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【国立天文台】 過去記事 ; 3月6日22:40分、""すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功、その1""

2019-03-06 22:42:37 | 🚀🛰宇宙 ; 人類のロマンと挑戦、国立天文台、JAXA、NAS各国・宇宙開発…


① ""すばる望遠鏡 SEEDS プロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功、その1""

2013年8月4日
  
   ※ 長い記事なので2回に分けてアップします。

🌍 概要

東京工業大学・東京大学・国立天文台を中心とする研究チームは、地球から約 60 光年離れた太陽型の恒星 (GJ 504) を周回する惑星 GJ 504 b を、世界で初めて直接撮像法で検出することに成功しました。この惑星は、惑星の明るさから質量を推定する際に生じる不定性が小さく、質量推定の信頼度が極めて高いものです。これまで直接撮像された惑星と比較して、最も暗くかつ最も温度が低いことが分かっており、「第二の木星」の直接撮像にこれまでで最も近づいたと言えます。

(図1:すばる望遠鏡 HiCIAO による、太陽型恒星 GJ 504 のまわりの低質量惑星 GJ 504 b の赤外線カラー合成画像。コロナグラフにより中心の明るい主星からの光の影響は抑制されていますが、それでも取りきれない成分が中心部から放射状に広がっています。

 右はノイズに対する信号強度を画素ごとに表わしたもので、惑星検出が十分に有意であること、主星のまわりの成分はノイズであることを示しています。天球における GJ 504 の位置を示した図はこちら。主星は太陽に似た恒星で、おとめ座の方向、約 60 光年の距離にあります。なお、マスクに隠されている部分に、マスク無しの星像あるいは星印を重ねて星の位置を分かり易くした画像はこちらにあります。(クレジット:国立天文台))




 ★ 系外惑星の観測

太陽系外にある恒星を周回する惑星 (系外惑星) の候補天体の数は、2013年7月現在、ケプラー衛星による有力な惑星候補も入れると既に 3500 個を越えました。これらのほとんどは間接的な観測 (注1) によるものです。

 一方、系外惑星を直接画像に写すこと (直接撮像観測) は、非常に挑戦的な課題です。とりわけ、太陽系の惑星軌道程度の広がりに位置する惑星は、これまで 10 例程度しか報告されていません。その理由は、暗い惑星がすぐ近くにある明るい恒星の光に埋もれてしまい、惑星を見分けることがとても難しいからです。あたかも、明るい灯台の近くを飛び回る蛍の光を遠方から捉えようとするようなものです。

 しかし、惑星の明るさ、温度、軌道、大気など重要な情報が直接的に得られるため、直接撮像は究極の系外惑星観測方法とも言えます。まさに「百聞は一見に如かず」の世界です。

3つの A 型星 (太陽の2倍程度の質量を持つ恒星) の周りを公転する惑星 (候補) が、ジェミニ望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などの観測で 2008年に報告されました。そのうち HR 8799 を周回する4惑星は、すばる望遠鏡でもその存在が確認されています。それらは 5~10 木星質量で、24~68 天文単位 (1天文単位は地球・太陽間の距離、約 1.5 億キロメートル、光の速さで約8分) の距離にあります。また、直接観測された他の惑星も、その明るさから惑星質量は 10 木星質量程度と推定されています。


 ★ 最も軽い惑星の直接撮像の成功:GJ 504 b

すばる望遠鏡では、太陽系外の惑星やその誕生現場である原始惑星系円盤などを直接撮像観測するプロジェクト SEEDS (Strategic Explorations of Exoplanets and Disks with Subaru Telescope; シーズ; すばる望遠鏡による戦略的惑星・円盤探査プロジェクト) が 2009年から約5年間にわたって行われています。

 今回、東京工業大学・東京大学・国立天文台を中心とする研究チームは、おとめ座の方向、地球から約 60 光年離れた太陽型の恒星 (GJ 504) を周回する惑星 GJ 504 b を世界で初めて、直接撮像法で検出することに成功しました (図1)。恒星自体は肉眼でも見える明るさ (約5等級) ですが、惑星は赤外線波長で 17~20 等ととても暗く、恒星の 60 万分の1以下の見かけの明るさしかありません。直接観測では、1回きりの撮像ではたまたま背景に写りこんだ無関係の星と誤認する可能性があります。研究チームは GJ 504 b を7回に渡って観測し、背景星でないことも、さらにはその主星 GJ 504 に対して軌道運動することも確認しました。惑星と主星までの見かけの距離は 44 天文単位で、海王星の軌道半径より大きく冥王星の軌道半径に匹敵します。

 直接観測では、惑星の質量は明るさと年齢に基づいて推定されます。これまでに撮像に成功している惑星はいずれも年齢が5千万年以下と若く、そのような若い天体の質量推定には幅があります。それは、惑星がどのように生まれたのかが分からないため、用いる天体進化の理論モデルによって惑星質量に不定性が生じるためです。

 木星の約 14 倍の質量を持つ天体は褐色矮星 (かっしょくわいせい;惑星と恒星の中間的な質量を持つ天体) として区別されることが多いのですが、 実はこの質量不定性が惑星と褐色矮星の区別を非常に難しくしています。実際、新しいモデルを用いると、これまでに直接撮像された全ての惑星が木星質量の 14 倍よりも重い天体になってしまいます。

 一方、GJ 504 b の場合は年齢が 1~5 億年と比較的年老いているため、質量推定においてこの不定性の影響は小さくなります。研究チームはさまざまなモデルを用いても GJ 504 b の質量は褐色矮星の質量よりも十分に小さいことを突き止めました。まさに「第二の木星」と呼ぶにふさわしい天体です。従来の理論を用いると、この天体の質量は最低でわずか木星の3倍の可能性もあり、その場合、これまでに撮像された惑星の質量としては最小記録です。年齢の不定性を考慮した場合でも、3~5.5 木星質量がもっともらしいと推定されました。

直接観測の長所は、惑星を「発見」するだけでなく、「特徴づける」ことも同時に可能なことです。複数の赤外線波長における撮像観測から、この天体は温度が絶対温度で約 500 度 (摂氏 230 度) と非常に低温であること、また、特異なカラーを持つことも分かりました (図2)。

 これらは、この巨大惑星の大気についての重要な情報をもたらします。過去の褐色矮星の観測から、その大気には塵でできた雲が有る場合と無い場合があることがわかっています。褐色矮星と系外惑星のカラーを比較すると、これまでの直接撮像惑星が塵でできた雲に富んだ大気であるのに対し、惑星 GJ 504 b は低温度で大気中の雲が少ない惑星の例と考えられます。

(図2: 惑星 GJ 504 b のカラー。他の直接撮像惑星 (HR 8799 の3惑星など) と異なり「青い色」をしていることがわかる。これは、雲を持たない褐色矮星の「色」と似ており、雲が支配的な系外惑星大気とは対照的である。(クレジット:国立天文台))



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