水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (33)収容能力

2022年07月27日 00時00分00秒 | #小説

 収容能力が足らない・・などと言う。今風に言えばキャパシティとかキャパとかいうのだろうが、収容能力が足らないからといって詰め込めるものではないから、当事者は困ってしまう訳だ。^^
 通勤ラッシュ時の、とある鉄道の鼻毛(はなげ)駅構内である。
『鼻毛ぇ~~です。耳垢(みみあか)線は乗り換えです。このあとは快速となります』
 駅員が構内アナウンスをいい声の鼻声で流暢(りゅうちょう)に流す。滑らかに列車が到着し、ドアがスゥ~っと開く。列車内は通勤客で鮨詰め状態である。そこへ、何がなんでも乗ろうとする必死な通勤客達。
「つ、詰めて下さいっ!!」
 駅員は彼らの背中を押して、必死に詰め込もうとする。明らかに列車の収容能力を超え、乗車率130%である。乗ろうとしている通勤客達はどうにか詰め込まれ、ドアがなんとか閉まる。そして、静かに列車が走り出す。
「ふぅ~昨日に比べりゃ、まだいい方か…」
 帽子を脱ぎ、ハンカチで汗を拭(ぬぐ)う駅員が呟(つぶや)く。昨日は150%だったからである。こうして、鼻毛駅の日々は続いていくのだった。
 収容能力が足らない場合でも、人々は収容されるよう耐えねばならないのです。^^

                   完


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