水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (69)逆転

2022年02月13日 00時00分00秒 | #小説

 逆転の発想・・とか言われる。この逆転は、フツゥ~に勝ったよりも以上に負けていた側を明るく感激させる。逆に勝っていた方からすれば逆転負けでガックリ! と暗く肩を落とし、テンションが下がるのだが…。まあ、これは勝ちがあれば負けがある理屈で、仕方がないところだ。^^
 とあるサッカー場である。片方のチームは負けが濃厚となっている後半である。
「さあ、帰るかっ! 負けは見たくないっ!」
「まあ、待てよっ! まだ5分はあるぜっ!」
「ダメダメっ!」
 一人のサポーターが腰を上げ、場外へ去っていった。その直後、負けていたチームが得点し、同点とした。さらにその後、ロス・タイムに入り、逆転したのである。
「だろっ!」
 残っていたもう一人のサポーターは、したり顔で呟(つぶや)いた。
 逆転もあると信じ、最後まで諦(あきら)めてはいけない・・という人生の明るい訓である。その気概(きがい)で最後の最後まで奮闘(ふんとう)して負けたのなら、それはそれでなんの悔(く)いも残らない訳だ。これが人生のように思える。とかなんとか言っても、買った方がいいに決まっているのだが…。ズッコイことをしてまで…は、気分が暗く尾を引くからお勧(すす)めできない。^^

                   完


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