Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

籠の鳥

2016-12-08 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)


河村亮は元職場の同僚と共に細い路地の上にいた。

同僚の男は、痛そうに顎を押さえている。

「うう‥歯がグラグラする‥」「また殴られたんかよ」



亮は溜息を吐くとこう言った。

「もういい」



「吉川‥そろそろあの野郎をシメねぇとな」



亮が見据える先には、自身と男を支配する元職場の社長・吉川がいた。

今まではただ逃げてばかりだったが、どうやら反旗を翻す結論に達したようだ。



同僚の男は腫れた頬に手を当て、幾分恐縮しながら謝った。

「ごめんね亮‥俺のせいでここから逃げらんないんだろ」

「いーっつの。それよか診断書とか録音とか録画とか、

そういうの集めんの忘れんなよ。わかったか?」
「うん、全部準備してるよ」



亮は男の肩に手を置くと、ゆっくりと低い声でこう口にした。

「今度こそぜってー逃げ切って、お互い真っ当に生きて行こうぜ。な?」






亮からそう言われ、男は嬉しそうに微笑んだ。

籠の鳥であった自身に、亮は出口の光を見せてくれる。

「分かったよ‥!」



不意にポケットの中に入れてあった携帯が震えたので、

亮はそれを取り出した。蓮からメールだ。

亮さん、一次合格だって!連絡来た?行こーぜー!







亮はすっかり忘れていた蓮との約束を思い出し、思わず目を白くした。

出口の無い現状にもがいている籠の鳥が、ここにももう一羽‥。







都内某所にあるZ社企業ビル。

高層階のオフィスフロアの一角にて、青田淳はぼんやりと佇んでいた。



昨夜耳にした雪の言葉が、鼓膜の裏でずっとリフレインしている。

「今は前よりもっと、先輩のことが理解出来る気がします」



心の中に、重たい澱が溜まって行くような気分だった。

うず高く積まれた防波堤の内側で、水嵩ばかりが増して行く。

「‥‥‥‥」



重苦しい気分を助長させるように、ポケットに入れた携帯電話が、

柳瀬健太からのメールを受信した。

俺、卒業試験も上手くいかんかったし、このままじゃ単位も取れねーかもしれねーんだよ!!

もう少し時計の値段負けてくれたら、定期預金解約して払うからよ。

旅行用に溜めてた金があるんだ‥








雪に聞いた話とその流れを推測するに、もう柳瀬健太には後が無いし味方もいないだろう。

淳は今まで被って来た仮面を剥がし、幾分強い態度での文面を作成する。

治療費も貰わないことにしたのに、これ以上まだ譲歩させるつもりですか?

先輩がしたことを思い出すと腹が立つので、もう連絡しないで下さい。




数分後、健太からの反論が届いた。

お前、そりゃあまりに酷くねーか?

お前がそのつもりなら、俺も赤山に話すぞ。あのハーフ女とワケアリの関係なんだってな!







”ハーフ女”こと河村静香と柳瀬健太は、

以前佐藤広隆を交えて顔を合わせている場面を目にしたことがある。



あれ以降どちらかが淳を陥れる為に、コンタクトを取ったという可能性も高いだろう。

誤魔化しても無駄だぞ!俺は全部知ってんだ!



まるで切り札のように静香との関係性をちらつかせる健太であったが、

淳の態度は変わらなかった。

何を言ってるのか意味が分かりません。

そういう女性がいるなら一度教室に連れて来て下さい。俺明後日学校ですから




ヒッ



柳瀬健太は淳からのその返しに息を飲んだ。

切り札としての”ハーフ女”だったが、特に決定的な証拠を掴んでいるわけじゃない。

つい売り言葉に買い言葉で‥こんなつもりじゃ‥



そんな健太を見透かすかのように、淳から続けてメールが届く。

どうせ来ないと思いますけど。



ジ・エンド‥。

健太の頭の中に、追い打ちを掛けるかのような悪魔直美が嘲笑っている。

「証拠あるんですか?」「証拠証拠」「証拠もないくせに〜」

あ〜オワタ〜



再び健太の携帯が震える。

こういった行動に出ることで損をするのはそちらです。

また連絡して来たら、治療費も請求させて頂きますので




取り付く島もないとはこのこと‥。健太は頭を抱えて座り込んだ。

マジでオワコンだ‥俺‥



そして淳からの最終通告が届く。

あ、それと雪に迷惑掛けないで下さい。



オワタ‥。

ああああ〜〜〜〜









淳は健太へのメールを打ち終えると、続けて柳にメールを打ち始めた。

静香との関係性で一悶着起きる気はしなかったが、横山翔の一件の例もある。

柳に雪周辺の近況について聞いておいた方が良いだろう。

雪に何かあった?

今日健太が赤山ちゃんに絡もうとしてたけど、

アイツ今悲惨な状態だし何も出来やしねーと思う。

もうそんな心配することねーんじゃねーかね〜




柳からの返信は早く、それはいくらか淳に安心感を与えた。

それでも胸の中がざわめく不快感は簡単には消えてくれず、

淳は溜まった澱を放出するかのように息を吐く。



一見何不自由なく暮らしているように見える彼は、実は見えない籠の中に捕らわれている。

大学を出ても‥いや、



どうせどこへ行ったって‥



籠の鳥は、結局幾ら羽ばたいてもそこから抜け出せない‥。

ブルル‥



再び携帯が震え、メールが届いた。

しかし差出人は柳瀬健太でも柳楓でもない。

<佐藤広隆>

卒業試験上手くいった?

ああ。

今赤山から頼まれて静香さんの勉強見てるんだ。

赤山は本当に親切だよな。皆に気を配って







佐藤からの文面を読んだ後、思わず淳は目を丸くした。

そして遠い場所で一羽の鳥が羽ばたく、小さな羽音が聞こえた気がした。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<籠の鳥>でした。

それぞれがそれぞれの状況をこじらせ、そこから羽ばたこうともがいているような回でしたね。

健太は自業自得ですが!

次回も鳥繋がりです^^<飛べない鳥>です。

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5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (あい)
2016-12-08 13:15:02
更新ありがとうございます!!
普段雪ちゃんと読んでる先輩が、周りとのメールでは雪って呼んでるのめっちゃキュンとしました♡
なんか俺の雪みたいな(笑)
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なんだか (うめやん)
2016-12-08 22:11:56
じわじわと過去の雪のことが怖い、と言ったあの時の淳がなんだかうす〜くイメージされるんですよね。。

近しい存在→
淳の根回し方をマスター→
淳の思想も理解→とって食われる恐怖

的な、、
そしてこのサーッと引く感じ、、
恋愛感情より保身を優先する淳に戻らないかな、、(´-`).。oO
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Unknown (宵っぱり)
2016-12-09 06:58:13
どうせどこへ行ってもっていう閉塞感なんか分かります。
でも淳の場合能力あるんだし、海外とかもっと広い世界に出ていったらいいのに。
こんなレベルの低い人間ばっかじゃなく尊敬できる人たちに出会って変われないかな。
どこへ行っても監視される、って諦めちゃってますもんね。
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Unknown (ab)
2016-12-09 23:52:13
静香の勉強見てることを青田先輩が知っちゃった…
どうなっていくんでしょう(^^;どきどき
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Unknown (Yukkanen)
2016-12-20 00:12:44
あいさん
俺の雪!俺のイタリアン的な!
原文では区別ないんですよね。日本語版の訳オリジナルみたいですが、良いですよね!

うめやん
あ〜わかります。ちょっと引いちゃってますよね。。保身に走ると物語が元に戻っちゃう気がするので、先輩にはどうか進化を遂げて欲しい!

宵っぱりさん
淳の場合なかなか世界を変えるのは難しいと思いますが、実は自分次第で変えられるんだと思うんですけどね〜。そこを変えないから周りの関係がいつまでたっても同じなんですよね。

abさん
まさかの佐藤先輩から悪意なく(むしろ善意?)聞かされることになるとは‥。ドキドキ!
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