物事に必要な要素が足らないと、物事はオジャン[不成就]になったり、上手くいかなくなったりする。この要素という存在は、マクロ[巨視的]な物事を構成する細かなミクロ[微視的]な存在である。劇や映画ならキャスト、スタッフ、いやそれだけでなくプロデュース[生産]に必要な製作費、機材、終えるまでの関係者の食事etc.さまざまな要素が必要となり、どの要素が欠落しても不成立となるから難しい。悪性細胞やウイルスはミクロの不要素です。^^
とある超有名画家が完成した自分の絵画をジィ~~っと見つめながら、不動の姿勢で腕組みをしている。年若い見習い助手が心配になり、思わず声をかけた。
「先生っ! どうされたんですっ! ご気分でもっ!?」
下宿してプライべートな世話までしている身の見習い助手としては、気が気ではない。
「いや、なんでもない…。君、この絵、完成してるよね?」
「はあ? 先生が先ほど、完成した、とおっしゃられましたが…」
「おおっ! そう言ったか…。なぜ、そう言ったんだろっ? 君、どう思う?」
「どう思う? と訊(たず)ねられましても…。僕に先生のご心境は…」
「それもそうだな…。なんか、要素が足らない気がするんだよ…。君はそう思わないかね?」
「よく分かりません…」
「足らないんだよっ! 何かの要素が…」
画家は、ふたたび腕組みし、考え始めた。何が足らないのか? それが判明したのは、草木も眠る丑(うし)三つ時(どき)だった。ハッ! と飛び起きた超有名画家はベッドから半身を起こし、叫んだ。
「そうだっ! 新しいイーゼル・スタンドを買おうと思っとったんだっ!」
絵が完成したとき、画家はキャンバスを乗せるイーゼル・スタンドがガタつくことに気づいたのである。足らない要素は絵画ではなく、絵画を乗せたイーゼル・スタンドだった。
足らない要素は、案外と気づきにくいものだ。^^
完