転載
タリバーン幹部からマララへの手紙、全訳
もう半年以上前になるが、マララが国連で演説をしたあと、タリバーン幹部からマララへの手紙が公開された。
田中真知さんがブログで細かく解説していたので、そこについては簡単に触れるだけにしておく。
マララを巡る一連の報道にはなんかずっと違和感が伴っていた。
それは結局、西側諸国が推し進めるグローバルな教育のなかで、伝統的なものや宗教的なものが失われていくのではないかという懸念があったからだ。
手紙を書いたアドナンはこのようなことは起きて欲しくなかったとする一方、タリバーンが狙ったのはあなたが教育を進めているからではなく、プロパガンダが問題なのだ、としている。
印象的だったのは
あなたが世界に向けて語りかけている場所、そこは新世界秩序を目指すものだ。しかし旧世界秩序のなにが間違っているというのだ?彼らはグローバルな教育、グローバルな経済、グローバルな軍隊、グローバルな貿易、グローバルな政府、そしてついにはグローバルな宗教まで作り上げようとしている。私が知りたいのはそこに預言的な導きの入り込む余地はあるのかということだ。国連が非人道的や残虐だと言ったイスラームの戒律、イスラームの法の入り込む場所があるのだろうか?
という箇所。
ここで西側諸国(日本も含む)が進めている普遍的な(少なくともそれを目指す)教育に対する危機感が大いに感じられる。
タリバーンの主張が正しいとは言わない。でもグローバルの名の下で失われていく伝統的知識、宗教性への危惧は、文化相対主義を持ち出すまでもないでだろう。日本でも戦後同じ事が起きていたではないか。日本の歴史と言葉だけ教わって、日本の事は殆ど知らない、そんな日本人ばかりではないか。ナショナリズムを推している訳ではない。自分たちが生きている地域の文化や伝統とは何だったのだろう、それを捨てた先に何があるのだろう。永遠にグローバル化が進む訳じゃない、これからむしろローカルに戻っていく時代に、頭だけ西洋人になった日本人に何ができるのだ?
教育がこの上ない人間のエンパワーメントであることは間違いない、それを利用したのが西側諸国の報道であり、マララは言ってみれば西側諸国の被害者でもあるように思える。(もちろんタリバーンの被害者でもある。)
以下は私の訳です、いくつか分からない点があったので、教えて頂ければ幸いです。
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慈悲あまねく慈愛深きアッラーの名のもとに
アドナン・ラシードからマララ・ユスフザイへ
導きに従う全ての者に平和を
マララ・ユスフザイ様
この手紙は個人的に書くものであって、パキスタンのタリバーン運動(Tehreek e Taliban Pakistan)や他の聖戦戦士のグループの意見ではないことを先に述べておく。
私はあなたのことを、バンヌの刑務所の中で、ウルドゥー語のBBCから知った。その時に私はあなたが関わっている反タリバーン運動を辞めるよう忠告するために手紙を書こうと思った。しかし私には住所が分からなくて、どうやってあなたにアプローチしようかと悩んでいたのだ。私はあなたと同じユスフザイ氏族に属し、心から親しみを感じている。
あのとき刑務所で脱獄が起こっていて私は隠れていなければならなかった。あなたが襲撃されたと聞いて私はとてもショックを受けたし、このようなことは起こって欲しくなかった。前もって忠告しておくべきだったと思う。
襲撃がイスラムの法に則っているかどうか、またあなたが殺されるべきかは私には判断しかねるので全てアッラーに任せよう。
ここで私は、先に書いたようにあなたに忠告しておきたい。前もってそうしておくべきだったが、これから同じ事は起こって欲しくはないのだ。
まず最初に、タリバーンがあなたを狙ったのはあなたが学校へ行くからでも、教育を愛しているからでもないことを覚えておいてほしい。そしてタリバーンとムジャーヒディーン(ジハードの為の民兵組織)は男女や子供に関わらず教育に反対してはいないことも忘れないでくれ。タリバーンは、あなたが意図的に彼らを攻撃する文章を書き、彼らが作ろうとしているイスラームに基づく支配を中傷するキャンペーンをしているのだと確信している。
昨日のスピーチであなたはペンは剣よりも尊いと言った。だから彼らはあなたの剣(力)を理由に撃ったのだ。学校や本が理由ではなく。
タリバーンの支配の前も後も、何千もの女の子が学校や大学に通っている。ではなぜあなただけが狙われたか説明できるか?
次に、タリバーンはなぜ学校を爆撃しているのだろう?カイパール・パフトゥンハー州(KPK)や連邦直轄部族地域(FATA)のタリバーンだけでなく、パキスタン軍や辺境警察も関与しているのだ。彼らの目的は同じで、学校が敵のの隠れ家かつ輸送キャンプであるからだ。(基礎知識だがタリバーンとパキスタン軍は敵対関係)
2004年、私は特殊部隊にいて、スフィ・ムハンマドが企てた最初の革命がなぜ失敗したのかを調査していた。その時に辺境警察が学校に駐留し、そこを隠れ家や輸送キャンプとして利用していることを知ったのだ。これは誰の責任なのだろう?
FATAのいくつかの学校が兵舎として使われているのは、やろうと思えば君でも見つけられる。学校のような尊い場所でもそこが死を招く場所だと分かったら、消さなければならない。これがタリバーンのポリシーなのだ。
軍事目的に使われていない学校を爆破することはタリバーンの仕事ではない。どこかの州政府の職務を全うしない役人が資金目的にやっているのだろう。
さて本題の教育に移ろう。あなたが教育を声高に叫んでいるのは素晴らしいことだ。あなたや国連はそのために撃たれたと言っているが、本当の問題はあなたのやっているプロパガンダなのだ。あなたは周囲の要請によって舌を使い訴えている。ペンが剣よりも強いというなら言葉は剣よりも鋭く、剣の負傷者は歓迎されることはあっても言葉の負傷者は決して迎えない。(ここのところhailの意味がよく分からず。hailは神の歓迎ということ?)戦争では言葉はいかなる兵器よりも破壊的だと知っておかなければならない。
インド亜大陸は、イギリスの侵略以前は教育水準も高く、殆ど全ての人が読み書きができたのだ。地元の人間はイギリスの入植者にアラビア語、ヒンディー語、ウルドゥー語、ペルシャ語などを教えていた。ほぼ全てのモスクは学校としても機能していて、ムスリムの皇帝は教育に多大な予算を使っていた。当時は農耕やシルクやジュートの生産に優れていて、服飾から造船までできた。貧困や犯罪、宗教間や文明間の衝突もなかった。教育のシステムが高貴な思想とカリキュラムに基づいていたからだ。
T.B.マコーリー(イギリスの歴史家・政治家)が1835年にイギリス議会に書いた書簡の抜粋を紹介しよう。かれはどのような教育がイスラムの教育システムに変わって取り入れられるべきか書いている。
「我々はまず、我々と何百万もの被統治者を結ぶ階級を作らなければならない。インド人の血と肌を持ちながら、イギリスの趣向や思考、道徳と知識を持った階級を。」
あなたが命がけで守ろうとしている教育システムというのがこれなのだ。国際機関があなたと共に、アジアの血を身体には流しながら頭だけイギリス人、アフリカの肌だが考えだけイギリス人、イギリス人じゃないのに道徳だけイギリス人、そういった人々を次から次へ生み出そうとしている。これがオバマを、大量殺戮を、あなたの理想を生んだ教育だというのでしょう?
なぜ彼らは全ての人間をイギリス人にしようとするのだ?それはイギリス人が誠実な支持者であり、ユダヤの奴隷だからだ。あなたはインドにイギリス式教育を作ったと言われるサイド・アフメド・カーンがフリーメイソンだということを知っているだろうか。
あなたは教師とペンと本さえあれば世界を変えられると言った。私もそれには同意する。しかしどのような教師、どのようなペン、どのような本なのだ? 預言者ムハンマドによって私は教師として世に送られ、教科書にコーランが送られた。崇高で敬虔な教師の預言的なカリキュラムが世界を変えられるのであって、悪魔的なものや不信心者のカリキュラムではないのだ。
あなたは、ジャーナリストが「なぜタリバーンはこの教育を恐れるのですか」と生徒に訊かれ、「本に何が書いてあるかを知らないからだ」と答えた例を挙げた。あなたと全世界に対して、なぜ彼らがアッラーの本を恐れるのかと言えばそれが何かを彼らは知らないからだ、と言っておく。
タリバーンはアッラーの本に書いてあることを求め、国連は人間が作った本に書いてあることを求める。我々はコーランによって全世界の人々をその創造主と結びつけ、国連は僅かな悪の創造主のために全世界を奴隷にする。
あなたは不公平な国際機関のステージで正義と平等を求めた。あそこはたった5つの不正な国が拒否権を持ち、残りの国々は非力なのだ。周りの国がどんなにイスラエルに反対しようとも、1つの拒否権で正義の喉元を脅かすのだ。
あなたが世界に向けて語りかけている場所、そこは新世界秩序を目指すものだ。しかし旧世界秩序のなにが間違っているというのだ?彼らはグローバルな教育、グローバルな経済、グローバルな軍隊、グローバルな貿易、グローバルな政府、そしてついにはグローバルな宗教まで作り上げようとしている。私が知りたいのはそこに預言的な導きの入り込む余地はあるのかということだ。国連が非人道的や残虐だと言ったイスラームの戒律、イスラームの法の入り込む場所があるのだろうか?
あなたはポリオの予防接種のチームへの攻撃のことを言った。それならアメリカのキッシンジャー国務長官が1973年に第三世界の人口を80%まで減らすと言ったことをどう説明するのだ?なぜ断種や優生学的なプログラムが国際機関の主導で進められたというのだ?100万人を超えるムスリムがウズベキスタンで本人の同意なく避妊されたのだ?
バートランド・ラッセルは科学の社会に対する影響についてこう言った。「幼い時期から食事、注射、禁止命令を組み合わせ、政府にとって望ましい思考や性格を作り出す。権力を真剣に批判することは心理的に不可能になるだろう。」これが我々がポリオの予防接種プログラムというのに反対する理由なのだ。
あなたはマララデーが自分の日ではなく、権利の為に声をあげる全ての人々の日だと言った。しかしレイチェル・コリーにそのような日が割り当てられていないのは、(彼女が止めようとしてひき殺された)ブルドーザーがイスラエルのものだったからなのか?アーフィア・シディクの日がないのはアメリカ人が彼女を買ったからなのか?フェザンとファヒームの日がないのは彼らを殺したのがレイモンド・アレン・デイヴィス(CIAのエージェント)だからか?16人の罪なきアフガン女性と子供が死んだのにそんな日がないのは、撃ったのがタリバーンではなくアメリカ兵のロバートベラスだからなのか?
正直に答えて欲しい。もしアメリカの無人機が君を撃ったとしたら、世界はあなたの医学的容態に関心を持っただろうか?あなたは「国の娘」と言われただろうか?メディアは大騒ぎしただろうか?カヤニ将軍が君の元を訪れ、メディアもそれを報道するなんてことがあっただろうか?国連に呼ばれることがあっただろうか?マララの日があっただろうか?
300人以上の罪のない女や子供が無人機によって殺されているが、誰も気にはしない。攻撃するのが高度な教育を受け、非暴力的で平和的なアメリカ人だからだ。
予言者ムハンマドがあなたに与えた慈悲が、同様ににパキスタン軍がFATAとバルチタンでムスリムの血を流すのを辞めるように与えられるように与えられることを願っている。予言者イエスがあなたに与えた慈悲が同様にアメリカ合衆国やNATOが罪のないムスリムの血を流させないようにすることを。仏陀の教えに従う者がビルマとスリランカのムスリムの血を流させないように。ガンジーの教えに従う者がカシミールでの虐殺をやめるように。バチャ・カーン(パキスタンの核兵器技術者)に従う者が、ANP(アワーミー国民党)が五年の政権で非暴力を貫いた様に、特殊部隊が一度も銃を放たなかったように、バチャ・カーンの貫いた非暴力の哲学が、戦闘機と戦車とガンシップの助けの元に達成できるように。
最後にあなたに、郷里に戻ってイスラムと地元の文化を学び、近くの女性メドルサ(神学校)に入り、コーランを学び、イスラムと同胞の苦しみのためにペンを持ち、少数のエリートが新世界秩序の名の下に世界中を奴隷化しようとしていくことを糾弾してほしい。
世界の創造者アッラーを讃えて。
原文はここから。