あんたはすごい! 水本爽涼
第百五十一回
「四月から部長らしいんだ…」
「ワオ! すごいじゃない。次長だとばかり思ってた」
「いや、そうだったんだけどね。部長が俄かに、ああいうことになったからさ…」
「部長さんがお亡くなりになった、あと釜(がま)って訳ね」
「そういうことなんだ…」
ママが早希ちゃんからバトンを受け取り、語りだした。
「ええ、そういうことなんですよ。なんか今一、席をぶん盗ったみたいで、気分はよくないんですけどね」
「お告げのとおりだって云ってたわよね」
「はい…。だから一度、沼澤さんに会って、お伺いしたいと思ってたんですよ」
しみじみとママに言葉を返したその時だった。
「私なら、あなたの後ろにいますよ、塩山さん」
私は一瞬、ギクリ! とした。というより、ドキッ! と心臓が止まりそうな衝撃を受け、後ろを振り返った。
沼澤氏が私の背の後ろに立っていた。ママも気づかなかったのか、言葉をなくし茫然と静止して立っている。早希ちゃんだってそうで、この手の話を信じない彼女だが、この時は震えていた。いや、どう考えても怪(おか)しいのだ。店のドアは開いた形跡もないのだし、背を向けて座る私や早希ちゃんは別として、ママはカウンターに立ち、正面を向いていた。当然、ドアの開閉を見逃す訳がなかった。ママの紅潮ぎみのいつもの顔が、その時はいつになく蒼白かった。
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第百五十一回
「四月から部長らしいんだ…」
「ワオ! すごいじゃない。次長だとばかり思ってた」
「いや、そうだったんだけどね。部長が俄かに、ああいうことになったからさ…」
「部長さんがお亡くなりになった、あと釜(がま)って訳ね」
「そういうことなんだ…」
ママが早希ちゃんからバトンを受け取り、語りだした。
「ええ、そういうことなんですよ。なんか今一、席をぶん盗ったみたいで、気分はよくないんですけどね」
「お告げのとおりだって云ってたわよね」
「はい…。だから一度、沼澤さんに会って、お伺いしたいと思ってたんですよ」
しみじみとママに言葉を返したその時だった。
「私なら、あなたの後ろにいますよ、塩山さん」
私は一瞬、ギクリ! とした。というより、ドキッ! と心臓が止まりそうな衝撃を受け、後ろを振り返った。
沼澤氏が私の背の後ろに立っていた。ママも気づかなかったのか、言葉をなくし茫然と静止して立っている。早希ちゃんだってそうで、この手の話を信じない彼女だが、この時は震えていた。いや、どう考えても怪(おか)しいのだ。店のドアは開いた形跡もないのだし、背を向けて座る私や早希ちゃんは別として、ママはカウンターに立ち、正面を向いていた。当然、ドアの開閉を見逃す訳がなかった。ママの紅潮ぎみのいつもの顔が、その時はいつになく蒼白かった。