あんたはすごい! 水本爽涼
第百四十三回
社葬が済んだ後、遺族とごく身近な関係者だけが葬儀社のセレモニーホールへと移動して、遺骨を前に故人の初七日の法要が行われた。どうも僧侶のスケジュールが詰まっているようで、前倒ししたらしい。もちろん、私もその中の一人で列席していた。年若な僧侶が派手な法衣を身につけ、スターのように華々しく登場し、遺族と私達関係者に軽くお辞儀をすると、慣れた仕草で木魚を叩き、読経を始めた。
「△~×~〇~▽~※~¥~、ご焼香を…。□~■~☆~◎~▲~●…」
葬儀社の係員に促され、鳥殻(とりがら)部長の奥様と思(おぼ)しき老女が一番に焼香をした。どうやら、夫妻にはご子息がおられないようだった。焼香は当然、順調に進み、私や児島君も焼香をした。さてここで、読者の皆さんに説明を加えなければならない。私の第二課には二係があると、いつやら云ったと思うが、もう一人の係長が全然、登場しないじゃないか! とお叱りを頂戴すると思うので、ここで付け加えさせて戴く。実は、もう一人の係長は欠員で、一とニ係とも児島君が切り盛りしていたのである。このことを云っていなかったから、偉く児島君だけを贔屓(ひいき)していると皆さんに誤解を与えたと思うから、遅ればせながら謝っておきたい。
その後しばらく読経が続く中、不意に私の背広上衣のポケットが激しく震えた。とはいえ、それは外部の者からは分からない。携帯は胸ポケットへ入れておくのだから、着信すれば胸で震えるはずで、妙だな…と思った。
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第百四十三回
社葬が済んだ後、遺族とごく身近な関係者だけが葬儀社のセレモニーホールへと移動して、遺骨を前に故人の初七日の法要が行われた。どうも僧侶のスケジュールが詰まっているようで、前倒ししたらしい。もちろん、私もその中の一人で列席していた。年若な僧侶が派手な法衣を身につけ、スターのように華々しく登場し、遺族と私達関係者に軽くお辞儀をすると、慣れた仕草で木魚を叩き、読経を始めた。
「△~×~〇~▽~※~¥~、ご焼香を…。□~■~☆~◎~▲~●…」
葬儀社の係員に促され、鳥殻(とりがら)部長の奥様と思(おぼ)しき老女が一番に焼香をした。どうやら、夫妻にはご子息がおられないようだった。焼香は当然、順調に進み、私や児島君も焼香をした。さてここで、読者の皆さんに説明を加えなければならない。私の第二課には二係があると、いつやら云ったと思うが、もう一人の係長が全然、登場しないじゃないか! とお叱りを頂戴すると思うので、ここで付け加えさせて戴く。実は、もう一人の係長は欠員で、一とニ係とも児島君が切り盛りしていたのである。このことを云っていなかったから、偉く児島君だけを贔屓(ひいき)していると皆さんに誤解を与えたと思うから、遅ればせながら謝っておきたい。
その後しばらく読経が続く中、不意に私の背広上衣のポケットが激しく震えた。とはいえ、それは外部の者からは分からない。携帯は胸ポケットへ入れておくのだから、着信すれば胸で震えるはずで、妙だな…と思った。