(コアラと並んで豪州を代表するカンガルーに危機が…(Wikimedia Commons))

① ""頭ぐらぐら ジャンプできず「ラリったカンガルー見つかる」(動画)""
2018年07月16日 06時30分
オーストラリア南東部で今月、異常行動を示す野生のカンガルーが何頭も報告されており、野生動物保護団体が対応に追われている。
メルボルン近郊のビクトリア州で、事故やケガにあった野生動物の保護を行っている「レスキュー・リハビリテーション・リリース」のチームは今月7日、市民から「酔っ払っているようなカンガルーがいる」と通報を受けて現場に駆けつけた。
朦朧とした状態の若いメスのカンガルーが、救助チームの姿を認めると、ぴょんぴょんとジャンプして逃げ出そうとするも、着地できず倒れ込んでしまい、息を切らせながら地面にうずくまっている。
チームは毛布を手にカンガルーの体を押さえて保護しようと試みたが、非常に気が立っていて、前足の鋭い爪でレスキュー隊員の顔やのどに深い傷を与えかねないほど暴れまわった。最終的に保護を諦め、安楽死させるしかなかったと言う。
後日、この場所でもう1匹のカンガルーの異常行動が目撃された。頭をぐらぐらさせたまま安定せず、前に進まずに、ひたすら同じ場所で垂直ジャンプを繰り返しているのだ。
原因はイネ科の「カナリークサヨシ」。大西洋のカナリア諸島が原産で、日本では江戸時代にカナリアのエサ用として伝わった植物の急性中毒だという。
豪州の獣医学誌に掲載された研究論文によると、2014年12月、豪州東部の広い範囲に生息する「オオカンガルー(灰色カンガルー)」の多くで中毒症状による異常行動が報告された。これはカンガルーだけでなく、カナリークサヨシを食べた家畜の羊でも確認され、解剖したところ、毒素によって神経機能がおかされ、脳組織が茶色と緑色に変色しており、毒素によって神経機能がおかされていたことがわかった。
「レスキュー・リハビリテーション・リリース」の専門家は「残酷なようですが、中毒症状に陥ったカンガルーは、方向感覚を失ってしまって、進行方向に向かって正常にジャンプできなくなり、回復させることはできないのです」と話す。
この病気にかかるのは、オーストラリアのカンガルーや羊だけではない。自然界に広く分布する「セレン」濃度が高い牧草を食べた牛や馬が急性中毒を発症し、呼吸困難や異常行動で急死すると言うケースが1930年代の米国で報告されている。また、人間でもセレンを過剰摂取すると、顔面蒼白や呼吸困難、うつ状態、皮膚炎、脱毛、爪の脱落、神経症状などが引き起こされることから、家畜飼料への含有量は規制されている。