水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (17)内容

2022年07月11日 00時00分00秒 | #小説

 諸星(もろぼし)は久しぶりにファミレスで食事をすることにした。というのも、毎日、自炊する食事が余りにも不味(まず)かったからである。自分が作ったものだから仕方なく食べてはいたが、それもついに限界だった。諸星がファミレスの席に着くと、ウェイトレスが静かに近づいて水コップを置いた。
「あっ、これとこれっ!」
「…はいっ! テンガロンハット風味のきのこ添えパスタとガンマンリゾットですね? かしこまりました…」
「あっ! それにワインだっ! ボージョレーヌーボーの年代物の美味いヤツ、君に任せるよっ!」
「はい、かしこまりました…」
「急ぐんだ! 早いこと頼むよっ!」
 別に急ぎの用などない諸星だったが、どういう訳かそう言っていた。しばらくして運ばれてきた料理は、諸星の記憶に残る量としては内容が少なかった。諸星としては、おやっ? くらいの気分だ。これでは足らないぞっ! と、瞬間、思えたから、ウェイトレスに、「あっ! これも持ってきてよっ!」とオーダーを追加した。
「かしこまりました。カウボーイ味フライポテトですね?」
「ああ…」
 諸星がテンガロンハット風味のきのこ添えパスタとガンマンリゾットを食べ、ボージョレーヌーボーの年代物の美味いワインを飲んでいると、カウボーイ味フライポテトが運ばれてきた。その内容量は思いの他、多かった。こりゃ、食いきれんぞっ! と思った諸星だったが、もうあとの祭りである。満腹を我慢して諸星は食べ続け、かろうじて足り過ぎた内容量を食べ尽くした。だが、食べ終えたとき諸星はトイレへ直行していた。
 このように、足らないと思える内容でも、我慢した方がいいことになる。格言でも、過ぎたるは及ばざるがごとし・・と、言われる訳がそこにあるようだ。^^

                    完


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