結果の通知があれば、少なからず心が騒ぐ。その結果の良し悪しに関わらず、知ったときの心は驚いている。驚くのは結果が分かっていないからで、事前に知らされていれば、すでに喜びや悲しみを味わったあとだから、さほど驚くこともないだろう。
とある一般家庭である。合格発表の通知を今か今かと家族の者達が待っている。
両親が居間で話し合っている。
「どうだ、電話はあったか?」
「それが、まだなの…」
「昼までには電話すると言ってたんだろ?」
「ええ、そうなんだけど…」
「焦(じら)らせるヤツだな…」
「ダメだったんじゃない?」
「ああ、おそらくな…」
両親の心配を他所(よそ)に、当の本人は病院で治療を受けていた。合格発表の掲示板前で、合格を知った喜びで飛び上がった瞬間、ごった返す受験生の中で後ろから押され、胸を打ったのである。痛みが走り、病院で診察してもらった結果、肋骨に皹が入っていて全治二週間と診断されたのである。そんなハプニングで家への通知を忘れていたのだった。
「少し肋骨に皹(ひび)が入ってるね…。痛み止めとシップ薬、出しとくから、一週間後にまた来なさい…」
医師は事務的な口調で、これといって驚く様子もなく冷静に告げた。
「あっ!!」
そのとき、受験生は電話を忘れていることに気づいた。
「先生、電話ありますかっ!?」
「電話? そりゃ、あるよ…」
医師は、この患者、何を言い出すんだ…という目つきで受験生をチラ見した。
「かけても、いいですかっ!?」
「ああ、窓口にそう言ってね…。はい、次の方!」
医師は看護師にそう指示し、適当に、急かすように受験生をあしらった。受験生は受付へ回り、急いで家へ電話をかけた。
『ええっ!!? それで、大丈夫なのっ!?』
「ははは…全治、二週間だって」
『笑いごとじゃないでしょ!!』
『どうしたんだっ?』
『あの子、怪我したって病院から…』
『なにっ!!』
『大したことは、なさそうなんだけど…』
両親も受験生も、試験結果の通知を完全に忘れてしまっていた。
通知は、驚くようなハプニングで忘れる程度のもののようです。^^
完