その日が思い通り進めば気分は明るくなる。ああ、今日の一日は充実していたな…と思わないまでも、なんとなくルンルン気分になるだろう。だが、同じその日でも、そういつも思い通りに進むものではない。自分一人の行動ならまだしも、相手があれば、当然、相手にも予定があるから、予定と予定がぶつかって、どちらかが上手(うま)くいかなくなる・・ということも起こってくる訳だ。そうなれば、必然的に気分は沈んで暗くなる。人々は気分が落ち込んで暗くならないように日々、励んでるのである。まあ、そんな人ばかりではなく、その日が無難に終わりゃそれでいい…という人もいる訳だが…。
蛸川(たこかわ)は焦(あせ)っていた。その日を時間単位で予定を立てていたのはいいが、突然、狂い始めたからである。午前中は思い通り予定を熟(こな)せていたが、問題は午後から起きた。
昼前から寒肥(かんぴ)を植木に施(ほどこ)し始めたまではよかったのだ。ところが、予想に反して思いのほかその日は暖かく、施肥したあとビッショリと汗を掻いてしまったのである。そうなれば、着替えてシャワーが必要となる。風邪(かぜ)を引く恐れがあったからだ。ところが、その日に限ってシャワーのお湯が出ない。妙だな? …と蛸川は思った。その後、何度もいろいろとやってはみたが、やはり元火は点(つ)かなかった。まあ、仕方ないか、あとから電話しよう…と思ったが、出た汗は、やはりサッパリしたい。そう思った蛸川は別の湯沸かし器のお湯を容器に入れ、浴室まで運んでどうにか拭いた。そして、着替えたあと、もう一度、確認のため浴室のお湯を出してみた。すると、お湯はなにごともなかったかのように出るではないかっ! いったい俺は何をしていたんだ…と蛸川は過ぎ去った一時間ばかりを恨めしく思った。その日の予定は大幅に狂い、まだ昼食も食べていないことに、蛸川は気づいた。ようやく食べ始め終えたとき、時間は14:30を少し回っていた。その日の予定は家の修理が二件あった。水道のケレップ交換と外小屋の庇(ひさし)下の添え木の釘打ちである。二件は順調に進み、湯沸かし器で失った一時間ばかりは取り戻(もど)せた。かくして、蛸川のその一日は、明るくもなく暗くもないフツゥ~~の一日で終わったのだった。
まあ、その日が明るくも暗くもないフツゥ~~で終われば、それはそれでいいんじゃないでしょうか。^^
完