雪は目を見開いた。
”青田淳の友達”だというその男が、目の前に立っていたからだ。

すると又斗内が立ち上がり、「何だテメェは」と凄み出した。

亮が悪びれずあっけらかんとしているので、斗内は彼の体を強く押す。

すると亮は斗内の手首を掴むと、そのままぐっと力を入れた。

その握力に、斗内の顔が歪む。
「早く手を下ろしたらどーですか?」「‥‥!」

亮の態度に、斗内は大きな声で吼えた。
ただのウエイターのくせに生意気だ、マジで頭おかしいんじゃないのかと。
「この底辺が!さっさと離せよ!」

その言葉に、亮は反応した。
振り払うように斗内の手を離すと、強い眼力で彼を睨む。
「はぁ?底辺だぁ?」

そのまま腕を斗内の方へ伸ばす亮。

斗内はその圧倒的な雰囲気に飲まれ、とうとう亮に向かって拳を振るった。
「うわぁぁっ!」

店内は騒然とした。女性客は叫び、男性客も一斉に席を立つ。
雪はその騒動の中、一人立ちすくんでいた。

殴られても不気味に笑う亮に、
錯乱した斗内はもう一度パンチを浴びせる。

その時雪は見た。
亮がわざと唇を噛み、その腔内から血が出るのを。

亮はそのままフラフラと覚束ない足取りでたたらを踏むと、
大きな音を立ててその場に倒れ込んだ。

亮は痛い痛いと言いながら、その場で転げ回った。
その大仰なリアクションに、斗内がふざけんなと捲し立てる。
すると亮は顎を押さえながら、口からペッと血を吐き出した。

「血が出てる!歯もグラグラしてる!めまいがして吐きそうだ~~!」

雪は、いきなりの亮の態度の変化に困惑しっぱなしだった。
斗内も腹が立ち、「いい加減にしろ」ともう一度亮に掴みかかろうとした。

すると亮は身を翻し、斗内の腕を取るとそのまま抗えない体勢へと持ち込んだ。
「人を何回殴れば気が済むんです?お客様、これは正当防衛です。自分を守る為のね」

もっと殴ってみろよ、と挑発に似た言葉を掛けながら、亮は斗内を制した。
しかし上司や他のウエイターに取り押さえられ、ようやく二人は引き剥がされた。

騒然とした店内に、先に手を出した斗内を罵倒するざわめきが聞こえてくる。
斗内は屈辱を感じ、赤面した。

大丈夫ですか、と声を掛けようと近付いた雪に向かって、斗内は暴言を吐いた。
「おい!あいつは何なんだ?!元彼か?!ビッチが合コンなんか出てきやがって!」

斗内はあらん限りの罵詈雑言を雪に浴びせた。
雪の脳裏に聡美の顔が一瞬浮かんだが、あまりに酷いその言葉に、ついに耐え切れず口を開いた。
「この全身油男が!!お前なんかに宴麺の味が分かるかっつーの!
一生そうめんにケチャップ混ぜて食ってやがれ!!」


あれだけざわついていた店内は、一瞬にして静まり返った。
雪は椅子に置かれたカバンだけ素早い動きで取ると、「注文はキャンセルさせて下さい!」と言ったきり店を後にした。

そんな彼女の残像を見ながら、亮はあんぐりと口を開けた。

やっぱりあの女はおかしい‥。
只者じゃないと思っていたが、やはり曲者だったか‥。

ふと気がつくと、斗内がこっそりと逃げ出そうとしていた。
亮は彼の肩をがっしりと掴むと、顎をさすりながら慰謝料の話し合いをしようと詰め寄る。

しかし亮は上司から肩を掴まれ、笑顔で通告された。
「お前クビ」

河村亮、労働開始から解雇通告まで二時間足らず。

最短記録更新であった‥。

三日月の光る初夏の夜に、一人猛ダッシュしている女が居た。

その尋常じゃない様子に、道行く人は皆振り返った。
雪は先程の出来事に、あの男達に、耐え難い怒りを抱えながら爆走する。
「キャッ!」

するとパンプスのヒールが折れ、雪はその場に倒れ込んだ。

顎は擦りむき、膝はストッキングが破れ汚れている。
手のひらにも血が滲んだ。

雪は己の運命に、その悲惨さに、嘆きを通り越して笑ってしまった。

私が何をしたというのだろう。
なぜいつも私の人生はこうなのだろう。
いつまで這いつくばっていなければいけないんだろう。
「どうしてだんだんと惨たらしさが倍増していくの?!!」

これ以上どうすればいいのか、誰も教えてはくれない。
雪の叫びは暗い夜道に、吸い込まれるように消えていった。

その頃レストランでは、
逆上した上司が亮に掴みかかろうとするが、亮はなかなか斗内を離さない。

そんな折、亮はある物が店に残されていることに気がついた。

それはあの女が座っていた椅子の上に放置されていた、

時代遅れの携帯電話だ。

亮はそれを手に取ると、誰にも気付かれないようにポケットに仕舞った。
しばし頭を抱えていた雪は、続けてカバンを掴み取った。

聡美に電話して、問い詰めてやる。
一ヶ月分の学食の食券渡されたとしても許してやるもんかと、息巻いてカバンを漁った。

しかし手で探った感じ、無い。
次はカバンの中身をひっくり返してみたが、無い。
いつの間にか、彼女の携帯電話は姿を消していた。
雪はどこで失くしたのか記憶を辿ってみた。

お店に置いてきたのか、走ってる途中で落としたのか‥。
もし店に置いてきたのだとしても、今あそこに戻る勇気は無い‥。

雪はとりあえず家に帰ることにした。
折れたヒールの靴は履けなかったので、そのまま裸足でペタペタと歩いて行った‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<合コン(2)>でした。
<合コン(1)>にて、ケチャップ麺として載せていたものは、ビビンクックスという料理だというご指摘を頂きました。
訂正追記しましたので、どうぞ御覧くださいませ。
これからもご意見、どしどしお待ちしています。
間違った情報を載せてしまい、申し訳ありませんでした。
m(_ _)m
次回は<不機嫌な御曹司>です。
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”青田淳の友達”だというその男が、目の前に立っていたからだ。

すると又斗内が立ち上がり、「何だテメェは」と凄み出した。

亮が悪びれずあっけらかんとしているので、斗内は彼の体を強く押す。

すると亮は斗内の手首を掴むと、そのままぐっと力を入れた。

その握力に、斗内の顔が歪む。
「早く手を下ろしたらどーですか?」「‥‥!」

亮の態度に、斗内は大きな声で吼えた。
ただのウエイターのくせに生意気だ、マジで頭おかしいんじゃないのかと。
「この底辺が!さっさと離せよ!」

その言葉に、亮は反応した。
振り払うように斗内の手を離すと、強い眼力で彼を睨む。
「はぁ?底辺だぁ?」

そのまま腕を斗内の方へ伸ばす亮。

斗内はその圧倒的な雰囲気に飲まれ、とうとう亮に向かって拳を振るった。
「うわぁぁっ!」

店内は騒然とした。女性客は叫び、男性客も一斉に席を立つ。
雪はその騒動の中、一人立ちすくんでいた。

殴られても不気味に笑う亮に、
錯乱した斗内はもう一度パンチを浴びせる。

その時雪は見た。
亮がわざと唇を噛み、その腔内から血が出るのを。

亮はそのままフラフラと覚束ない足取りでたたらを踏むと、
大きな音を立ててその場に倒れ込んだ。

亮は痛い痛いと言いながら、その場で転げ回った。
その大仰なリアクションに、斗内がふざけんなと捲し立てる。
すると亮は顎を押さえながら、口からペッと血を吐き出した。

「血が出てる!歯もグラグラしてる!めまいがして吐きそうだ~~!」

雪は、いきなりの亮の態度の変化に困惑しっぱなしだった。
斗内も腹が立ち、「いい加減にしろ」ともう一度亮に掴みかかろうとした。

すると亮は身を翻し、斗内の腕を取るとそのまま抗えない体勢へと持ち込んだ。
「人を何回殴れば気が済むんです?お客様、これは正当防衛です。自分を守る為のね」

もっと殴ってみろよ、と挑発に似た言葉を掛けながら、亮は斗内を制した。
しかし上司や他のウエイターに取り押さえられ、ようやく二人は引き剥がされた。

騒然とした店内に、先に手を出した斗内を罵倒するざわめきが聞こえてくる。
斗内は屈辱を感じ、赤面した。

大丈夫ですか、と声を掛けようと近付いた雪に向かって、斗内は暴言を吐いた。
「おい!あいつは何なんだ?!元彼か?!ビッチが合コンなんか出てきやがって!」

斗内はあらん限りの罵詈雑言を雪に浴びせた。
雪の脳裏に聡美の顔が一瞬浮かんだが、あまりに酷いその言葉に、ついに耐え切れず口を開いた。
「この全身油男が!!お前なんかに宴麺の味が分かるかっつーの!
一生そうめんにケチャップ混ぜて食ってやがれ!!」


あれだけざわついていた店内は、一瞬にして静まり返った。
雪は椅子に置かれたカバンだけ素早い動きで取ると、「注文はキャンセルさせて下さい!」と言ったきり店を後にした。

そんな彼女の残像を見ながら、亮はあんぐりと口を開けた。

やっぱりあの女はおかしい‥。
只者じゃないと思っていたが、やはり曲者だったか‥。

ふと気がつくと、斗内がこっそりと逃げ出そうとしていた。
亮は彼の肩をがっしりと掴むと、顎をさすりながら慰謝料の話し合いをしようと詰め寄る。

しかし亮は上司から肩を掴まれ、笑顔で通告された。
「お前クビ」

河村亮、労働開始から解雇通告まで二時間足らず。

最短記録更新であった‥。

三日月の光る初夏の夜に、一人猛ダッシュしている女が居た。

その尋常じゃない様子に、道行く人は皆振り返った。
雪は先程の出来事に、あの男達に、耐え難い怒りを抱えながら爆走する。
「キャッ!」

するとパンプスのヒールが折れ、雪はその場に倒れ込んだ。

顎は擦りむき、膝はストッキングが破れ汚れている。
手のひらにも血が滲んだ。

雪は己の運命に、その悲惨さに、嘆きを通り越して笑ってしまった。

私が何をしたというのだろう。
なぜいつも私の人生はこうなのだろう。
いつまで這いつくばっていなければいけないんだろう。
「どうしてだんだんと惨たらしさが倍増していくの?!!」

これ以上どうすればいいのか、誰も教えてはくれない。
雪の叫びは暗い夜道に、吸い込まれるように消えていった。

その頃レストランでは、
逆上した上司が亮に掴みかかろうとするが、亮はなかなか斗内を離さない。

そんな折、亮はある物が店に残されていることに気がついた。

それはあの女が座っていた椅子の上に放置されていた、

時代遅れの携帯電話だ。

亮はそれを手に取ると、誰にも気付かれないようにポケットに仕舞った。
しばし頭を抱えていた雪は、続けてカバンを掴み取った。

聡美に電話して、問い詰めてやる。
一ヶ月分の学食の食券渡されたとしても許してやるもんかと、息巻いてカバンを漁った。

しかし手で探った感じ、無い。
次はカバンの中身をひっくり返してみたが、無い。
いつの間にか、彼女の携帯電話は姿を消していた。
雪はどこで失くしたのか記憶を辿ってみた。

お店に置いてきたのか、走ってる途中で落としたのか‥。
もし店に置いてきたのだとしても、今あそこに戻る勇気は無い‥。

雪はとりあえず家に帰ることにした。
折れたヒールの靴は履けなかったので、そのまま裸足でペタペタと歩いて行った‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<合コン(2)>でした。
<合コン(1)>にて、ケチャップ麺として載せていたものは、ビビンクックスという料理だというご指摘を頂きました。
訂正追記しましたので、どうぞ御覧くださいませ。
これからもご意見、どしどしお待ちしています。
間違った情報を載せてしまい、申し訳ありませんでした。
m(_ _)m
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SAといいます。
偶然なきっかけで見始めましたが
Cheese in the trapって面白いですね。
このブログの読んだ後に見ればもっと分かりやすくていろいろ助かりました。
いきなり失礼ですが「ケチャップ混ぜて食ってやがれ」はトマトソースのこと、
写真の赤いのは韓国のゴチュジャンソースをベースにしたビビンクックスだと思います。
あっちでは結構メージャーな食べ物です。夏の麺類は大体あのソースのが定番だと^^。。
本当にそうめんにケチャップ混ぜたらショックですね。
初めまして、管理人のYukkanenと申します。
コメントありがとうございます!
あの赤いソースはケチャップでなく、コチュジャンなんですね‥!それは申し訳ありませんでした。
すぐに訂正させて頂きます。
私自身韓国の文化や食べ物など、まだまだ勉強中の身ですので、ご指摘頂きありがたいです。
ビビンクックス‥この夏挑戦してみます!
ありがとうございました(^^)!
どーします?ツアー組みますか?チートラツアー。SAさんのガイドで…←いきなり図々しい(笑)
本当本当、食文化も民族の文化もやっぱり違いますよねぇ。チートラツアー!モデルになったと言われている建国大学めぐっちゃいますか?!
そして草むらに隠れて口を塞ぎ合って萌えたりとか‥。ww
あらためてこのブログでチーズインザトラップを何度も読み返させていただいています。
さて、今さらのコメントでたいへん申し訳ないのですが、
「ケチャップをまぜたそうめん」というのは、
斗内の「イタリアで食べたトマトソースが忘れられない」という自慢を受けた亮お得意の皮肉なのではないでしょうか…?
過去の記事を読み返して頂いて嬉しいです
>「ケチャップをまぜたそうめん」というのは、
斗内の「イタリアで食べたトマトソースが忘れられない」という自慢を受けた亮お得意の皮肉なのではないでしょうか…?
なるほど‥!
って確かに冷静に考えるとそうですね
ショパソ(!)のこともあり、マタトナイがどこかインチキの知ったか野郎ということを見抜いての皮肉ですね
ここの「合コン」表現は、まんまライン漫画での翻訳を使わせてもらった形です。
こちらの記事の頃はブログを始めて間もなかったこともあり、いわば手探り状態で・・。
ちなみに日本語版単行本ではちゃんと「紹介」になってますよ!(ちゃっかり宣伝)