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水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (16)成績

2023年12月08日 00時00分00秒 | #小説

 予想外の試験成績に中学三年の鰯田(いわしだ)は北叟笑(ほくそえ)んだ。
「おい、鰯田っ! この成績だと閉成、受かるぞ、頑張れっ!」
 閉成とは塔教大学進学率トップの有名高校である。この日、共通模擬試験の結果が教室で順次、担任から伝えられていた。
「有難うございます、先生っ! 僕、頑張りますっ!」
 ピュアな鰯田は、鯛(たい)や鮃(ひらめ)にでもなったような笑顔で担任の宇津保(うつぼ)を見た。ところが、である。この試験には、何教科も重大な採点ミスがあったのである。本当は、いつもの偏差値ギリギリの成績だったのだが、そのことを担任の宇津保も当の本人、鰯田も全く知らなかった。その日から鰯田は勉学に勤(いそ)しんだ。その結果、驚くことに鰯田は閉成高校に見事、合格したのだった。共通一次試験の採点ミスが発覚したのは半年後だった。発覚した頃、鰯田は充実した閉成高校での学校生活を謳歌していた。もちろん、塔教大学を目指してである。
 採点が間違っていたとしても、いい成績だと人は自己暗示で驚く力が出るようです。^^

                   完


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