東京新聞より転載
「年金は下がり生活切り詰め」 消費増税表明に商店街では
2013年10月2日
青果店で商品を手に取って選ぶ高齢者。増税への不安は大きい=千葉市内で
安倍晋三首相が一日に表明した来年四月からの消費税率引き上げは、代わりに復興特別法人税の前倒し廃止の検討をうたうなど、企業優遇色が強い。社会的弱者には生活保護費に加え、年金の引き下げも今月から始まる。増税が決まったこの日、千葉市内でも有数の大規模団地で、高齢化が進む花見川団地(同市花見川区)の商店街を歩いてみた。 (佐々木香理)
◆高齢者に不安の声
花見川団地は一万人以上が暮らすが、商店街でもすれ違う人のほとんどはお年寄りだった。
「年金は下がって税金は上がる。死ねと言われているような気分」。団地に住む女性(84)は、諦めたような表情でこうつぶやいた。遺族年金の支給を今月から減額する通知がきたばかり。「介護保険料も負担が大きいし、なんでも厳しくなる。働きたくても働けないのに」と足をさすった。
買い物に来ていた女性(71)は「前の(税率)引き上げのときは働いていたから大丈夫だったけど、今回は別」と厳しい表情だ。激安品の多い大型スーパーを活用して支出を抑えたいが、団地から距離もあって体力的に難しい。「結局は生活を切り詰めるしかないね」
店側の不安も当然大きかった。商店街ができた一九六八年から店を構える青果店主大沢利次(としつぐ)さん(68)は「8%では(商売が)やりにくい。さすがに値上げを考えてしまう」と困り顔だ。3%から5%へ上がったときは、赤字覚悟で価格を変えなかった。周囲の小売店も同じだったが、この三~四年で十店舗は閉店した。「ここは客の七割が高齢者。買い控えされたら閉店する店がさらに増えるかも」
精肉店の男性店主(59)は、店先に焼き上がった総菜を並べながら「決まったものは仕方ない。だが、大概の税制で恩恵を受けるのは大企業だ」とばっさり。「せめて税金の使い道が分かる外税(方式)に統一してほしい」と注文を付けた。
◆被災地優先で
安倍首相が一日夜の記者会見で表明した消費税率引き上げや、復興特別法人税の前倒し廃止の検討は、福島県から県内に避難する被災者に不信も与えたようだった。
福島県南相馬市から柏市に夫婦で避難する松本フジ子さん(63)は、首相会見をテレビで見て「(首相は)福島の復興なくして日本の復興なしと言っていたのに。企業でなく被災地を優先すべきなのでは」と話した。首相は会見で企業収益の改善を賃上げにつなげる方針を強調したが「政府がいうように、給料に反映されるのか」(松本さん)と不信感を募らせる。これまでも、復興予算が本来の使い道でない官庁の改修などに使われた記憶が強いためだ。
夫の栄一さん(63)は「働く場がなければ、被災地も困る。企業も生き残るために必死なのだと思う」と一定の理解を示すが、夫婦でも受け止めは複雑だ。
福島県浪江町から柏市に避難する山本孝一さん(79)は、首相会見を見て「予算をけちられては、遅れている復興がさらに進まなくなる。増税は仕方ないと思うけど、復興はきちんとやってくれないと」と、復興特別法人税の前倒し廃止による復興財源の減少を心配した。 (三輪喜人)
「年金は下がり生活切り詰め」 消費増税表明に商店街では
2013年10月2日
青果店で商品を手に取って選ぶ高齢者。増税への不安は大きい=千葉市内で
安倍晋三首相が一日に表明した来年四月からの消費税率引き上げは、代わりに復興特別法人税の前倒し廃止の検討をうたうなど、企業優遇色が強い。社会的弱者には生活保護費に加え、年金の引き下げも今月から始まる。増税が決まったこの日、千葉市内でも有数の大規模団地で、高齢化が進む花見川団地(同市花見川区)の商店街を歩いてみた。 (佐々木香理)
◆高齢者に不安の声
花見川団地は一万人以上が暮らすが、商店街でもすれ違う人のほとんどはお年寄りだった。
「年金は下がって税金は上がる。死ねと言われているような気分」。団地に住む女性(84)は、諦めたような表情でこうつぶやいた。遺族年金の支給を今月から減額する通知がきたばかり。「介護保険料も負担が大きいし、なんでも厳しくなる。働きたくても働けないのに」と足をさすった。
買い物に来ていた女性(71)は「前の(税率)引き上げのときは働いていたから大丈夫だったけど、今回は別」と厳しい表情だ。激安品の多い大型スーパーを活用して支出を抑えたいが、団地から距離もあって体力的に難しい。「結局は生活を切り詰めるしかないね」
店側の不安も当然大きかった。商店街ができた一九六八年から店を構える青果店主大沢利次(としつぐ)さん(68)は「8%では(商売が)やりにくい。さすがに値上げを考えてしまう」と困り顔だ。3%から5%へ上がったときは、赤字覚悟で価格を変えなかった。周囲の小売店も同じだったが、この三~四年で十店舗は閉店した。「ここは客の七割が高齢者。買い控えされたら閉店する店がさらに増えるかも」
精肉店の男性店主(59)は、店先に焼き上がった総菜を並べながら「決まったものは仕方ない。だが、大概の税制で恩恵を受けるのは大企業だ」とばっさり。「せめて税金の使い道が分かる外税(方式)に統一してほしい」と注文を付けた。
◆被災地優先で
安倍首相が一日夜の記者会見で表明した消費税率引き上げや、復興特別法人税の前倒し廃止の検討は、福島県から県内に避難する被災者に不信も与えたようだった。
福島県南相馬市から柏市に夫婦で避難する松本フジ子さん(63)は、首相会見をテレビで見て「(首相は)福島の復興なくして日本の復興なしと言っていたのに。企業でなく被災地を優先すべきなのでは」と話した。首相は会見で企業収益の改善を賃上げにつなげる方針を強調したが「政府がいうように、給料に反映されるのか」(松本さん)と不信感を募らせる。これまでも、復興予算が本来の使い道でない官庁の改修などに使われた記憶が強いためだ。
夫の栄一さん(63)は「働く場がなければ、被災地も困る。企業も生き残るために必死なのだと思う」と一定の理解を示すが、夫婦でも受け止めは複雑だ。
福島県浪江町から柏市に避難する山本孝一さん(79)は、首相会見を見て「予算をけちられては、遅れている復興がさらに進まなくなる。増税は仕方ないと思うけど、復興はきちんとやってくれないと」と、復興特別法人税の前倒し廃止による復興財源の減少を心配した。 (三輪喜人)