東京電力福島第一原発3号機の使用済み核燃料プールに落下した燃料交換機を回収する見通しが立たず、プール内からのがれき撤去作業が1カ月以上、中断している。放射線量が極めて高いことから人が近づけず、現場の状況把握が難航しているためだ。平成27年度に開始予定のプール内からの燃料取り出しや、廃炉工程全体への影響が懸念される。
■困難
3号機使用済み燃料プール周辺の空間線量は毎時3・2ミリシーベルトと極めて高く、作業員が直接立ち入りできない。
東電は遠隔カメラでプール内の状況把握に努めているが、燃料の上には3号機が水素爆発した際に飛散したコンクリートなどのがれきが積み重なっており、燃料交換機の周辺の詳細をつかめていない。
さらに、燃料交換機は約570キロの重さがあり、プール内から安全かつ確実に引き上げるためには遠隔操作できる専用クレーンを新たに投入する必要がある。現在、開発中だが完成の見通しは立っていないという。
燃料交換機が落下したのは8月29日で、進展がないまま1カ月以上が過ぎた。東電福島復興本社は「燃料交換機の周りの状況の把握に時間がかかっている。専用クレーンでの回収を始めたいが、開始時期は示せない」と説明している。
■再開できず
3号機の使用済み燃料プール内には使用済み514体、未使用52体の燃料が保管されている。東電は遠隔カメラの映像などから、落下した燃料交換機は燃料10体の上に乗っていると推測している。
東電は「プール内の放射性物質濃度に目立った変動はなく、燃料に損傷はない」との見解を示している。しかし、経済産業省資源エネルギー庁の担当者は「目視しておらず、完全に(損傷がないと)確認したわけでない」と話している。
一方、政府と東電は福島第一原発の廃炉に向けた中長期ロードマップに、平成27年度前半に3号機の使用済み燃料プールからの燃料取り出しを盛り込んでいる。専用クレーンが完成しても、プール内の状況把握が進まなければ、燃料取り出しの前提となる燃料交換機の回収やがれきの撤去作業を再開できない状態が続く。
■一刻も早く
政府や県の関係者からは早急な対応を求める声が上がっている。
県は落下事故の発生直後、東電に対し早期の原因究明と再発防止策の提示を申し入れた。渡辺仁県原子力安全対策課長は「現時点で何も動きがない。廃炉工程にも影響が出る可能性がある」と懸念している。
原子力規制庁の金城慎司東電福島第一原発事故対策室長は「長期的な視点に立ってしっかりと再発防止策を講じてほしい。一方、(さまざまなリスクを考慮し)使用済み燃料は計画通りに取り出してほしい」と求めている。
【背景】
東京電力は8月29日、福島第一原発3号機の使用済み核燃料プールでがれき撤去作業中、がれきの中に含まれていた燃料交換機が誤ってプール内に落下する事故が発生したと発表した。作業員が免震重要棟から遠隔操作で、クレーンを使いがれきを引き上げていたところ、燃料交換機がクレーンのフォーク(つかみ手)から外れた。
(2014/10/03 11:40カテゴリー:3.11大震災・断面)