水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

驚くユーモア短編集 (12)天候

2023年12月04日 00時00分00秒 | #小説

 夏ともなれば、突然のスコールと呼ばれる土砂降りが起こる。雷鳴とともに滝のように激しく降る雨粒には驚く他ないが、これも自然現象の一環として生じる現象だから私達人類にはどうしようもない。
 とある町役場の廃棄物対策課である。
「課長っ! 行ってきます…」
 課員の鍋蓋(なべぶた)が課長の葱山(ねぎやま)に声をかけた。
「ああ、頼んだよ…」
「昼は済んだあとで…」
「いいから、いいから…。途中で食っもいいからさっ!」
「どうもっ! では…」
「気をつけてなっ!」
「はいっ!」
 溌剌(はつらつ)とした声で鍋蓋は役場を飛び出した。だが、その五分後、大地を叩くような激しい雷雨が降り始めた。
「すみません…。川が氾濫して車が通れなくなり、戻りました…」
 鍋蓋が項垂(うなだ)れた声で課へ戻ってきた。
「まあ、この雨じゃ仕方ないな…。別の日にしてくれ。引取りの依頼先へは電話しておくから、少し早いが昼にな…」
「どうも、すみません。それじゃ、お願いします…」
 鍋蓋が食事に出た後、葱山は依頼先へ電話をかけた。ところが、である。電話が通じない。しばらくして消防署から別の課へ情報が入った。その情報は役場の内線で廃棄物対策課へも伝わった。
「ええっ!! 依頼先の家が川の氾濫で流されたんですかっ!」
 葱山は予想外の情報に驚かされた。
 最近の世の中、天候の急変で驚くことが増えていますが、事前準備をぬかりなく、慌(あわ)てずコトに処せば、驚くことはありません。余談ではありますが、鍋の具は買い忘れないように事前準備しましょう。^^

                   完


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