ふぶきの部屋

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さよなら珠城りょう

2021-08-10 07:00:00 | 宝塚コラム

珠城りょう。94期。5年間月組トップスターとして輝く。

相手役は愛希れいか、美園さくら。

月組は定期的に見てはいたのですが、正直それ程ファンだったというわけではありません。

霧矢大夢時代はトップコンビが何もかもやっちゃう感じで先が思いやられたし、龍真咲と明日海りおの見えないバトルにハラハラしてたし。

その龍真咲がトップになってからというもの・・・組の中では色々あったんだろうなと容易に想像させる中、珠城りょうはすくすくと育ち、上田久美子デビュー作である「月雲の皇子」で大ヒットを飛ばし路線確定、さらに上級生2人をすっ飛ばしてトップに輝く。

月雲の皇子」はあらゆる意味で名作であり、今まで日本人の作家が手を付けなかった分野です。それというのも「兄と妹が愛し合った」という事実かどうかわからない文を目にすると、これをどう料理していいものやらと思ってしまう。

それを「権力争い」の道具として描くことで、優しくて正義感の強い兄である珠城りょうと、策略家の弟鳳月杏のコンビが観客の涙を誘い、東上予定がなかったのに、慌てて予定が組まれる程となったのです。

珠城りょうも鳳月杏も日本物が似合う顔付であること、鳳月杏のサポート力の強さで珠城りょうは栄光を手にしたと言っていいでしょう。

私が珠城りょうに目が行くようになったのは随分遅くて「1789」のロベスピエールを演じた時でした。

男役をやる為に生まれて来たような体格。いわゆるガタイがいいというか、それに骨太で安定感がすごかった。

隣の凪七瑠海が体も声も細く、沙央くらまは小さいので余計に大きさが目立ったと思います。1幕はともかく2幕目冒頭のダンスは非常に重厚感があってカッコよかったです。

これにより次作品からは上級生をすっとばして2番手に昇格。

当然の事だったと思います。

そしてあれよあれよという間にトップになった時、彼女はまだ研9でした。

当然、2番手は上級生の美弥るりかががっちりサポート。

珠城りょうについて何が言えるかというと、その真正直で育ちのいい姿と、性格のやさしさではないかと思います。

それがプラスに働く時もあればかなりマイナスに響くこともあったトップ生活でしたよね。

お披露目の「グランドホテ」は本来の主役ではなく、その昔、久世星佳が演じたガイゲルン男爵になりましたが、役の華は美弥るりかに奪われました。珠城のような顔に「正直」が書いてある男役に合わない役柄でした。

次の「ALL FOR ONE」で小池修一郎が与えた役はダルタニアン。これまたどこまでもまっすぐで単純明快な性格。一番しっくりくる役柄で代表作の一つと言えるでしょう。

でも個人的には「カンパニー」の青柳さんが珠城りょうに最も似合っていた役だと私は思うのです。

正直、宝塚の男役でサラリーマンが似合う人なんてそうそういません。

あの壮一帆も「SHALL WE DANCE」でサラリーマンを演じていましたけど、あそこまで自然な感じはありませんでした。

青柳が照れた風情で「月がきれいですね」という時、「ああ、普通の日本人だなあ」と妙に感動したりして。

一方、ショーの「BADDY」は上田久美子のショーデビュー作。彼女が珠城りょうに与えたのは「悪」で、珠城りょうの新たな一面を引き出そうとしたんですが、作品の出来はよかったけれど、役柄的にあまりうまくいったとは思えません。

次第に珠城りょうが演じられる役柄に一定の幅の狭さを感じるようになってからの「雨にうたえば」「エリザベート」「無限無双」でした。

特にトートはキーが半音下がるのが気になったし、性格的にも向いているとは言えず。彼女の場合はとにかく悪役が出来ない。

何を言っても「いい人」が全面に出てしまう。

だから無論「赤と黒」もどういうつもりであてたんだろうなと思ってしまう。

月組の女帝、愛希れいかが退団した後、いきなり学年が離れた美園さくらとのコンビは最初から最後までちょっとギクシャクしてたなという印象です。

I AM FROM AUSTRIA」は作品的にはそうでもなかったけれど、役が似合っていたというか、本当に育ちのいいおぼっちゃまで見てて安心しました。

こういう息子がいたら誇らしいなを体現してくれましたよね。

その次の「ピガール狂騒曲」は女性役という事でどうなるかと思いましたが、硬派の月城かなとといい対比で非常に面白く、これも代表作の一つにしてもいいなと思いました。

そしてさよなら公演になった「桜嵐記」は「これぞ珠城りょう」という作品で最後の最後にこういう作品に恵まれたのも彼女の「徳」だったのだろうと思います。

 

思えば精神的に大変な時間だったと思います。

病気がちの霧矢大夢をトップに据えて、でも歌もダンスも演技も霧矢が一番の状態。でもそれは必ずしも「男役の継承」というものではなかった。

さらに龍真咲も背中を見せるには少々頼りなく、珠城りょうは「月組の男役」の背中を見ることなく、自分なりに工夫していきながら男役を極めて行ったと思います。

上級生を従えてのトップ生活は気を遣う事も多かったと思います。

上級生の方も珠城りょうをトップとして立てていかないといけないので、やっぱり気を遣う。そういう互いの緊張感がよい舞台を作ったとも言えるでしょう。

華やかさを請け負ってくれた美弥るりか、息の合った調和を見せてくれた鳳月杏、二人の功績は珠城りょうトップ時代の宝になるでしょう。

コロナ禍において、長い間上演出来ないストレスはいかばかりだったか。

退団を表明してからの日々は不安や葛藤が多かった事と思いますが笑顔で乗り切ってくれました。

穏やかな笑顔と品のいい姿はタカラジェンヌの誇りです。

メンバーが減っても増えても、トップとして組を率いた結果、下級生がよく育ったと思います。

退団後のことはわかりませんが、本当に幸せになってほしい。

玉城りょうが退団後に幸せになる事が、在団中の生徒の励みになると思うので。

珠城りょう、長い間、本当にご苦労様でした。

第二の人生を楽しんでゆったりと過ごして下さい。

 

コメント (3)
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