Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

2017-04-05 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
「ごめん‥」







掠れた声で、淳がそう口にしたのを雪は聞いた。

淳は俯きながら、これまでの記憶をなぞり出す。

俺、もう何度もこう思ったよ



結局俺は、君に悪影響ばかり与えているんじゃないかって



荒れ果てた部屋の中で横たわりながら淳は、

以前ここで耳にした雪の言葉を思い出していた。

「今は前よりもっと、先輩のことが理解出来る気がします」



想定外の変数は、掌握していたはずの計算式を狂わせた。

そしてその答えは、今の目の前の彼女に繋がっている。



俺が望んでたのは、君のこんな姿じゃ無かった



だからずっと考えていたよ



そもそも計算式なんて、必要だったのだろうか。

最初から、俺が君に出会ってここまで来たことが



全ての間違いだったんじゃないかって



”これからは気を付けろよ”と囁いた、あの時の自分の声が鼓膜の裏で反響する。

計算式なんて、必要無かった。

そんな魂胆を持って近付いたことこそが、間違いだった。

その結論に至った淳は、思わず拳を握る。

何故かと言うと



それは俺が卑劣な人間だから

俺がおかしな人間だからー‥




仕掛けたトラップは、結果自分を苦しめる因果となった。

淳の脳裏に、悲しい記憶が次々と浮かび上がる。






心のままに伸ばした芽は、否応なく摘み取られた。

幼い頃から押されて来たその烙印が、剥き出しになって行く。

俺はおかしいんだ



いつか言われた”変な奴”というその言葉が、楔のように淳を縛る。

仮面が剥がれた彼の姿を、誰もがおかしなものを見る目付きで見ていた。



俺がおかしいから



本心を剥き出しにしたその姿に、あれだけ纏わりついていた取り巻きは、皆遠ざかって行った。

欺瞞が孤独を深めて行く。

あの時あの空間にあれだけの人が居たのに、誰も傍に居てくれなかった。



因果は巡る。

こんな”おかしい”自分が、彼女の傍に居る資格はあるのかー‥。




「何度もこんな目に合わせて、本当にごめん」



「俺は‥本当に‥」









俯き、そう言葉を紡いだ淳の目に映ったのは、彼女の手だった。



見えない傷のついたその手を、雪は淳に向かって差し出す。

「手を貸してくれませんか?先輩」








澄んだ雪のその瞳に、無言で佇む淳が映る。



何もかも映してしまうその鏡の様な瞳の前で、淳はただ立ち尽くすしか無かった。

決壊ぎりぎりで揺れている彼の心に、堅く絡まった蔦が覆う。

淳はその場から、身動きが取れないー‥。








まるで二人の間にある見えない扉に合う鍵を請うように、雪は手を差し出し続けていた。

けれど淳は動かない。



そしてそのまま、俯いてしまった。



二人の距離は縮まない。

間にある扉は、鍵がなくて開けられない。



まるで身体中に穴が開いて、そこから風が吹き抜けていくような、寂しさが蘇った。

言い様のない哀しさが、指先から零れ落ちて行く‥。









立ち尽くす淳の手が、ほんの僅か動くのを、



その時雪は見ていなかった。

差し出した手の行き場のなさに、押し潰されそうで。



鼻を啜りながら、込み上げてくるものを感じた。

二人の間にある見えない扉を開く鍵は、もう永遠に手に入らないのだとー‥。









ふと、何かの気配を感じた。





その微かな息遣いの中に、何かが零れる音を聞く。





「あ‥先輩‥」




「泣いてるの‥?」




立ち尽くす淳の瞳から、涙が零れ出していた。





その雫が音も無く、光りながら落下する。










想いが、涙に乗って零れ出る。

心の奥底から、堰を切ったように流れ出る。


「俺はただ‥」








涙の向こうで雪が、驚いた顔をしてこちらへ駆けて来るのが見えた。

心を覆っていた堅く絡まった蔦が、溢れる雫でゆっくりと溶かされて行く‥。


君に優しくしてあげたかったんだ。








指先だけで繋がれた、僅かな接点。

彼女の手が滑り落ちて行くその前に、

あの時淳は指先でその接点を繋ぎ止めた。



伸ばして来たその手を、振り払ってはいけない気がして‥。







あの時掴まれたのは、指先だけでは無かったらしい。

捕らえられた心の一部を、淳はその場に置いて来た。



もう一度彼女と、その接点を繋ぐためにー‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<雫>でした。

こ‥こんな日が来るなんて‥。淳の涙を見る日が来るなんて‥。

あかん‥胸がいっぱいです。万感の思い。


”自分はおかしい”ということを、今まで必死に否定して来た淳が、

初めてそこに向き合ったんですね。そしてそれは結果雪を苦しめているのだと。

打算も計算もなしに、ただ雪のことを慮った。

そしてそれこそが十数年前、裏目氏と河村教授が望んだ

”何の打算も目的もなく、ただ互いのために気を掛け合える”存在を見つけた、ということなんですよね‥。

最後の雪が聞いた「泣いてるの?」は、



今まで散々淳が雪に聞いてきたことでした。

 
 

「泣いてるの」特集‥。

淳の涙が、合わせ鏡となった雪の涙を引き出せることができますように。

横山の妄想の中で一回泣いてる雪がいましたが、それはもちろんノーカンで(笑)





次回は<淳>春の日>。

淳サイドからの、「雪ちゃん」と声を掛けてからのこれまでの流れです。


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見えない扉

2017-04-03 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
時は少し遡る。

淳が雪の元に駆けつけることになる、ほんの数時間前に。



キィ‥



その扉は静かに開いた。

静謐な空間の中に一人、ぽつんと彼が現れる。



その暗い室内には、荒れ果てた風景が広がっていた。

まるで彼の心の中のような、混沌と荒廃がそこにある。



光の届かないこの場所に、自分は結局舞い戻って来てしまったらしい。

闇しか宿さぬ淳の瞳が、全てを虚しく映し出す‥。









数々の高価な物達が、まるでガラクタのようにゴミ袋に捨てられて行く。

淳はただ無言で、散らばった残骸を袋に入れ続けた。







その中でふと、ある物に目が止まる。

それはあの時計だった。



「そうだこれ、忘れてた!」



夏の終わりに、初めて彼女がくれたプレゼント。

「開けていい?」「良ければどうぞ」



「ありがとう」「いいえ‥」



照れながら腕に嵌めてくれた彼女の細い指、

近付くと真っ赤になったその顔、その表情‥。

彼女の全てが思い出されて、淳は動けなくなってしまった。



そして、かつて彼女のくれたその時計だけが、

シンメトリーに針を止めたコレクションの時計の中で、無秩序に動いていた。

時計は自分と彼女はまるで違う存在なのだと語り、針は刻々と時を刻んで行く‥。









上着のポケットに入れた、携帯が光って震え出した。

淳はそれに手を伸ばし、”父”と表示されたその着信を取る。

「はい。何か‥」



「え?」



「どういうことです?!」



その話を聞いた途端、淳の顔色が変わった。

淳は話の続きを促しながら、その場から弾かれる様に立ち上がる。

「どうしてご存知なんですか?!」

「亮の話を聞いて様子を見ていたが、あの男が思ったより早く動いてな。

問題は既に処理したんだが、傍に居たのがお前の彼女だったというから、連絡したんだ」












気がつけば、駆け出していた。

胸の中で湧き上がる怒りに、思わずギリリと歯噛みする。



まただ



また



また‥!!







運命の歯車が、耳障りな音を鳴らし、軋みながら回る。

もう何度、こんな不条理な感情を味わったろう。



淳は車を飛ばし、父が静香を拾ったという場所に到着した。

荒々しく車を停める。

「くそっ‥!」








しんとした狭い路地を、淳は全速力で駆け抜けた。

「雪、どこだ!?」



彼女の名を叫びながら。

「雪!」



「雪!!」













ようやく見つけた彼女は、呆然とその場に座り込んでいた。

真冬の冷たい地面の上に、その両手を付けながら。








すぐに駆け寄って手を差し伸べられたら、

その身体を強く抱き締められたら、どんなに良いだろう。

けれど淳の足は、どうしても前に進むことが出来なかった。



まるで二人の間に、見えない扉があるかのようだった。

そこに立ち尽くしたまま、淳はただ彼女を見つめることしか出来ない。







その顔も、服も、傷が付いて汚れていた。

それを見て淳の胸は、強く強く締め付けられる‥。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<見えない扉>でした。

淳サイドからのお話ですね。

冒頭、掃除のうあはん(おばさん)は来てくれなかった‥(涙)



あ、よく見るとボールやラジコンカーの形がわかりますね‥。(鹿は無いな‥)

細かいクラブとしては朝出て行った時とアウターが違うという‥。


↑この日の朝

一日が長すぎてスンキさん同日ということ忘れちゃったのか‥な‥



次回は<雫>です。


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見えない傷

2017-04-01 01:00:00 | 雪3年4部(見えない傷〜<If>(5)まで)
深く暗い闇が、静香の瞳の中に広がっている。

雪はその胸ぐらを掴んで、揺さぶってみて分かった。

彼女は、何も持っていないのだと。



どんなに与えられても、人から奪っても、彼女の中にある穴に全て吸い込まれて堕ちて行く。

その穴の埋め方を、今まで彼女は誰にも教えてもらえなかったー‥。






結局静香さんは、ようやく連絡のついた先輩のお父さんに連れられて行った。



静香は淳の父親の部下に促され、黒塗りの高級車に乗り込んだ。

泣き腫らした顔で、その腫れぼったい目で、最後まで雪のことを見つめながら。







排気ガスの白い煙が、目の前で舞う。

後から聞いた話によると、あの吉川という人は捕まり、刑務所へ入ったらしい。







その煙がだんだんと薄らいで行っても、雪の心にかかった靄は依然として晴れなかった。

先程目の当たりにした静香の抱える闇が、重たくのしかかる。



あんな静香さん初めて見た。



私自身も知らなかった傷を今になって知ったように、



あの人にも見えない傷があった。



心の深い場所につけられた、見えない消えない傷。

雪はその傷を負った自身の手を、じっと見つめてみる。



けれど傷を抱えているからとその場に留まっていたら、

静香さんのように治すことが出来なかったり、いずれ変わることもないのだろう。




痛くても、しんどくても、前に進むしか道は無い。

雪は全てを受け入れて、ただ一つの溜息を吐く。



幾分身体がほぐれると、途端に血が巡り始めた。

手が細かく震えている。



かくんっ



膝の力が抜け、そのまま雪は地面にぺたんと座り込んだ。



「あ‥」



「本当にビックリした‥」



ははは、と乾いた笑いが、冬の空気に溶けて消える。

「‥‥‥‥」



辺りは水を打ったように静まり返っていた。



「誰も居ない‥」



ようやく緊張が解けた私は、思った。



泣きたいのは、私の方ー‥









まるで世界の片隅に取り残されてしまったかのように、一人ぼっちだ。



怖くて震えていても、どんなに心細くても、隣には誰も居ない。

差し伸べてくれる優しい手なんて、期待しないで今まで生きて来た。



誰も居ないのに、涙さえ流せない。

見えない傷は今も、雪を縛り続けている。



「ふぅ‥」



「行かなきゃ」



雪はそう言って、冷たい地面から立ち上がろうと腰を上げた、

その時だった。








遠くから、誰かが走ってくるのが見える。

見る間に、その人影は近くなる。



雪はただ目を見開いて、その人を見ていた。








息せき切って、髪を乱して、走って来たのは彼だった。

彼は地面に座り込んだ雪に、ようやく目を止める。



「雪!」



青田淳は、大きな声で雪の名を叫んだ。

今まで見たこともないような顔をしている淳を見て、雪はただ目を丸くする。

「大丈夫?!」







淳は瞬間、彼女に近寄ろうと身体を動かしたが、



不意にピタとその動きを止めた。

踏み出しかけた足は、



進むことなくその場で立ち止まる。







雪は地面に座り込んだまま、淳のその一連の動作を見ていた。

彼は無言で、そこに佇んでいる。








二人の間に、数メートルの距離があった。

ただその間に見えない扉があるかのように、二人共その場から動けない。



「ごめん」



「何度もこんな目に合わせて、本当にごめん」



俯きながら、淳は何度もごめんと口にする。

「俺‥」



「本当に‥」








その言葉が続く前に、雪は手を差し出した。

見えない傷のついた、その手を。







雪は淳に向けて、手を差し出し続けていた。

間にある見えないその扉に合う鍵を、請うような心持ちでー‥。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<見えない傷>でした。

最初のこのコマ‥



この右の人が裏目‥なのか‥?雪と淳父との対面を楽しみにしてましたが、まさかこんなあっさりと?!

部下と考えた方が良さそうですが、なんとなくシルエットが‥う〜ん‥


そして遂に!

淳が走って来ました‥!そうそう!この必死に走る淳が見たかったんですよ!

以前<心のままに>の記事の時、そう書いたっけな〜と懐かしく思いました。

横山のストーキング事件の時は



こんなこと言ってた人が‥。変わりましたねぇ。

さて次回は淳側からの話です。彼がここに駆けつけるまでの一連の流れ。

<見えない扉>です。


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