東洋経済オンラインより転載
一審判決は「完敗」 どうする、ユニクロ
東洋経済オンライン 10月28日(月)6時0分配信
一審判決は「完敗」 どうする、ユニクロ
ユニクロ側が完敗といっていい判決内容だった。ファーストリテイリングと子会社のユニクロが、名誉毀損で文藝春秋を訴えていた裁判で、東京地裁は10月18日、原告側の請求をすべて退けた。
問題となったのは、『週刊文春』が2010年5月に「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した! 」の見出しで掲載した記事と、この記事を執筆したジャーナリストの横田増生氏が文藝春秋から11年3月に刊行した『ユニクロ帝国の光と影』。これらの記事における記述内容によって名誉を傷つけたとして、ユニクロ側は2億2000万円の損害賠償、取り消し広告掲載、本の回収などを求めていた。
そのうち国内の労働環境について争点となった記述は、事実上1カ所のみ。07年まで働いていた元店長の発言だ。
「11月や12月の繁忙期になると、月(間労働時間が)300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? 薄々は知っているんじゃないですか」
名誉毀損訴訟では、真実であるとまでは認定できないが、十分な取材を尽くしたかどうか、書き手がそう判断する相当の理由があるかどうか、という「真実相当性」の有無が最大の争点となることが多い。それだけ「真実である」と断定するのは難しいのだ。
ところが、今回の地裁判決では、この店長の話は信用性が高いとするなど、「重要な部分が真実」と認定した。つまり、文藝春秋側の完勝といえる。また、中国の工場での劣悪な労働環境を指摘した部分についても、真実相当性があると判断した。
■ 労働条件改善にも着手
11年6月の提訴以来、大手メディアはユニクロが抱える問題について、いっさい報道してこなかった。2億円超の高額訴訟は、ユニクロ批判を封じ、メディア側を萎縮させる効果があったといえるだろう。
しかし、仮にメディアを押さえつけることができたとしても、現場からの声を封圧することはできない。本誌が今年3月9日号で「ユニクロ 疲弊する職場」と題した記事をまとめることができたのも、数々の現場の声を取材できたからだ。 ただ、ファーストリテイリングも離職率の高さを含む労働問題を認識しており、裁判を継続する一方、労働条件や社内制度の改善に取り組み始めていた。
4月から国内ユニクロの全店長約900人に対し、月3万円の「店長手当」と年12万円の「繁忙期手当」を支払うようになった。これにより50万円程度の年収増となる。また6月からは月1回ペースで全店長を本社に集め、店長同士や本部社員との連携を深める「店舗課題解決ダイレクトミーティング」を開始した。
新入社員を半年で店長に登用する制度も、過度のプレッシャーから3年内で5割前後と高い離職率につながっていたため、凍結。入社2年目まで先輩社員がメンターとしてフォローする仕組みも取り入れた。社内公募を充実させ、店舗以外のキャリアパスも用意するようになった。
ファーストリテイリングは今回の判決に対し、「事実に反するものであり、誠に遺憾」とコメント。期限となる11月1日までに控訴するかどうかは10月23日時点で明らかにしていない。はたしてどのような決断をするのだろうか。
(撮影:尾形文繁)
(週刊東洋経済2013年11月2日号)
風間 直樹
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最終更新:10月28日(月)12時20分東洋経済オンライン
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一審判決は「完敗」 どうする、ユニクロ
ユニクロ側が完敗といっていい判決内容だった。ファーストリテイリングと子会社のユニクロが、名誉毀損で文藝春秋を訴えていた裁判で、東京地裁は10月18日、原告側の請求をすべて退けた。
問題となったのは、『週刊文春』が2010年5月に「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した! 」の見出しで掲載した記事と、この記事を執筆したジャーナリストの横田増生氏が文藝春秋から11年3月に刊行した『ユニクロ帝国の光と影』。これらの記事における記述内容によって名誉を傷つけたとして、ユニクロ側は2億2000万円の損害賠償、取り消し広告掲載、本の回収などを求めていた。
そのうち国内の労働環境について争点となった記述は、事実上1カ所のみ。07年まで働いていた元店長の発言だ。
「11月や12月の繁忙期になると、月(間労働時間が)300時間を超えています。そんな時は、タイムカードを先に押して、いったん退社したことにしてから働いています。本部ですか? 薄々は知っているんじゃないですか」
名誉毀損訴訟では、真実であるとまでは認定できないが、十分な取材を尽くしたかどうか、書き手がそう判断する相当の理由があるかどうか、という「真実相当性」の有無が最大の争点となることが多い。それだけ「真実である」と断定するのは難しいのだ。
ところが、今回の地裁判決では、この店長の話は信用性が高いとするなど、「重要な部分が真実」と認定した。つまり、文藝春秋側の完勝といえる。また、中国の工場での劣悪な労働環境を指摘した部分についても、真実相当性があると判断した。
■ 労働条件改善にも着手
11年6月の提訴以来、大手メディアはユニクロが抱える問題について、いっさい報道してこなかった。2億円超の高額訴訟は、ユニクロ批判を封じ、メディア側を萎縮させる効果があったといえるだろう。
しかし、仮にメディアを押さえつけることができたとしても、現場からの声を封圧することはできない。本誌が今年3月9日号で「ユニクロ 疲弊する職場」と題した記事をまとめることができたのも、数々の現場の声を取材できたからだ。 ただ、ファーストリテイリングも離職率の高さを含む労働問題を認識しており、裁判を継続する一方、労働条件や社内制度の改善に取り組み始めていた。
4月から国内ユニクロの全店長約900人に対し、月3万円の「店長手当」と年12万円の「繁忙期手当」を支払うようになった。これにより50万円程度の年収増となる。また6月からは月1回ペースで全店長を本社に集め、店長同士や本部社員との連携を深める「店舗課題解決ダイレクトミーティング」を開始した。
新入社員を半年で店長に登用する制度も、過度のプレッシャーから3年内で5割前後と高い離職率につながっていたため、凍結。入社2年目まで先輩社員がメンターとしてフォローする仕組みも取り入れた。社内公募を充実させ、店舗以外のキャリアパスも用意するようになった。
ファーストリテイリングは今回の判決に対し、「事実に反するものであり、誠に遺憾」とコメント。期限となる11月1日までに控訴するかどうかは10月23日時点で明らかにしていない。はたしてどのような決断をするのだろうか。
(撮影:尾形文繁)
(週刊東洋経済2013年11月2日号)
風間 直樹
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最終更新:10月28日(月)12時20分東洋経済オンライン