福島民報より転載
県、農業用水路除染 25年産米作付けまでに
東京電力福島第一原発事故で拡散した放射性物質の水田への流入を防ぐため、県は平成25年産米の作付け前までに、汚染状況重点調査地域に指定されている40市町村で農業に使われている用排水路の除染を完了させる。市町村と農家の協力を得て、水路の土砂を取り除く。水路の総延長は2万キロ以上に及ぶ見通しで、県は土砂の除去量を最大40万立方メートル程度と推計している。ただ、中間貯蔵施設建設の見通しが立たない中、仮置き場の確保などが課題となる。
佐藤雄平知事が4日、年頭記者会見で方針を示した。
環境省が昨年12月、農業用の用排水路の除染を国の費用負担の対象としたことを受け、会津地方の一部や警戒区域内などを除く汚染状況重点調査地域の40市町村を対象に実施する。取り除いた土砂の空間放射線量が毎時0・23マイクロシーベルト(年間1ミリシーベルト)以上の場合、国が除染費用を負担する。市町村が個別に費用を算定し、県を通じて支払いを受ける。
ただ、毎時0・23マイクロシーベルトを下回った場合は国の費用負担の対象にはならない。
除去する総量の40万立方メートルは、東京ドームの3分の1に相当する。毎時0・23マイクロシーベルト以上の土砂は袋詰めし、土をかぶせるなどして一時保管する。市町村、各農家とともに地域ごとに作業計画をつくり、大型水路などの作業は業者への発注も想定している。佐藤知事は会見で「農業水利施設での放射性物質の拡散防止に取り組む」と意欲をみせた。
■拡散防止へ県現場定期確認
県は農業用の用排水路から除去した土砂の多くは水田付近で一時保管せざるを得ないとみている。多くの市町村で汚染廃棄物の仮置き場確保が難航しているためだ。風雨による放射性物質の拡散防止に向け、県は定期的に現場で安全確認する。
山林から放射性物質に汚染された土砂が水路に混入する懸念もある。このため、水路の屈曲部や流れが緩い場所など土砂がたまりやすい地点を選び、モニタリングする。放射線量が上昇した場合、再び除染する考えだ。
農業用の用排水路の土砂をめぐっては、国の除染方針が示されておらず、県は農家に対し土砂を移動しないよう求めていた。