水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

明暗ユーモア短編集 (66)明るい⇔暗い

2022年02月10日 00時00分00秒 | #小説

 明るい所ばかりにいれば、暗い気の休まる所を求める。逆に暗い所ばかりにいると明るい所に出たくなる。これが人の生理的な構造のようだ。むろん、朝の明るさも夜の暗さも関係なく働く人々もいる訳だが…。明るい⇔暗いの比較は相当、難しい。^^
 とある一流オーケストラの演奏会場である。少しづつ入場者が増してきたところだ。そんな中、二人の男が入場して席に着いたところだ。まだ、オーブニング前で観客のザワツキもある。
「おいっ! 少し明る過ぎないかっ!?」
「そうかぁ~? 俺はこんなもんだと思うんだがなぁ~?」
「いや、明る過ぎるっ! もっと暗くしないと、ショパンの曲には合わないっ!」
「俺にそんなこと言っても、仕方ないだろっ!」
「まあ、それはそうだが…。だが、夜想曲なんか昼想曲になっちまうっ!」
「仕方ないだろっ!」
「まあ、仕方ないが…」
 愚痴をこぼす男は天井のライトから目を落とし、愚痴るのを断念した。しばらくして、演奏会は男の愚痴とは関係なく始まった。
 確かに、明るい⇔暗いに合う雰囲気や景色はあるにはあるようだ。^^

                   完


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