驚く内容が奇跡に近ければ、その驚きも尋常(じんじょう)ではなくなるだろう。
とある飛行場である。そろそろ機体が動き出そうとしている機内で、一人の搭乗客がソワソワし出した。中央通路を通りかかったキャビンアテンダントがその仕草(しぐさ)に気づき、声をかけた。
「いかが、されました?」
「いやなに…。八卦(はっけ)が…」
「はあ?」
キャビンアテンダントは意味が分からず、訊(たず)ね直した。
「いやなに…。で、なければ、よろしいのですが…」
搭乗客は手にした筮竹(ぜいちく)を左手[天策]と右手[地策]で2つに分け何度も握り直し、[その方法は、末尾※に記載]そう返した。
「と、申されますと?」
キャビンアテンダントはその乗客が手にした筮竹を見て、易者さん? …と思えたから、内容を理解しようと、なおも訊ねた。
「いやなに…。お気にされずともよろしい。飽くまでも八卦(はっけ)ですからな…」
乗客は不気味な声で、そう返した。
「もう少し詳しくお願い致します…」
「この機、故障で、もう一度引き返す・・と出ております…」
「はあ…」
「いやなに…。わたくしの見立てですから、気にされまするな…」
そう言われても、キャビンアテンダントは気になった。だが、その乗客に構(かま)ってばかりもいられない。仕方なく笑顔でスルー[無視]することにして通り過ぎた。
機体が離陸し、二十分ばかりした頃、機内アナウンスが流れた。
『…[どうのこうの]…エンジントラブルのため、◎◎航空□□便はいったん、〇▽空港へ引き返します…』
乗客の占いは、担当したキャビンアテンダントが驚く奇跡で当たっていたのである。
「ど、どうなりますっ!?」
「えっ? ああ、安心なされよ、大丈夫ですぞ。無事、戻(もど)れまする…」
その乗客の予言通り奇跡は継続し、飛行機は無事、○▽空港へ緊急着陸した。
こんな驚く出来事には出食わしたくないものです。^^
※ 地策の中から1本(人策)を左手薬指と小指の間に移し、何本かずつで数えて残った余りを左手に移し、左手に残った本数を数える。
完