥。
彼との対話は、まだまだ続きます。
次回は<彼との対話(2)ー悪役ー>です。
☆ご注意☆
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極力使われないようお願いします!
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