水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (64)予約

2022年02月08日 00時00分00秒 | #小説

 最近は世の中がスピード化したせいか、全(すべ)ての人の動きが慌ただしくなってきている。そうなると、人と人の交わりも難しくなってきて、予約・・という約束ごとで出会いを可能としなければならなくなる。片方の都合だけで、もう片方の都合がつかないと出会えないということになる。すると、双方の都合がいい折り合いが必要となるのだ。いわば、双方が納得できる出会える時間という契約が成立が求められる訳だ。ああ、長閑な過去が懐かしく思えるのは私だけだろうか。^^
 とある美容院である。美容師が電話に出ている。
「はいっ! 朝9:00はダメなんです。10:00からでしたらお取りできますけどっ!」
『ええっ! 10:00なのっ! 10:00はダメよっ! PTAの会長でしょ、私っ!』
「ほほほ…大変ですわねっ! どうしましょう、奥さまっ!?」
 美容師は、PTAかピーチーエーか知らないけど、勝手にピーチクバーチクやってりゃいいわよ…とは思ったが、そうとも言えず笑って流した。
『そうね…。前の日の午後の2:00頃、開いてるかしらっ?』
「前日の午後2:00ですかぁ~? … ああ! 開いてます、開いてますっ!」
『そぉう!! じゃあ、そういうことで…』
「はいっ! お待ち申し上げております、奥さまっ!」
 かくして理容院の予約は成立し、契約は締結されたのだった。だが、その日は理容院の臨時休業日で、美容師は、うっかりそのことを忘れていたのである。その後、どうなったのか? 私は聞いていないので知らない。^^

                   完


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