炎天下の日々が続いている。驚くことに、茹(う)だると人は怒りへの思考が暑さで低下し、冷静になる傾向がある。汗が噴き出すことで、状況は怒っているどころの騒ぎではなくなっているのである。よくもまあ、これだけ…と、本人も驚くほど汗がポタボタと吹き出し、すでに下着も汗でビチョビチョになっている訳だ。これではもう、どうしようもない。^^
職員が十人にも満たない、とある地方の村役場である。
「フゥ~暑いな…。虫干(むしぼし)君、空調は大丈夫なのかい?」
「それが課長、生憎(あいにく)、調子が悪く業者に修理依頼をしたところなんです…」
「なんだい、それは…。呆(あき)れたな。それじゃ私達は蒸し焼きじゃないか」
「ええまあ、そうなりますかね。ははは…」
「馬鹿っ! 本当に君には驚くよっ! こんなとき、よくもまあ冗談が言えたもんだっ!」
「どうも、すみません…」
「君が謝ってもしょうがない。早く何とかしなさいっ!」
「はいっ!」
虫干は蛇に睨(にら)まれた蛙のように身を竦(すく)めた。
「ったくっ! 私は取り敢(あ)えず助役室にいるから、修理出来たれば内線で連絡しなさい」
課長はビチョビチョになったワイシャツを脱ぎ、汗を絞り出しながら愚痴った。
茹だると人は暑気から逃避しながら愚痴る傾向があるようです。^^
完