水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (82)一時間

2022年02月26日 00時00分00秒 | #小説

 竹川は、どういう訳か休日のこの日、一時間ばかり早く目覚めた。昨夜、することもなく早めに寝たのが原因に思えた。毎日やっている身支度(みじたく)→洗顔(せんがん)→食事の準備と進めていったが、朝食を食べる頃、ふと時計を見ると、一時間ばかり早いことが分かった。よく考えれば、いつもと同じペースでコトを進めているのだから、そら、そうなる訳だ。
『なんだ! まだ、こんな時間か…』
 竹川は竹の皮のような顔で、思うでなく思った。竹の皮のような顔とは、ホッカホカのおにぎりを包む、あの竹の皮のような平たい顔である。^^ すると、どういう訳か、心にゆとりが生まれ、少し気分が明るくなった。いつも通勤に追われ、ソソクサと家を出る日々には感じられなかったゆとり気分である。
 食べ終え、竹川はやろう…と思っていたDIY[日曜大工]を始めたが、どういう訳かスイスイ~~と作業は捗(はかど)り、昼前には終わってしまったのである。午後三時くらいまではかかるだろう…と予想していた竹川としては御(おん)の字(じ)だ。竹川は、昼から何をやろう…と明るく巡った。そうそう! 大根がまだ一本、残っていたな…と竹川は思うでなく、また思った。竹川の脳裏(のうり)に、湯がいて温野菜にしよう…という思考リズムが完成を見た。竹川は昼食を食べ終えると、畑に残った太い大根を抜き、水洗いしてキッチンへと運んだ。葉の部分は古びていたから生ごみ処理機で裁断し、肥料用とした。根の部分は食べやすい手ごろな間隔に包丁で輪切りにし、鍋で湯がいた。まだ午後二時過ぎだった。竹川は得をしたような気分になり、ますます明るくなった。そうして、その日は、全(すべ)てのコトが前倒しするかのように順調に進んでいき、就寝前には身体が全然、疲れていないことに竹川は気づかされた。よしっ! コレだなっ! と、竹川は、きっちりと思った。きっちり思うとは、一時間、早く起きよう…と思うことである。
 次の日から、暗い気分でバタバタと出勤していたパターンが、明るい気分へと変化した。なにせ、ゆったりと流れるゆとり気分が出来たからである。
 皆さんっ! 日々、何げなく過ごしている無駄な一時間を有効に使ってみる・・というのはいかがでしょうか? たぶん、気分が明るく変化すると思いますよ。^^

                   完


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする