横山翔は走った。ただ闇雲に。
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ハァハァと息が切れるが、とにかく逃げなくてはと必死だった。
目の前の暗闇は、どこまでも広がっている。
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確かに道路を走っているはずなのに、足元は砂浜を走っているかのように沈み込む感覚があった。
走っても走ってもこの闇から抜け出せない。
こんな‥一体どうしてこうなった?どういうことなんだ‥!

ほんの数時間前まで、確かに一筋の光が見えていた。
更に言えば、数週間前まで自分は科の中心人物になり得る程の地位を保っていたのに‥。
赤山か?また赤山がやったのか?違うのか?それじゃあ一体誰が‥?!

脳裏に赤山の姿が浮かんだが、パニックで深くは考えられない。
この足が深く沈み込むような感覚。横山は心の中で叫んだ。
一体どうしてこんな‥?!
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横山は足を止め、フラフラしながらその場に佇んだ。
顔は青ざめ、流れ行く汗が止まらない。
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鼓膜の裏で、皆の声が反響した。
クズ!
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直美を始めとした、経営学科の女子達。
クズ!
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侮蔑の視線を寄越しながらそう言った、経営学科の男子達。
クズ。

最後に浮かんだのは、赤山雪だった。
まるで汚らしいものでも見るかのような目つきをしながら、そう言った赤山の姿‥。
その眼差しを思い出した横山の心の中に、カッと火が点いた。
クソッ!やっぱり赤山が‥!

自分が今の地位に転落したのは赤山のせいだと、横山は結論付けて携帯を手に取った。
すると同時に携帯が震えた。”切り札”もとい”ニセ青田”から、メッセージが一件入っている。
面白いことしてたね、昨日

唐突に送られて来たそのメッセージに、思わず横山は狼狽した。
通行人が自分の方を振り返るのにも気づかず、言葉を漏らす。
「は?なんだいきなり‥。ってか、なんで知って‥?!」

暫し当惑していた横山だが、じきに腹の底から怒りが沸いて来た。
目を見開き、青筋を立て、”ニセ青田”に憤慨する。
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横山は感情のままに”ニセ青田”へ電話を掛けたが、いくら待っても彼女は電話に出なかった。
怒りに震えながら、横山は彼女へメッセージを送る。
「お前、青田の指示であの時、狂った女を演じたんだろ?!
お前らがグルだってこと、俺が気づかなかったとでも思うか?!
お前らも、赤山も、あのヤンキー野郎も、全員訴えてやる!絶対に示談になんて持ち込ませねぇからな!!」

そう打ち終え、送信すると、すぐに返事が返って来た。
訴える?アンタが?
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そしてすぐに一言。
ストーキング。
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横山は目を見開いてそのメッセージを見つめていた。
どんどんメッセージは入り続ける。
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暴行未遂。 脅迫罪。 名誉毀損。 侮辱罪。
それは、今まで横山が無自覚の内にやらかしてきた罪名だった。
その罪を見せつけるかのように、メッセージは続く。
当然これらの事に対して、
裁かれる覚悟があって告訴するつもりなんだよね?
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畳み掛けるようなその攻撃に、横山は頭がついていかずただポカンと口を開けた。
メッセージは入り続ける。
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次に入って来たのは、自分が写っている写真だった。
寝ている赤山に気付かれぬよう、そっと彼女の手帳を盗み見ている写真‥。
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携帯は写真を受信し続けていた。
どこで撮られたのかまるで身に覚えのない写真が、どんどん送られてくる。
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横山は震え続ける携帯を手にしながら、顔から血の気が引いて行くのを感じていた。
何だこれは‥?ハッキリ顔が‥

これまでスレに上がった写真など比較にならぬ程、そこには自分の顔が鮮明に写っていた。
しかも一枚や二枚ではなく、数十枚という単位でそんな写真が送られて来る。
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横山は携帯に向かって怒りの声を上げた。
「うおおお!この鬼畜野郎‥!もう止めろ!お前の方がストーカーじゃねぇか!!
お前わざと俺に近付いて来たんだろ?!このキ◯ガイ女、ただじゃおかねぇっ‥!!」

横山がそう吼えた瞬間、まるでそれを聞いていたかのようにこんなメッセージが入って来た。
こんなことして、ただじゃおかない?
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頭に血が上った横山は、それに対して大声で返答する。
「当たり前だろ!そうだてめぇなんつったっけ?”寂しいから慰めて”だったか?!
同情引いといてこんなことしでかしやがって!てめぇ、今度俺の目の前に現れやがったらー‥!」

横山がその台詞を言い終わる前に、メッセージが一通入って来た。
見せかけかそうでないかも区別出来ない、マヌケ野郎。

それを見た瞬間、横山は目を剥いた。
ポカンと口を開け、携帯画面をじっと見つめる。
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もう一度、携帯電話が震える。
何度言っても分からないか
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横山の頭の中に、いつか耳にしたその言葉が蘇る。
君は見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、文句が多いね

あれは去年の夏だった。
赤山にふられ、そのことを青田淳に電話で詰め寄った時に言われた、その言葉‥。
「青‥田‥?」
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横山は分からなくなった。
この携帯の向こうにいる人間は、”ニセ青田”なのか、それとも青田淳本人なのか。
聞き覚えのあるその台詞の向こうに、青田淳の影が揺れる。
するともう一度、携帯電話が震えた。
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その写真を見た途端、横山は驚愕した。
そこに写っていたのは、赤山に向かって鞄を投げている、昨夜の自分の姿だったー‥。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<自滅>でした。
横山が今の状態になってしまったのは、皆が言うとおり彼の”自滅”ですよね‥。
けれど横山本人はそのことに気がつかない。”誰か”のせいだと思っている。
(この漫画の登場人物、結構こういう性質の人が多いですね‥)
その真実に気がつくことが出来たら、前に進むことが出来るんでしょうが‥。
清水香織は最後まで気づくことが出来ずに、消えて行きました。
さて横山翔は一体どんな最期を迎えるのでしょうか‥。
次回、<イタチの最期>です。
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ハァハァと息が切れるが、とにかく逃げなくてはと必死だった。
目の前の暗闇は、どこまでも広がっている。
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確かに道路を走っているはずなのに、足元は砂浜を走っているかのように沈み込む感覚があった。
走っても走ってもこの闇から抜け出せない。
こんな‥一体どうしてこうなった?どういうことなんだ‥!
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ほんの数時間前まで、確かに一筋の光が見えていた。
更に言えば、数週間前まで自分は科の中心人物になり得る程の地位を保っていたのに‥。
赤山か?また赤山がやったのか?違うのか?それじゃあ一体誰が‥?!
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脳裏に赤山の姿が浮かんだが、パニックで深くは考えられない。
この足が深く沈み込むような感覚。横山は心の中で叫んだ。
一体どうしてこんな‥?!
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横山は足を止め、フラフラしながらその場に佇んだ。
顔は青ざめ、流れ行く汗が止まらない。
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鼓膜の裏で、皆の声が反響した。
クズ!
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直美を始めとした、経営学科の女子達。
クズ!
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侮蔑の視線を寄越しながらそう言った、経営学科の男子達。
クズ。
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最後に浮かんだのは、赤山雪だった。
まるで汚らしいものでも見るかのような目つきをしながら、そう言った赤山の姿‥。
その眼差しを思い出した横山の心の中に、カッと火が点いた。
クソッ!やっぱり赤山が‥!
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自分が今の地位に転落したのは赤山のせいだと、横山は結論付けて携帯を手に取った。
すると同時に携帯が震えた。”切り札”もとい”ニセ青田”から、メッセージが一件入っている。
面白いことしてたね、昨日
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唐突に送られて来たそのメッセージに、思わず横山は狼狽した。
通行人が自分の方を振り返るのにも気づかず、言葉を漏らす。
「は?なんだいきなり‥。ってか、なんで知って‥?!」
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暫し当惑していた横山だが、じきに腹の底から怒りが沸いて来た。
目を見開き、青筋を立て、”ニセ青田”に憤慨する。
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横山は感情のままに”ニセ青田”へ電話を掛けたが、いくら待っても彼女は電話に出なかった。
怒りに震えながら、横山は彼女へメッセージを送る。
「お前、青田の指示であの時、狂った女を演じたんだろ?!
お前らがグルだってこと、俺が気づかなかったとでも思うか?!
お前らも、赤山も、あのヤンキー野郎も、全員訴えてやる!絶対に示談になんて持ち込ませねぇからな!!」
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そう打ち終え、送信すると、すぐに返事が返って来た。
訴える?アンタが?
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そしてすぐに一言。
ストーキング。
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横山は目を見開いてそのメッセージを見つめていた。
どんどんメッセージは入り続ける。
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暴行未遂。 脅迫罪。 名誉毀損。 侮辱罪。
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それは、今まで横山が無自覚の内にやらかしてきた罪名だった。
その罪を見せつけるかのように、メッセージは続く。
当然これらの事に対して、
裁かれる覚悟があって告訴するつもりなんだよね?
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畳み掛けるようなその攻撃に、横山は頭がついていかずただポカンと口を開けた。
メッセージは入り続ける。
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次に入って来たのは、自分が写っている写真だった。
寝ている赤山に気付かれぬよう、そっと彼女の手帳を盗み見ている写真‥。
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携帯は写真を受信し続けていた。
どこで撮られたのかまるで身に覚えのない写真が、どんどん送られてくる。
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横山は震え続ける携帯を手にしながら、顔から血の気が引いて行くのを感じていた。
何だこれは‥?ハッキリ顔が‥
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これまでスレに上がった写真など比較にならぬ程、そこには自分の顔が鮮明に写っていた。
しかも一枚や二枚ではなく、数十枚という単位でそんな写真が送られて来る。
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横山は携帯に向かって怒りの声を上げた。
「うおおお!この鬼畜野郎‥!もう止めろ!お前の方がストーカーじゃねぇか!!
お前わざと俺に近付いて来たんだろ?!このキ◯ガイ女、ただじゃおかねぇっ‥!!」
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横山がそう吼えた瞬間、まるでそれを聞いていたかのようにこんなメッセージが入って来た。
こんなことして、ただじゃおかない?
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頭に血が上った横山は、それに対して大声で返答する。
「当たり前だろ!そうだてめぇなんつったっけ?”寂しいから慰めて”だったか?!
同情引いといてこんなことしでかしやがって!てめぇ、今度俺の目の前に現れやがったらー‥!」
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横山がその台詞を言い終わる前に、メッセージが一通入って来た。
見せかけかそうでないかも区別出来ない、マヌケ野郎。
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それを見た瞬間、横山は目を剥いた。
ポカンと口を開け、携帯画面をじっと見つめる。
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もう一度、携帯電話が震える。
何度言っても分からないか
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横山の頭の中に、いつか耳にしたその言葉が蘇る。
君は見せかけかそうじゃないかもまともに区別出来ないくせに、文句が多いね
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あれは去年の夏だった。
赤山にふられ、そのことを青田淳に電話で詰め寄った時に言われた、その言葉‥。
「青‥田‥?」
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横山は分からなくなった。
この携帯の向こうにいる人間は、”ニセ青田”なのか、それとも青田淳本人なのか。
聞き覚えのあるその台詞の向こうに、青田淳の影が揺れる。
するともう一度、携帯電話が震えた。
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その写真を見た途端、横山は驚愕した。
そこに写っていたのは、赤山に向かって鞄を投げている、昨夜の自分の姿だったー‥。
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<自滅>でした。
横山が今の状態になってしまったのは、皆が言うとおり彼の”自滅”ですよね‥。
けれど横山本人はそのことに気がつかない。”誰か”のせいだと思っている。
(この漫画の登場人物、結構こういう性質の人が多いですね‥)
その真実に気がつくことが出来たら、前に進むことが出来るんでしょうが‥。
清水香織は最後まで気づくことが出来ずに、消えて行きました。
さて横山翔は一体どんな最期を迎えるのでしょうか‥。
次回、<イタチの最期>です。
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他の写真も結構前の時期の写真だし、抜け目なくて怖い!むしろ一番頭脳派…!?
学科の悪口も満遍なく書き散らかしていた様子
なんて言うか今にいつも不満があってしかもいつも誰かのせいにしか思えない
師匠が書いてましたが、やたら誰かのせいっていう極端な思考回路に陥るタイプが多すぎる
出現率高すぎですよ
しかし静香噛んでるの結構長期戦ですよね
結構な努力が、デキル子だったのにその力の向け所がもったいない
ほんと美貌も、備えていて知恵もこんだけ回ったらなんとかなりそうなのに
次か次の次くらいで横山編終わりですか?
これ、青田先輩がやったんですかね...?かっこいい...!
やっと横山消えてくれるので嬉しいです(笑)
見てる分には滑稽で面白いキャラですが、迷惑過ぎて
他の人が可哀想すぎたので。
こんな文句書くと脅迫罪にも取れます。
でもこのメッセージには無いですね。流石黒田淳。
でも最後の「マヌケ野郎」は侮辱罪になれないかしら。
まぁ、訴えないという確信があるからかも知りませんね。
ぽやーんと現れたように見えた静香なのに、直前まで雪と横山の修羅場を静観してたなんてな‥。
と淳口調で言ってみます(笑)
そして結構前の写真は、果たして静香のものかな‥?^^
色々な人達が陰で動いて、横山は転落の一途を辿るんですよ~^^
むくげさん
そうなんです、横山はいつまでたっても自分が悪いということに気がつかないおバカさん‥。
静香は野生の勘が働くタイプですが、この件については基本依頼を受けてやってますからね。
それでもあれだけの美貌があればもっと上手く生きていけそうな‥。
小春さん
「救いようがない」とはまさに横山のこと‥。
次回の記事の題名は<イタチの最期>、つまり横山の記事は次回最後です~!お楽しみに!
あさん
横山も清水香織も、ストーリーを動かすためには欠かせない人物だったには違いないですが、週刊連載を追ってる身としては、彼らが問題を起こすだけの回などはとてもキツかった‥TT
ですので今はホッとしています‥。
CitTさん
遂に淳が「黒田淳」に‥笑
訴えてやる!(notダチョウ倶楽部)示談になんて持ち込ませないってセリフを聞いて、韓国ではわりとなんでも裁判という流れに持ち込みたがるだとかなんとかっていう事を、青さんか、るるるさんか、citTさんに教えて頂いたのを思い出しました。←どれもこれもざっくりな記憶…
ざっくりな記憶を元に振り返る中、横山翔の声がフリーザだったらってな話題に辿り着き、ゾッくりagain…もうある意味最強
むくげさん同様、極端な思考の登場人物多いし、また行動や展開が極端すぎやしませんか…A大すごいのな。
学生同士で訴え訴えられって、日本では聞いたことがないような‥。この辺に文化の違いを感じますよね。
横山の声フリーザ‥ぷはは!ありましたねそんな話題が!
嫌ですね~‥絶対声高そうですよね横山‥
ドラマではどんな感じの人がキャスティングされるのか楽しみです。
どうなってるんでしょうね?
ドラマの話どーなってんだかと思ってたところです。
下手に原作イメージ壊されるくらいなら、没なら没でいいって思ってますけど。
ファンの間では有力なのがホンソル役ハン・ヒョンジュ、ユジョン役パク・ヘジンらしいですね。