Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

鍵の外れた扉

2017-04-15 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
俺はどうしてこうなんだ?



剥き出しになった真実を、今淳は何も飾らず雪に伝える。

「って‥」



涙でぐしゃぐしゃになったその顔は、いつもの彼とはまるで違っていた。

けれどその姿こそが、本当の青田淳なのだと雪は悟る。



流れ落ちる大粒の涙は、閉ざされていたその扉を開ける鍵となった。

二人の間にあった隔たりが、見る間に消えて行く。












夜の静寂の中で、二人は向き合いながら立っていた。

少し目を赤くした雪が、瞬きもせず彼を見ている。



遂に彼は心の扉を開け、その上で目の前に立っている。

雪は震える声で彼に呼び掛けた。

「先輩‥」



けれど彼は踏み出さない。

そして一人呟くように声を出し始めた。

「あぁ‥本当に何で‥俺はどうして昔からこうなんだろう」



「どうしてこうなんだ‥俺‥」



「どうして‥どうして俺はこうなんだろう‥」



淳は泣きながら、そう言って頭を抱えた。

まるで少年のような彼の、懺悔のような告白が続く。

「いや、違う‥違うんだ雪ちゃん。

俺あのヤミ金の社長に会いはしたけど、何もしてない。あの件は父さんに引き渡した‥本当だよ。

俺は‥」




「俺は‥いつも分からなくなってしまうんだ」



「俺が今までしてきたことのせいで、いつか見捨てられるんじゃないかって‥」



胸に秘め続けて来たその恐怖を、今淳は初めて口に出した。

誤魔化し続けて来たその罪を、今確かに認めながら。

「だからずっと努力してた。それが俺に出来る精一杯のことだったから」



「してしまったことを、無かったことには出来ないから」







兎が逃げるのには理由があった。

けれど淳は今まで、それを見て見ぬフリをして囲い込んで来たのだ。



「君がいつ俺の手を離すか、いつもビクビクしてたよ。

ただの一度も心が休まることはなかった」




背中を向けられる度に感じる寂寥感。

”笑いかけなきゃ笑ってくれない”、そんな呪縛が淳にのしかかる。



「だからなんだ」



「それがおかしく見えてたんならごめん」



「本当にごめん」



因果は巡り、その業は全て自分に返ってくる。

業は錆びついた鎖となり、足元に絡みついて一歩も踏み出せなかった。

「俺はそんな考え方しか出来ないんだ。

君をからかっただとか、裏切ろうとしただとか、そういうことじゃ全く無い」




「君のことが好きだから‥」



今淳に出来るのは、その真心を伝えることだけー‥。








雪は立ち尽くしたまま、淳の告白を聞いていた。

返すべき言葉を見つけられないまま。

「‥‥‥‥」







淳は涙を拭うと、小さな声で彼女に尋ねる。

「もう俺のこと嫌になった?」







雪は彼のその問いに、すぐには応えられずにいた。

閉ざされていた扉は開き、二人の間にあった隔たりはなくなったというのに。







先程まで彼に向かって伸ばしていた手を、雪はぐっと握り締めた。

人生は選択の連続だ



彼の手を取るか離すか、その答えは雪に託されている。



そして先輩の選択は、

私の決断に基づいて正否が決まるのだろう




涙を流し続ける彼は、いつしか消えて無くなりそうに儚く見えた。

一番脆い部分を剥き出しにしながら、彼は彼女の答えを待ち続けるー‥。










季節は巡り、本格的な冬がやって来る。

降り続いた雪は全てを覆い隠し、真っさらな世界を我々の目に映すだろう。

私は今回も、知り得ぬ未来を思いながら



選択の岐路に立たされた。





もしもその目に映る世界がちょっとだけ違っていたら?

もしもあの時別の選択をしていたら?

これから描かれる世界は、そんなもしもの話である。




目を閉じると、新緑の芽が芽吹いていた。

雪の脳裏に、そんな「もしも」が繰り広げられるー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<鍵の外れた扉>でした。

淳の回想編は終わり、現在に帰って来ましたね。

雪のことが好きだからと言った時は白い背景で描かれた二人ですが、



その罪を懺悔した後は黒い背景に逆戻り‥。



淳の涙を見た時はこのまますんなりラストまで行くかと思われましたが、焦らしますね〜〜

そしてこの後なんですが‥本家更新時に読者達を「??」状態にした話へと突入して行きます。

仮想世界?‥と思って読むと良い‥か‥?


<<雪>If(1)ー開講ー>です。


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<淳>青嵐

2017-04-13 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
感情は理由も分からぬまま、揺さぶられ続ける



青葉が茂る夏の始まり。

まるで嵐のような強い風が、淳の心の中にまで吹き込んでくるようだった。



彼女の掌が唇に触れたあの瞬間、時が止まったかと思った。

すぐ側にある彼女の顔から、まるで目が離せなくて‥。






掌が外されてからも、淳はその場から動けなかった。

いつも彼女は、想定の範囲外へと飛び出して行く。

知らずして淳の心を、大きく揺さぶり続けながら‥。







けれどどんなに近付こうと手を伸ばしても、彼女との距離はなかなか縮まらない。

「今度から学校にもこうして来ればいいのに!もったいないよ」

「へへへ‥」



ようやく意識してくれるようになったと思ったのに、

「えっ聞いてないんですか?雪ねぇ、今日合コン行くんですよ」



まるでなびいていなかったり。

「合コン?」



そのことで苛立ちが募って、彼女の家まで会いに行ったり。

「送ってく」



「君と一度食事することが、こんなにも大変なことなんてな」







そんな捨て台詞を吐いた後、

こんなはずじゃなかったと、自分で自分が分からなくなったり。









そして接点を一つ繋ぐ度、彼女との結び付きは強くなって行った。

「すみませんでした」「俺の方こそごめんな」




感情はわけも分からぬまま揺さぶられ続けるが、

その一方で君に近付けている気がして



こんな話も出来るようになった。


「うちの父は頑固な上にプライドが高いから、立ち直るまでちょっと時間がかかりそうです」

「そっか‥」

「こうなった以上少しでも楽に考えればいいのに、そういう部分がもどかしくて‥。

どう励ましてあげればいいのかも分からないんです」




彼女の父親の事業が倒産することになったあの時、初めて胸に抱えて来た思いを口にした。

「俺にもそういう時あるよ。うちの父親は俺よりも断然大人で賢い人だけど、たまに融通が利かない時があるんだ。

それを俺がいくらどう言おうが、父さんの年くらいになれば、それを覆すのは難しいみたいで」




「けど反対に俺への期待感が半端なくて‥」

「友達と比べたって仕方ないって分かってるのに‥」「多分誰しもがそうなんじゃないかな」



「敢えて他人と比較することで、自分を慰めたり、尚更憂鬱になったりね」




互いをもっと知ることが出来ただろう?




あの時口にしたその言葉は、そのまま淳の胸の内を映したものだった。

「それだけで充分なんだ」







そうは言ったものの




強く、激しい風が吹く。

その薫風が、二人の関係を大きく揺さぶり変えて行く。


「これってマジで河村亮なのか?」「女も連れてやがるぜ?」



「へぇー生きてたんだな」



嵐にも似たその風が、淳の心を波立たせる。

いや、



それだけじゃ嫌だ



一日に何十回も、そのことばかり考えてた



繋いだ接点を手繰り寄せて、彼女の一番近くへ。






するりと逃げ回るその兎を追いかけて、淳は手を伸ばした。



「俺と付き合わない?」



それは彼女を繋ぎ止めるための算段だと、自分では思っていた。

「どうして告白したんですか?」



けれどあの時、雪にそれを問われた時、無意識の答えが口から出たのだ。

「好きだから‥」



それは驚くほどシンプルな、彼の真心だった。

青嵐は茂る葉を全て落として、隠れていた本当の心を露わにする。

見たかったものも、そして見ないふりをしていたことも、全てをありのまま剥き出しにするのだ。

俺はどうしてこうなんだ?



すると彼は、裸のままのその姿が、歪んでいることに気がついた。

それは彼が一番認めたくなかったことであり、今まで目を瞑ってきた、何よりも残酷な真実だった‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<<淳>青嵐>でした。

なんだかダイジェスト感半端ないですね

こうしてみると、先輩普通の男子ですなぁ‥。

そして思い出すのは刹那の白川亮‥。



やっぱりあれが告白のきっかけになったんですね。西条、知らずしてキューピットだったか‥


さて淳の回想編も今回で終わり。次回は現在へと戻ります。

<鍵の外れた扉>です。

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<淳>風光る

2017-04-11 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)


いつしか桜の花は散り、キャンパス内は瑞々しい若葉で溢れていた。

新緑の季節の中に、学生達が笑い合う声が賑やかに響く。



その日、淳は真新しいスーツを身に纏っていた。

「おーい!青田さんよ!」



声を掛けて来たのは柳である。

「いや〜キマってるね〜!どこのモデルかと思ったぜ!」

「何だよお世辞なんか」「お世辞じゃねーっての」



「青田先輩かっこいい」と遠くで黄色い歓声が聞こえる。

柳はそちらを指しながらスーツ姿の淳を褒めちぎった。

「ほら見ろ、皆お前に釘付けだっつーの!マジでイケメてるからよ。自分でもそう思うだろ?」

「思ってないって」



「あ、俺ちょっと事務室に書類確認しに行かなきゃ」

「おう」



そう言って歩き出した時だった。

ポケットに入れていた携帯が、一通のメールを受信する。



先輩 

授業のプリントを渡したいのですがどこにいますか?








「雪ちゃん?!」



淳は初めて彼女から送られて来たメールに心底驚いた。

周りの人が思わず振り向く程の大声で、その名を口にしてしまうほどに。







まるで吸い寄せられたかのように、淳はその画面に釘付けだった。

ようやく文章の内容が頭に入ってくる。

「あ、プリント‥」



あれほど切望していた彼女との接点が、再び現れようとしていた。

淳はその指先で、それを繋ぐ。

学館の二階まで持って来てくれると嬉しいな^^



そう返信した後も、淳はずっと携帯を手から離さなかった。

胸の中に、風が吹いているかのように落ち着かない。



ピロン



はい



一文字だけのその返信が、淳の心を躍らせる。

淳は早足で学館の二階へと上がって行った。







落ち着かない胸の内を持て余しながら、淳はジャケットを脱いだ。

無造作に髪の毛を整える。







するとガラスに映る自分の姿が、ふと彼の動きを止めた。

いつもより少しよそ行きの、その自分の姿が。



先程の柳の言葉が蘇る。

「お前マジでイケメてるから!」



胸の中に吹く風が、ふと甘い期待を煽った。

今の自分の姿を、彼女に見せたとしたら‥。








‥と考えた所で、淳は我に返った。

考えを打ち消すように、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。

何考えてんだか‥







すると眼下に広がる風景の中を、彼女がこの建物に向かって歩いてくるのが見えた。

淳の視線は彼女に惹き付けられる。



オレンジ色の豊かな髪が、晩春の中で柔らかになびいていた。

彼女は今、淳の元へと向かっている。








まるでキラキラ光る風が胸の中を吹き抜けるような、そんな気持ちに包まれた。

彼女の表情、動き、その一つ一つが、全て特別なものに思えて‥。







春だからだろうか



俺はもうすぐ卒業する。

残された時間は、あと僅かだ




光る風が吹き抜けて行った後で、ふと現実に返って胸が鈍く傷んだ。

時の流れは変えられない。



一日一日を意味あるものにしたいと思った。




たとえ、今この瞬間が刹那に過ぎ去ってしまうとしても、


「‥先輩?」



「一緒に写真撮ろうよ」「はいぃ?!」




意味あるものとして、それを意義として刻みたいと。


カシャッ



「ゲッ?!」



「へ、変な顔してるじゃないですか!」「え?どこが?」

「目がラリってるじゃないですか!髪の毛ボサボサだし!間抜けな顔してますよ!」

「何もだよ?」「私だけ悔しいじゃないですか〜!先輩はアイドルみたいでいいかもしれないですけど!」



必死な顔をしてピョンピョン飛び跳ねる彼女。

まるで兎みたいなその姿に、思わず淳は笑顔になる。



「先輩の前髪屋根みたい!」「何っ」




その日淳は、一つ一つをメモしてあげるみたいに、

彼女と過ごす一時一時を、胸の中に刻んで行こうと決めたのだ。








携帯の中に入っている写真をスクロールする指が、

その写真に来ると必ず止まる。



ずっと携帯を眺めている淳に向かって、友人はこう声を掛けて来た。

「なぁ淳、最近携帯で撮った写真何か一つ見してよ」

「なんで?」「なになに?」



「誰?彼女?いつ髪切ったんだよ?「え?」








その軽い調子の友人の問いに、淳は目を丸くして動きを止めた。

”彼女”というその響きが、やたら胸を刺激する。

「‥違うけど」「なんだぁ」



「んじゃただの遊び相手か。可愛いじゃ‥」



そう言って携帯に手を伸ばそうとする友人を、淳は拒んだ。

嫌悪感を含んだ眼差しで、真っ直ぐに彼を射る。

「何言ってる。そんな風に言うな。俺の後輩だよ」



いや‥その‥



そのまま席を立つ淳の後方で、友人達はヒソヒソと小声でこう囁き合った。

「どーしたのアレ」「アイツ時々クソ怖ぇよな‥」




その風が全てを変え始めていることを、彼はまだ気付いていない。

そして季節は流れて行った。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<<淳>風光る>でした。

淳目線の話、すごく新鮮ですね!

あの意義の話も、雪目線と淳目線だと大分感じが違うなぁ。

あの時淳は一つ一つに意義を見出す生き方をしているんだと思っていたけど、

それは雪と過ごす時間をそのように思っていたということだったんですね。う〜んシックリ。

さて次回で回想編は終わりです。

<淳<青嵐>>です。


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<淳>朧

2017-04-09 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)


雪が座る前方の席で淳は、一人授業を聴いていた。

胸の中がざわめき続けている。







右手にはペンが握られていた。先程雪から借りた物だ。

言ってみれば先輩の権限で、半ば強制的に‥。







猜疑心の塊のような顔をしてこちらを見る彼女の、あの表情が胸を燻らせる。

ふと淳は騒がしさを感じ、後方を振り返ってみた。



「モフモフ〜モフモフ〜」「ちょ‥止めてってば!」



そこには仲良さそうに戯れる三人の姿があった。

淳の胸中は、ますます靄がかかった様に曇る。

「‥‥‥‥」



思い出す場面があった。

冬休み前、突然彼女から服の端を掴まれた時のこと。







今まで話すことはおろか近付くことすらままならなかった彼女が、隣に居たあの瞬間。

あの時の驚きと心が震えるような感覚は、今も忘れられない。



けれどその後、雪は言った。

「あ‥すいません!間違えちゃって‥太一かと思っちゃって」



”福井太一と間違えた”のだと。

随分仲が良いんだな



フン



淳はまるで拗ねた様にフンと息を吐いた。

後ろの席では雪が、大きな溜息を吐いている。



その息遣いを背中で聴きながら、淳は窓の外を眺めていた。

どうして何度もこんな気持ちになるのか







自分でも分からなくてー‥



霞がかった、春の空気が胸を震わせる。

それは時に、弾むボールのように胸を弾く。




だから俄然興味が湧いた



ザンッ



ボールは放物線を描いてゴールへと吸い込まれて行った。

ゴールネットを揺らしたボールは地面に落ち、数度バウンドする。







まるでこのボールのように、彼女は胸の中で弾んで動いて、淳のペースを掻き乱していた。

思い浮かぶのはいつも、引き攣ったようなその表情。



その無理矢理な挨拶。常に逃げ腰のその姿勢。

「あっ!先輩」   「こっ‥こんにちは」



逃げる兎をなだめながら追い掛けてる気分‥



淳はゆっくりとボールを手に取った。

このボールのようにいつか、逃げ回る兎もこの手の中に収めることが出来るだろうと。

「ゆっくりと」



「負担を掛けないように‥」



計算通りに、囲い込む。

淳は口の端を微かに上げながら、そう一人呟いた。



所々ライトで照らされた夜のコートは、どこか白んでぼやけて見える。

春の空気は水蒸気を多く含む為、どこか朧に見えると言う。



掴みどころのない春の空気のせいだろうか。

その胸中が微かに、踊るように揺れるのは‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<<淳>朧>でした。

ポクシルってモフモフって意味なんですね(笑)



淳、この頃からあのモフモフな髪の毛が気になっていたのか!

私もモフモフしたい!


最後のシーンで出て来たバスケのコートは、

高校時代淳が亮をバスケに誘って行ったコートなのかなぁ‥。




(4部41話にバスケしてるシーンがありました。このコートかな?)

今は一人、っての切ないですね。。


次回は<<淳>風光る>です。

この淳の回想編は、全て春の季語をタイトルにしてみてます


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<淳>春の日

2017-04-07 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
淳はこう言葉を紡いだ。

ただ、君に優しくしたかった、と。


あの時は、その理由が分からなかったけど









思い出すのは、瑞々しい若葉の濃い緑。


ただ君に近付きたかった。




あの細い指先を、もう一度繋いで欲しくて。


単純に目的はそれだけだったんだ。







遅咲きの桜が、風に乗って辺りに舞う。

彼女の横顔を見ていると、胸の中に花弁が迷い込んだような、ざわめいた気持ちになった。








その気持ちの正体を知るために、

あの時淳は”青田先輩”の笑顔を作り、彼女に向かってその一歩を踏み出した。

驚くほどシンプルなその動機を、様々な理由と理屈で固めながら。



春だったよ





そして物語は、冒頭へと戻る。


「何してるの?メシでも食いに行こうよ」「はい?!」



「‥‥‥‥」



今までとは打って変わった態度の淳に、勿論雪は驚愕していたが、

「いえ‥その‥」



ほらな、と淳は確信していた。

「おはよ」



「一緒に授業頑張ろうな」



優しくされれば拒絶出来ない



それは日々様々なことに踊らされ、傷つき、消耗している彼女の弱点だった。

淳はそんな彼女を前にして、”青田先輩”の仮面を被り続ける。

「本当に面白い子だな」







ざわめき続ける感情が、春の風に乗って上昇気流へ昇る。

空は青々と晴れ渡っていた。



けれど雪の表情はそれとは真逆の様相で‥。

「疲れた」



「五月病とか?」「ううん、なんか‥甘いもの食べたいー」



淳は、真後ろの席でそう話す雪の話を聞いていた。

雪がどんな表情をしているのか、背中を向けていても手に取るように分かる。

「あれ?聡美、その携帯ストラップの人形って新しく買ったやつ?かわいいじゃん」

「でしょ?」



彼女だけが、顔の無い群衆の中で表情がある。

聞こうとしなくたって、自然と耳に入って来る声



淳にとって彼女は、そういう存在だった。

すると、雪の隣に座る伊吹聡美が淳に声を掛ける。

「新しくオープンしたカレー屋さん超人気らしいッスよ!」「先輩は行ったことありますか?」

「一年生達連れて行ってみたけど悪くなかったよ」



「ええ〜マジですか!年はイッてますけど一応うちらも後輩ですよ!」「間違いナイっす」

「はは、そうだな。じゃ、今度な」



伊吹聡美と福井太一は、キャッキャとはしゃぎながら笑っていた。

しかしその隣に座る雪は‥。

目も合わせない



会話一つの隙間さえ、挟む余地の無いこの関係。

接点は、踏み出さなければ繋ぐことは出来ない。

「雪ちゃん、悪いんだけどペン借りてもいいかな」

「あ‥はい!」



「どうぞ」



淳はそうして接点を繋いだ。

繋いだのは指先ではなく、ペン越しだったけれど。

「ん、ありがとう」







礼を口にした淳の目に、口の端を引き攣らせた雪が映る。

淳はそれ以上は何も言わず、無言で前を向いた。



「他の先輩達まだ来てないみたいッスね」「あー‥健太さんはインフルエンザだし‥」



その後福井太一は声を掛けて来たが、雪からは勿論何も無かった‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<<淳>春の日>でした。

まさかのここで淳サイドからの話とは‥。続きが気になる‥

けれどこれで雪サイドからはよく分からなかった所が次々解明されて行きます!


あのペンのくだりは雪と話したくて振った話題だったのですね〜^^

雪サイドの方読み返してみると‥



はい、二人正解!

こうして見比べて見るのも面白いですね。(絵は随分変わってるけど‥)

そして「甘いもの食べたい」と言う雪の台詞は‥


こういう伏線?




(まだ記憶に新しい手づかみチェリーパイ)

色々な場面に繋げられて面白いですね(笑)


次回は<淳<朧>>です。

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