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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

足らないユーモア短編集 (20)勤め口

2022年07月14日 00時00分00秒 | #小説

 勤め口は、働く気があればいろいろ探せる訳である。世の中に働く場がない訳ではない。あるのだが、本人にしてはその職種の求人が少ないと、足らないように映るのだ。選ばなければ世の中の求人は十分、足りているのである。
 とある町のハローワークである。
「で、どうでした? ご紹介した勤め口は?」
 職安の担当係が戸板に訊(たず)ねた。
「いや、それが…。どうも私の思っていた職場にしては足らないんです…」
「何が足らないんですっ? 給料の額ですかっ?」
「いえ、違います」
「でしたら、何が…?」
「どうも私が思い描いていた雰囲気が足りないんです…」
「雰囲気? …どういうことでしょう?」
「暗いんですよ、職場の雰囲気が…」
「暗いとダメなんですか? 雰囲気で仕事をするってもんでもないでしょ!」
「いいえ、私は雰囲気が暗いと職場はダメなんです」
「希望した条件どおりの職場でも、ですか?」
「はいっ! 条件どおりでも、ですっ!」
 それを聞いた係員は、こりゃ、相当手ごわいヤツだぞ…と、厄介者を担当してしまった迷惑そうな顔で戸板を見た。
 働く人にとって、勤め口の条件が足りていても、職場の雰囲気が足りないと、やはり、もの足りなく感じるのである。^^

 ※ 働く気がない人は、勤め口の条件が足りていようがいまいが、どうしようもありません。^^

                   完


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