まつや清の日記 マツキヨ通信

静岡市議会議員 まつや清の日常を毎日更新!

『周恩来秘録―党機密文書は語る』(文藝春秋)を読む

2007年05月06日 | その他
毎日新聞4月22日の書評欄に辻原 登氏による『周恩来秘録―党機密文書は語る』評が載りました。選挙戦に敗れ敗因総括途上にある中、歴史における闘いの敗北をどう見るべきか、諸観点からの検討を重ねていた時期ゆえ、この本の題名と書評見出し『「毛追放」から壮絶な晩年まで志高く描く』に引き込まれました。私自身、学生時代に中国文化大革命を賞賛し永続革命の希望を見た時機があります。

 上・下の2巻は各一冊1950円とあるように相当に読み応えのある分量ですが、あっという間に読めました。『上』には「党中央文献室に保管された周恩来の極秘ファイル 米国に亡命した党伝記作家が衝撃の執筆-毛沢東の粛清をのがれるために、周恩来は何をしてきたか?」、『下』には「「慈父」周恩来に嫉妬の炎を燃やす毛沢東 死の床まで周が恐れた毛の報復文書とは?-「周恩来外交」の成功が、周の政治生命を逆に縮めた」の帯。

 辻原氏は書評の最後に「周恩来の絶命の場面を描いた1ページはすばらしい」としていますが、私は、その数ページ前の「私は党に忠実だ、人民に忠実だ!私は『投稿派』じゃない!」と死の直前に毛沢東と対決するシーンに圧倒されました。毛沢東が周恩来の追悼会に出なかったこと、そして、1932年から続いた中国共産党内部の路線闘争とそこで周恩来が常に毛沢東に自己批判を繰り返してきた史実を初めて知りました。

 文化大革命の後退過程は、全共闘運動の同時代性故にそれなりに理解をしているつもりでした。しかし、中央文献研究室委員という経歴を持つ高文謙氏が歴史的記録としての党内文献を駆使して描いたこの書は、その背景にあった中国共産党内権力闘争や批林批孔運動の実像を余す所無く伝えてくれます。そして、氏が1989年天安門弾圧に抗議してアメリカに亡命している状態であることが、否応無くこの書物(2003年刊)の価値を高めます。

 私は、昨年4月県議会中国視察に参加しましたが、その時に『中国激流』(岩波新書)『中国の大戦略』(光人社)の2冊を報告書に紹介しています。視察前にこの本を読んでいたら、もっと中国の現状を批判的摂取する視点を得られていたかもしれません。中国と長く付き合っている私の友人とのよくする議論に、土地の強制接収おこなう中国国内の基本的人権の越脱と統治構造における選挙制度があります。

 友人曰く「日本で民主主義と称して選挙が行われても、世の中は変わっているのか?住民の声は政治に届いているのか?中国の体制批判するののもいいけれそも、日本では、そうした住民の声が政治全体を変えるようなダイナミズムとなっているのか?」。私自身の社会運動の活動暦は、学生運動の10年、市民活動の10年、議員活動の20年と長いのですが、この書は私自身の歴史をも問い返させてくれました。