俺はどうしてこうなんだ?
剥き出しになった真実を、今淳は何も飾らず雪に伝える。
「って‥」
涙でぐしゃぐしゃになったその顔は、いつもの彼とはまるで違っていた。
けれどその姿こそが、本当の青田淳なのだと雪は悟る。
流れ落ちる大粒の涙は、閉ざされていたその扉を開ける鍵となった。
二人の間にあった隔たりが、見る間に消えて行く。
夜の静寂の中で、二人は向き合いながら立っていた。
少し目を赤くした雪が、瞬きもせず彼を見ている。
遂に彼は心の扉を開け、その上で目の前に立っている。
雪は震える声で彼に呼び掛けた。
「先輩‥」
けれど彼は踏み出さない。
そして一人呟くように声を出し始めた。
「あぁ‥本当に何で‥俺はどうして昔からこうなんだろう」
「どうしてこうなんだ‥俺‥」
「どうして‥どうして俺はこうなんだろう‥」
淳は泣きながら、そう言って頭を抱えた。
まるで少年のような彼の、懺悔のような告白が続く。
「いや、違う‥違うんだ雪ちゃん。
俺あのヤミ金の社長に会いはしたけど、何もしてない。あの件は父さんに引き渡した‥本当だよ。
俺は‥」
「俺は‥いつも分からなくなってしまうんだ」
「俺が今までしてきたことのせいで、いつか見捨てられるんじゃないかって‥」
胸に秘め続けて来たその恐怖を、今淳は初めて口に出した。
誤魔化し続けて来たその罪を、今確かに認めながら。
「だからずっと努力してた。それが俺に出来る精一杯のことだったから」
「してしまったことを、無かったことには出来ないから」
兎が逃げるのには理由があった。
けれど淳は今まで、それを見て見ぬフリをして囲い込んで来たのだ。
「君がいつ俺の手を離すか、いつもビクビクしてたよ。
ただの一度も心が休まることはなかった」
背中を向けられる度に感じる寂寥感。
”笑いかけなきゃ笑ってくれない”、そんな呪縛が淳にのしかかる。
「だからなんだ」
「それがおかしく見えてたんならごめん」
「本当にごめん」
因果は巡り、その業は全て自分に返ってくる。
業は錆びついた鎖となり、足元に絡みついて一歩も踏み出せなかった。
「俺はそんな考え方しか出来ないんだ。
君をからかっただとか、裏切ろうとしただとか、そういうことじゃ全く無い」
「君のことが好きだから‥」
今淳に出来るのは、その真心を伝えることだけー‥。
雪は立ち尽くしたまま、淳の告白を聞いていた。
返すべき言葉を見つけられないまま。
「‥‥‥‥」
淳は涙を拭うと、小さな声で彼女に尋ねる。
「もう俺のこと嫌になった?」
雪は彼のその問いに、すぐには応えられずにいた。
閉ざされていた扉は開き、二人の間にあった隔たりはなくなったというのに。
先程まで彼に向かって伸ばしていた手を、雪はぐっと握り締めた。
人生は選択の連続だ
彼の手を取るか離すか、その答えは雪に託されている。
そして先輩の選択は、
私の決断に基づいて正否が決まるのだろう
涙を流し続ける彼は、いつしか消えて無くなりそうに儚く見えた。
一番脆い部分を剥き出しにしながら、彼は彼女の答えを待ち続けるー‥。
季節は巡り、本格的な冬がやって来る。
降り続いた雪は全てを覆い隠し、真っさらな世界を我々の目に映すだろう。
私は今回も、知り得ぬ未来を思いながら
選択の岐路に立たされた。
もしもその目に映る世界がちょっとだけ違っていたら?
もしもあの時別の選択をしていたら?
これから描かれる世界は、そんなもしもの話である。
目を閉じると、新緑の芽が芽吹いていた。
雪の脳裏に、そんな「もしも」が繰り広げられるー‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<鍵の外れた扉>でした。
淳の回想編は終わり、現在に帰って来ましたね。
雪のことが好きだからと言った時は白い背景で描かれた二人ですが、
その罪を懺悔した後は黒い背景に逆戻り‥。
淳の涙を見た時はこのまますんなりラストまで行くかと思われましたが、焦らしますね〜〜
そしてこの後なんですが‥本家更新時に読者達を「??」状態にした話へと突入して行きます。
仮想世界?‥と思って読むと良い‥か‥?
<<雪>If(1)ー開講ー>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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剥き出しになった真実を、今淳は何も飾らず雪に伝える。
「って‥」
涙でぐしゃぐしゃになったその顔は、いつもの彼とはまるで違っていた。
けれどその姿こそが、本当の青田淳なのだと雪は悟る。
流れ落ちる大粒の涙は、閉ざされていたその扉を開ける鍵となった。
二人の間にあった隔たりが、見る間に消えて行く。
夜の静寂の中で、二人は向き合いながら立っていた。
少し目を赤くした雪が、瞬きもせず彼を見ている。
遂に彼は心の扉を開け、その上で目の前に立っている。
雪は震える声で彼に呼び掛けた。
「先輩‥」
けれど彼は踏み出さない。
そして一人呟くように声を出し始めた。
「あぁ‥本当に何で‥俺はどうして昔からこうなんだろう」
「どうしてこうなんだ‥俺‥」
「どうして‥どうして俺はこうなんだろう‥」
淳は泣きながら、そう言って頭を抱えた。
まるで少年のような彼の、懺悔のような告白が続く。
「いや、違う‥違うんだ雪ちゃん。
俺あのヤミ金の社長に会いはしたけど、何もしてない。あの件は父さんに引き渡した‥本当だよ。
俺は‥」
「俺は‥いつも分からなくなってしまうんだ」
「俺が今までしてきたことのせいで、いつか見捨てられるんじゃないかって‥」
胸に秘め続けて来たその恐怖を、今淳は初めて口に出した。
誤魔化し続けて来たその罪を、今確かに認めながら。
「だからずっと努力してた。それが俺に出来る精一杯のことだったから」
「してしまったことを、無かったことには出来ないから」
兎が逃げるのには理由があった。
けれど淳は今まで、それを見て見ぬフリをして囲い込んで来たのだ。
「君がいつ俺の手を離すか、いつもビクビクしてたよ。
ただの一度も心が休まることはなかった」
背中を向けられる度に感じる寂寥感。
”笑いかけなきゃ笑ってくれない”、そんな呪縛が淳にのしかかる。
「だからなんだ」
「それがおかしく見えてたんならごめん」
「本当にごめん」
因果は巡り、その業は全て自分に返ってくる。
業は錆びついた鎖となり、足元に絡みついて一歩も踏み出せなかった。
「俺はそんな考え方しか出来ないんだ。
君をからかっただとか、裏切ろうとしただとか、そういうことじゃ全く無い」
「君のことが好きだから‥」
今淳に出来るのは、その真心を伝えることだけー‥。
雪は立ち尽くしたまま、淳の告白を聞いていた。
返すべき言葉を見つけられないまま。
「‥‥‥‥」
淳は涙を拭うと、小さな声で彼女に尋ねる。
「もう俺のこと嫌になった?」
雪は彼のその問いに、すぐには応えられずにいた。
閉ざされていた扉は開き、二人の間にあった隔たりはなくなったというのに。
先程まで彼に向かって伸ばしていた手を、雪はぐっと握り締めた。
人生は選択の連続だ
彼の手を取るか離すか、その答えは雪に託されている。
そして先輩の選択は、
私の決断に基づいて正否が決まるのだろう
涙を流し続ける彼は、いつしか消えて無くなりそうに儚く見えた。
一番脆い部分を剥き出しにしながら、彼は彼女の答えを待ち続けるー‥。
季節は巡り、本格的な冬がやって来る。
降り続いた雪は全てを覆い隠し、真っさらな世界を我々の目に映すだろう。
私は今回も、知り得ぬ未来を思いながら
選択の岐路に立たされた。
もしもその目に映る世界がちょっとだけ違っていたら?
もしもあの時別の選択をしていたら?
これから描かれる世界は、そんなもしもの話である。
目を閉じると、新緑の芽が芽吹いていた。
雪の脳裏に、そんな「もしも」が繰り広げられるー‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<鍵の外れた扉>でした。
淳の回想編は終わり、現在に帰って来ましたね。
雪のことが好きだからと言った時は白い背景で描かれた二人ですが、
その罪を懺悔した後は黒い背景に逆戻り‥。
淳の涙を見た時はこのまますんなりラストまで行くかと思われましたが、焦らしますね〜〜
そしてこの後なんですが‥本家更新時に読者達を「??」状態にした話へと突入して行きます。
仮想世界?‥と思って読むと良い‥か‥?
<<雪>If(1)ー開講ー>です。
☆ご注意☆
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