文明進歩を続けた人類だが、まだ自然の壮大さを把握しきれてはいない。それだけ自然とは変化を見せ、人が驚く現象を様々に見せつける神秘の世界なのである。最近、頓(とみ)に発生する突然の異常気象や病害もその一つの現れだろう。
とある海水浴場である。猛暑日の中、多くの海水浴客で砂浜はごった返している。その中で、泳ぎもせずビーチパラソル下のチェアーに腰掛ける老人二人が話をしている。
「ははは…これでは芋の子を洗うようですな。風光明媚(ふうこうめいび)な自然を眺(なが)めようと家族を乗せ、やって来たんですがな…」
「まさか、ここでお出会いするとは…。この前、お会いしたのは経団連のパーティーでしたか…」
「そうでしたな…。で、あなたは?」
「ああ、私も家族連れで…。ほら、あそこで娘夫婦と孫が泳いどります」
「なるほど…」
指をさされた老人だったが、芋の子を洗うような人の多さに、その姿を特定できず軽く受け流し、ペットボトルの水をグビリグビリと飲んだ。もう一人の老人も、釣られてグビリグビリとやった。
その頃、二人のお抱え運転手は、駐車場で車のクーラーを入れ、風光明媚な景色を眼下にして、優雅な気分で眠っていた。
自然は驚くような場所でも楽しめる訳です。^^
完