水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (31)頭(あたま)2

2022年07月25日 00時00分00秒 | #小説

 (23)頭に続き、頭(あたま)2である。^^ 君は頭(あたま)が足らないと言われれば、誰だって腹が立つだろう。だが、頭の良し悪しは生まれ持っての天分だから、こればっかりはどうしようもない。^^
 とある会社である。
「瓦(かわら)君はいるかっ! これのコピー、頼むっ!」
 課長の雨漏(あまもり)が、書類を手に課長補佐代行の瓦を大声で呼んだ。そのとき、瓦はデスクで急ぎの書類を作成中だった。瓦にすれば、『頭がいい課長補佐の樋(とい)がいるだろっ!』くらいの拗(す)ね気分である。というのも、前回の人事異動で同じ課長補佐代行だった樋に出世コースで先を越されたからだ。まあ、分からないでもない。^^
「すみません! 課長。今、急ぎの書類をやってますので…」
「こっちだって急いどるんだっ!」
「常務に頼まれた書類なんですが…」
「…常務の板戸(いたど)さんから?」
 頭がいい雨漏は、次の異動の次長昇格をふと、思った。
「ああ、それならいいんだっ。ははは…」
「いいんですか?」
「ああ。いい、いいっ! 樋君、頼むっ!」
 樋にすれば、チェッ! 気分である。頭がいい雨漏は方便を使い、樋を追い抜いたのである。
 頭が足らないと、地位に関係なく仕事がしづらくなるのである。^^

                   完


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