水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 靫蔓(うつぼかずら) (第百五回)

2012年08月08日 00時00分00秒 | #小説

  靫蔓(うつぼかずら)       水本爽涼                                     
 
   第百五回
「あんなあ、勢一つぁん…」
「なんやいな?」
 ついに直助は消えた紙の一件を話す決意をした。
「あの後(あと)なあ…妙案が浮かんだんや」
「どないな?」
「いやな…こっちの方からコンタクトをとったらどないやろかて…」
「と、いうと?」
「そやさかい、おとといは向うから送ってきたんやし、今度はこっちから送ってみたらどないやろ、思てな」
「ふんふん、それで…」
 勢一つぁんは次第に乗ってきた。
 いつの間にか、曇よりした風がまた流れていた。もう梅雨入りするのだろうか…と思わせる重くてジットリと肌に絡みつく風である。勢一つぁん持参の寿司折りと直助が準備した一升瓶の酒、湯呑み、折詰めとともに持ち込まれた柿の種などの細かな菓子類もある。それらは、語り合って怖れの夜を過ごすには十分過ぎた。


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