水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

スピン・オフ小説 あんたはすごい! (第百三十四回)

2010年11月07日 00時00分00秒 | #小説
  あんたはすごい!    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第百三十四回
「そうでしたか…。一連のことを沼澤さんに一度、話してみようか…と思ったりしてるんですよ。どうもこのままじゃスカッとしなくて…」
「さっきも云ったけど、そうした方がいいわ。私もさあ、三日前に沼澤さんが来られた時に、ちょっと訊(き)いてみたのよお」
「ほう、ママが…。何か変わったことでもあったんですか?」
「あった、ってもんじゃないのよ。ねえ、早希ちゃん」
「そうですよね。あんなこと、まぐれで起きることじゃないもん」
「いったい、何があったの?」
 私は早希ちゃんの方へ顔を向けて訊いた。
「いつだったかしら? 宝クジの話、ママから聞いたでしょ。憶えてる?」
「ああ…。ママが小口を当てたって話ですか?」
 今度はママの方へ顔を向け、私は云った。
「そうなのよお~。それがさあ~、ひと口じゃないのよ、今度は!」
「えっ! 一等とか、ですか?」
「馬鹿ねぇ~。そんなの当たる訳ないじゃないの。やっぱり小口だったんだけどさあ。…でも、組違いのが三枚。三枚よぉ~!」
 三枚と云うところを強調してママは云った。
「組違いで三枚とは、馬鹿当たりじゃないですかぁ~!」
「わぁ~!」
 隣の児島君も驚きの声をあげた。

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残月剣 -秘抄- 《残月剣④》第十二回

2010年11月07日 00時00分00秒 | #小説

        残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《残月剣④》第十二

二本を打ち叩いたとすれば、その反動は必ず同時には戻らない筈なのだ。打ち叩くのは、まずは前方の一本で、続けて後の一本を身を翻して打ち叩く…という寸法だ。当然、先に打ち叩いた前方の木切れの反動は、後方の一本より早い。だから、後方の一本を打ち叩いた後、即座に身体を前方へ反転させなければ、二度目を打ち叩くには間に合わない。無論、妙義山中で行った時よりは、長めの縄に木切れを結わえねばならないだろう。少しでも反動を遅らせる為である。前、そして後ろ、また前…と、交互に打ち叩くことになるのだが、果して首尾よくいくかは、やってみなければ分からない…と左馬介は思うのであった。上手くいけば、左右も加えて四本にも増やせる。また、木切れが相手ならば、長谷川や鴨下にする気配りは無用なのだ。問題は、そうするとして、長谷川や鴨下に、どう説明するかである。左馬介の方から頼み込んで態々(わざわざ)、稽古に付き合わせたのだから、それ相応の説明をしなければ申し訳なく思える。いや、それよりも、師範代の長谷川を怒らせることも有り得るのだ。恐らく、鴨下の方は説明する迄もなく、右から左へと了解してくれるに違いない。そんなことで怒る鴨下でないことは、左馬介が一番よく知っている。だが、長谷川の内心までは予測がつかない左馬介だった。


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