水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (28)花見

2022年07月24日 00時00分00秒 | #小説

 花見に欠かせないものや状況は幾つかある。[1]いい場所、[2]美味しい酒や料理、[3]天候、[4]メンバー、[5]日時調整、[6]社会の諸事情etc.である。しかもそれらの要素が一つでも足らない場合、花見は成功裏に推移しないのだ。2021年の今年だと、コロナ騒ぎで[6]が足らないから、花見で賑わう有名どころも通り抜けとなったようだ。
 とある桜並木である。年老いた花見の常連二人が語り合っている。
「いい天候に恵まれましたなっ!」
「しかし、今年は通り抜けで、残念です…」
「コロナ禍では仕方がありません。まっ! こんな年があってもいいじゃありませんか…」
「毎年は困りものですが…」
「そうですなっ! まあ、今年は出費が少ないということで…」
「ですなっ! どうです? これから、軽くお茶でも?」
「いいですなっ! 花見ができるいい店がありますっ!」
 二人はとある店へと向かった。
 花見に足らないものが生じた場合は、知恵がその不足を補うことになる。ということは、よい知恵が浮かぶか浮かばないか、がいい花見の分水嶺ということになる。^^

                   完


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