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日本になろうとしているアメリカ

2021年02月01日 | 政治・経済
実は、私は2008年2月に、「アメリカは日本になろうとしている」というコラムを書きました。
その年の11月、アメリカ大統領選でオバマ大統領が誕生することになりますが、それに先立ち、大統領選挙の候補者選びが山場を迎えていたときのことです。

民主党の大統領候補であるヒラリー・クリントン氏が全米を巡回しているところをテレビで見ていると、彼女は「アメリカの中間階級が貧乏になってやる気がなくなって、中流から下層へ脱落しかけているのを直さなければいけない」と主張していたのです。

そのとき、私は、「中流階級を大事にする?それはかつての日本がやっていたことである」と思いました。
それまでのアメリカは、「金持ちは金持ちになれ、貧乏な人は自己責任なのだからあきらめろ」というシステムを推し進めていました。ところが、大統領候補に立候補したヒラリー氏は、「中流が大事だ」と言っていたのです。

もちろん、政治献金をもらっていますから、「金持ちを倒せ」とは言いません。しかし、「中流を大事にせよ」という主張は、明らかにかつての日本の真似でした。

そこで私は、こう直感したのです。
「アメリカは、かつての日本の考え方になろうとしている。ところが日本は、かつてのアメリカの真似をして規制緩和し、合理化して、貧富の差が拡大しつつある。そんな日本は、反転を始めた米国と実はすれ違っていることを認識しなければいけない。日本は自らの良さを再認識して、そこに立ち戻るべきだ。古い日本を探せばもっといい答えがある。それは外国のほうが見つけ始めている」と――。

またその頃、麻生太郎さんからこんな話も聞いていました。
外務大臣としてカンボジアに行ったとき、「カンボジアは新しい国だから、いろいろなことをどう進めていいのかわからない」と聞かれたのだそうです。

麻生さんがさらに話を聞くと、実はカンボジアの人たちが悩んでいることの大半は戦後日本が復興するときに同じように悩んだことだったのです。そこで麻生さんは「日本はそれをすべて経験してきました。ですからその経験をお教えします」と言ったそうです。

するとカンボジアの人たちは、「いやもうすでに、日本から教えに来ている日本人女性がいます。その女性が、カンボジアの民法や民事訴訟法などをすべてつくってくれています」という返事だったそうです。

民法はその国の人々の生活に密着した法律です。それを日本人女性がつくったというのですからたいしたものです。

おそらく、カンボジアの人たちはその中から、自分たちに合ったものを採用していったのでしょうが、それはとりもなおさず「カンボジアが日本になるというようなことだ」と私は感じました。

麻生さんは、「新興国はとにかく日本に学びたい。文化を教えてくれ、いろいろなことをすべて教えてくれという状態になっている」と話していましたが、私は、そのとき、「日本の経験がこれからの世界を動かすことになる」と直感したのです。

そして、その直感は今、現実のものになろうとしています。

(日下公人著書「『日本大出動』トランプなんか怖くない(2016年6月発刊)」から転載)

---owari---
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2 コメント

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Unknown (ささ)
2021-02-06 06:59:32
規制緩和大事です。
そうでないと他の国に負ける。 
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はじめまして (このゆびとまれ!です)
2021-02-06 15:49:43
ささ さんへ

コメントをいただき、有難うございます。
既得権益を打破する規制緩和には賛成です。
規制緩和によって、製造業を呼び戻し、最先端の技術開発と新しい基幹産業の育成で経済を活性化していく必要があります。

近年、日本はアメリカの望む規制緩和を行い、市場を開放し、金融を自由化して、グローバリズムを受け入れてきました。しかし問題なのは、それを主導したのが主に西洋を無条件に崇拝する人々だったことです。
政治家や官僚、学者や経済人は国際化の重要性を語ったが、はたしてそこに日本の「国益」はあったのか、「国民」の利益はあったのかということを改めて問わねばならないと考えます。
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