1万3千人もの人々が参加したNHK「JAPANデビュー』集団訴訟が示すこと。
(「人間動物園」?)
NHKが日本の台湾統治に関して捏造報道をし、名誉を傷つけられた台湾原住民パイワン族の人々を含む1万3千人もの人々がNHKを告訴した集団訴訟が本年1月に結審した。
判決は後に紹介するが、まずどのような番組だったかを見ておこう。集団訴訟が始まった時点での状況は
[ JOG(609) NHKに巣くう報道テロリスト]にまとめているが、今回はそれ以降の展開を中心に紹介する。
その番組『JAPANデビュー』第一回『アジアの"一等国”』では、明治43(1910)年、日本政府と英国政府が共催したロンドンでの「日英博覧会」で催された台湾原住民による生活実演を次のように紹介した。
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訪れた観客はおよそ八百万人。特に人気を集めたコーナーがありました。台湾の先住民族、パイワン族。日本は、会場内にパイワンの人々の家をつくり、その暮らしぶりを見せ物としたのです。日英博覧会のガイドブックです。そこでは、台湾の人々が、客の前で戦いの踊りをし、戦闘の真似事をすると記されています。
当時、イギリスやフランスは、博覧会で植民地の人々を盛んに見せ物にしていました。人を展示する「人間動物園」と呼ばれました。目本はそれを真似たのです。
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NHKの取材陣は、この「人間動物園」で「見世物」にされたというパイワン族の子孫を台湾に訪ね、「かなしいね、語りきれないそうだ。かなしいね、この重さね、話しきれないそうだ」と日本語の通訳に語らせたのである。
(にこやかに「悲しいね」?)
これだけ見ると、いかにも当時の日本が、欧米先進国を真似て、植民地原住民の生活ぶりを「見せ物」にして“一等国”ぶりを示したと大方の視聴者は思い込むだろう。しかし、「見せ物」になったパイワン族男性の娘・高許月妹さんの登場する場面をよく見ると、二つの異なるシーンが続けて流されていて、不自然さを感じる。
最初のシーンでは、高許さんが、当時の写真を見て、にこやかに日本語で「悲しいね」と言う。次のシーンでは高許さんは一転して固い困惑した表情になり、目に涙をためて、パイワン語で何かを言い、それに「かなしいね、語りきれないそうだ。かなしいね、この重さね、話しきれないそうだ」という日本語訳が流れる。
最初のシーンで高許さんが日本語で「悲しいね」と言ったのは、「懐かしい」という意味だと、通訳として立ち会った陳清福さんが裁判で証言した。陳さんは元公立校教師で81歳の年齢を感じさせない、かくしゃくたる姿勢で2時間もの証言を行った。陳さんは日本統治時代の国民学校を卒業していて、日本語が達者だ。
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陳証人 ハマ子さん(高許月妹さんの日本名)がこの写真を見たら、あっ、これは私のお父さん、と言いました。そして、私のお父さんは、私が24,25歳のときに病気で死んだ、私の心とても痛い、非常に懐かしいと話しました。
【原告弁護人】懐かしいという意味のことを言つたんですね。・・・言葉としては、悲しいという言葉が出てきたわけですね。
【陳証人】はい、その悲しいが出たんだ。ただし、最後に私どもの話で聞いたら、懐かしいの意味です。
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(島田ディレクターの侮辱的な説明)
それが次のシーンで、高許さんが急に硬い困惑した表情になったのは何故なのか。この点を2審の判決文は次のように分析している。
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・・・この間に何か、控訴人高許に緊張や困惑を生じさせる原因があったことを推認させるが、上記認定の一連の事実の中では、そのような変化を生じさせるのは、控訴人高許が思ってもいなかった事実、すなわち、父親が日本によってロンドンに連れて行かれて、博覧会で見せ物にされたと、島田(ディレクター)が述べたことしかない・・・
控訴人高許は、そのようなことは全く想定していなかったため、島田の発言に困惑し、父親を侮辱されたと感じ取り、取材の意図が分からず、緊張して、日本語ではなく、パイワン語で、本当に島田から今聞かされたようなことであれば、という前提で、悲しいと述べたのではないかと推認することができる。
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半世紀も前に亡くなった父親の若かりし頃の写真を見せられて、懐かしさに胸一杯になった直後、その父親はロンドンで「見せ物」にされた、と伝えられた時の高許さんのショックはいかばかりであったか。
しかも、それをNHKは後に「人間動物園」と侮蔑的なタイトルをつけて放送したのである。欧米で植民地の人間を「人間動物園」として見世物にすることは、当時の欧米の人種差別意識を考えればありうることだが、「それを真似て」というのは島田ディレクターの憶測に過ぎない。
そもそも、この部分のオープニングに示された集合写真では、背広を着た日本人と、民族衣装を着た誇らしげなパイワン族の人々が並んで写っている。彼らが動物扱いされていたら、そもそもそんな写真はありえない。それ以外にも、この博覧会では力士団がまわし姿で半年間相撲を披露したり、農民が米俵製作のデモンストレーションをやっている。
今日でも世界各地に様々な民族の伝統的な暮らしぶりを実物、実演で見せる観光施設があるが、それらと同じ「展示」であったとしか考えられない。それを「人間動物園を真似て」というなら、その証明が必要だが、それは何もない。島田ディレクターは自らの独断と偏見で勝手にそう解釈して、高許さんの父親に対する誇りを傷つけたのである。
(本件番組こそ「控訴人高許の心に、深い傷を残した」)
東京地裁の1審ではNHKを無罪とした。判決理由として、次のように述べる。
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「被告(NHK)は、本件番組において、日本が日英博覧会においてパイワン族を『人間動物園』で見せ物にしたことを歴史的事実として紹介していると認めることができる。したがって、本件番組が、日英博覧会に主演したパイワン族を動物扱いし、同パイワン族らの社会的評価を低下させるものであるとは認められない。
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NHKは「歴史的事実」を紹介しただけで、番組自体がパイワン族を「動物扱い」したわけではないから、名誉毀損には当たらない、というのである。高許さんの受けたショックには何も触れない。
これに対して、東京高裁での2審は名誉毀損を認め、高許さんに100万円の慰謝料支払いを命じた。その判決文は1審とは全く違ったトーンである。
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本件番組を制作した島田らは・・・一部の学者が唱えている「人間動物園」という言葉に飛びつき、その評価も定まっていないのに、その人種差別的な意味合いに全く配慮することもなく、これを本件番組の大前提として採用し、・・・
それまで控訴人高許がパイワン族の中で受けていたパイワン族を代表してイギリスに行った人の娘であるという社会的評価を傷つけたことは明らかである・・・
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この番組は「親日的とも言われる台湾に、今も残る日本統治の深い傷」と語ったが、判決文はこれに対しても、次のような厳しい批判を浴びせた。
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本件番組こそ、その配慮のない取材や編集等によって、台湾の人たちや特に高士村の人たち、そして、79歳と高齢で、無口だった父親を誇りに思っている控訴人高許の心に、深い傷を残したものというべきで・・・
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この判決文には、島田ディレクターに対する裁判官の人間的な怒りが籠もっている。その怒りこそ1万人以上の国民が原告として参加した原動力であろう。
(「父親が動物と同じように扱われるべき」とは言ってない)
この判決を不服としたNHKはさらに上告し、最高裁はこの1月に、2審判決を破棄して原告の請求を棄却した。その理由として、この番組によって「一般の視聴者が被上告人(高許さん)の父親が動物園の動物と同じように扱われるべき・・・と受け止めるとは考え難く」というものだった。
要は、番組が「父親は動物として扱われるべき」と主張したなら名誉毀損に当たるが、「動物として扱われた」と史的事実を言っただけなら、名誉毀損に当たらないという論理である。
しかも、それが本当に史的事実かどうかは議論しないので、この論理であれば、「日本軍は20万人の朝鮮人女性を拉致して従軍慰安婦にした」「南京で30万人の中国人を虐殺した」と言っても、「史実を語っているだけだ」とすれば「法律上」は誰の名誉毀損にもならないのである。
すなわち、この判決はNHKの報道が史実として正しかったかどうか、という問題には触れず、「法律上は名誉毀損という罪には当たらない」としているだけである。
(「日台戦争」で「日本軍死者5千人」?)
しかし、法律上は禁止されていなくとも、やってはいけない事は道徳上、慣習上、職業倫理上、無数にある。この番組では、日本国民全体の名誉を傷つけた嘘が他にもいくつかある。
たとえば、日本統治の初期に抵抗する原住民との戦闘を「後に『日台戦争(一八九五)』と呼ばれる規模に拡大していきました」と述べる。
「日台戦争」などと聞いた事もない用語に、「いつ台湾と日本が戦争をしたのだ」と多くの台湾人が怒った。番組では「日本軍だけでも死者は5千人近く」というが、実際はその9割以上はマラリアなどの病死であり、戦闘での死亡は164人に過ぎない。
学問上の用語として「日台戦争」という用語を初めて使った中京大学・檜山幸夫教授は、番組のエンドロールに勝手に「協力者」として名前を挙げられて抗議している。この用語を使っている学者は2名だけで、まさに「一部の学者が唱えている言葉に飛びつき、その評価も定まっていないのに」というのと、同じ姿勢である。
(「建物や標識、田畑を破壊した者は死刑」?)
第二の嘘は、後藤新平を次のように描いた点である。
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(毛筆で書かれた古い条文を映しながら)後藤が考え出した条令、匪徒刑罰令(ひとけいばつれい)です。日本内地ではあり得ない厳しいものでした。略奪、殺傷のみならず、建物や標識、田畑を破壊した者は死刑。未遂であっても同罪とする。総督府警察が、匪従、犯罪者と見なせば、たとえ未遂でも死刑に処せられました。
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後藤は抵抗する住民を帰順させ、土木工事などの職を与えた。そのために「匪徒刑罰令」で略奪などの首謀者を死刑に処す一方、自首すれば「情状二依リ其刑ラ軽減シ又ハ全免ス」として、投降と帰順を勧めるための手段としたのだが、この点は隠している。
後藤はさらに17万人もいたアヘン中毒患者を時間をかけて立ち直らせ、サトウキビ栽培と精糖事業を発展させ、交通網と都市の整備を進めた。そうした功績も一切報道しない。
弊誌でも何度も紹介したように、台湾人を同胞として、生涯をかけて尽くした我々の先人が数多くいた。今日の台湾人の親日は、それらの人々の至誠に感謝しているからである。『JAPANデビュー』は捏造(ねつぞう)報道によって、その日台関係にひびを入れようとしたのである。
(中国共産党中央宣伝部・李長春の影)
そもそもなぜ島田雄介、濱崎憲二両ディレクターが、これほど無理な捏造番組を作ったのか。番組放送の4年前に中国共産党中央宣伝部・李長春が「『台湾独立』と日本軍国主義の歴史的根源を明らかにし、祖国平和統一を促進しなければならない」と指示している事実を述べた。
そして、『JAPANデビュー』は、この李長春が来日した平成21(2009)年3月29日の直後に放送されている。中国共産党の広報放送局CCTVは渋谷のNHK放送センターの中にある。
この番組は、李長春の指示によって企画製作され、その来日にあわせて放映された、と見られる。CCTVとNHKの一部の幹部たちが、李長春に「自分たちの手柄を見て下さい」とアピールしている姿が目に浮かぶようである。
自由民主主義国家である我が国においては、思想言論の自由から、祖国の名誉を傷つける番組を法律で罰することはできない。それよりも、日本国民の受信料を使い、公共の電波に載せて捏造報道をする報道テロリストには、社会的制裁によって今後の番組製作の機会を奪うのが筋であろう。
そういう意味で、1万人以上もの人々が裁判に参加し、敗訴とは言え、この番組を糾弾した関係者の尽力を多としたい。真っ当な企業なら、こんな騒ぎを起こした人間は二度と起用しないはずだ。
島田雄介、濱崎憲二両ディレクターの名前をよく覚えておこう。そして今後、この二人の製作した番組を見つけたら、即座にインターネットで批判の声を上げるべきだ。それが、こうした報道テロを抑制する最も有効な道であろう。
(文責:「国際派日本人養成講座」編集長・伊勢雅臣)
---owari---
最近思うのは知らないことが多すぎると感じます。
確か台湾の民族村のようなところを訪問したと
思いますが知識不足で通り過ぎてしまいました。
他国の歴史に関心がなかった事を悔やんでいます。
先の大戦では日本の同胞として戦った民族で多くの
犠牲を出したんだろうと推測しています。
全く持って侮辱したNHKの報道には呆れ果てる。
視聴料を払っている国民としては憤りを感じます。
コメント、ありがとうございました。
Jiroさんが「他国の歴史に関心がなかった事を悔やんでいます」とおっしゃっていますが、日本人の多くに知らされていないことが多くあり、それが普通の認識だと思います。
問題は「侮辱したNHKの報道」だと思います。
日本のメディア、とくにテレビ局に代表されるマスコミの「偽善、欺瞞、嘘」の偏向報道は民主主義社会にとってもっとも危険であり、良識ある国民が見識あるメディアを育て、見識あるメディアが良識ある次世代国民を育てる。そのような日本でなければならないと思うのです。
国民から視聴料を巻き上げて、反日偏向報道を続けるNHKは、まさに我が国の自由民主主義の基盤を破壊する「国民の敵」であると思います。
国民がまずは「国民の敵」の正体を広く認識し、彼らに情報支配される未来を我々の子孫に残してはならない、それが日本を護る国民の責務であると思うのです。