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【msn/AERA dot.】 3月23日08:00分、""堺屋太一の大予言? 20年前に書かれた近未来小説『平成三十年』がスゴイ! ""

2019-03-23 23:55:58 | 未来の日本展望は?/ 新しいテーマ•分野•動き、エクセレントカンパニー!!

( Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 堺屋太一さん)




(近未来小説、平成三十年)




① ""堺屋太一の大予言? 20年前に書かれた近未来小説『平成三十年』がスゴイ! ""

2019/03/23 08:00

 今年2月に逝去した堺屋太一氏が遺した大作『平成三十年』が再び注目を集めている。
 本書は約20年前に生まれた近未来小説で、作中では平成30年を生きる“未来人”の世界が仔細に描写されている。

「バーチャルガバメント(仮想政府)」など時代を先回りしてしまった描写もあるが、「VR」や「ニュータウンの過疎化」といった的中要素も数多く、20年越しの「予言小説」として世に衝撃を与えている。

 日本人の出生数が2017(平成29)年に100万人を切るなど、本書では見事的中させた予言も数多く登場する。「当たった・外れた」といった観点からも楽しめるが、本書の白眉は、今の日本を漂う「時代の空気」を的確に捉えている点だ。副題の「何もしなかった日本」にあるように、改革を不得手とする日本型組織への警世の念も込められており、むしろ我々“未来人”に刺さる内容ともいえる。

 無論、堺屋の未来予知は超能力などではなく、あくまでも現実に即した「予測作業」に基づいている。巻末の「あとがき」では、その構想の裏側や執筆の意図を余すことなく開陳している。今回は特別に「あとがき」を公開する。
*  *  *

■「あって欲しくない日本」を描く予測小説
「予測小説」は警世の書である。
 従ってここでは、「あって欲しくない未来」を描く。私(堺屋)にとって、平成三十年(2018年)に「最もあって欲しくない日本」は、「何もしなかった日本」だ。
 しかし、そうなる可能性は高い。この十年、「改革」「改革」といわれていながら、現実の世の中は、根本のところが変わらない。

 本編『平成三十年』では、まず、この情況が今後も続くことを想定して、十数年後の日本を現実的に描くように努めた。このため、経済統計の数値や官庁の名称なども、最もありそうな情況を予想して、丹念に書き記した。そこでの人々の暮らしや世間の雰囲気を感じ取って頂くためだ。

 従って、個々の数値や名称はさほど重要なわけではない。数字のお嫌いな方は読み飛ばして頂いても結構だ。名称がややこしいと思う方は忘れて頂きたい。まずはあなたの好みで本編を楽しんで欲しい。もちろん、経済社会に関心のある方は、「最もあり得べき予測」として読み、議論もして頂きたい。

「何もしない日本」では、国際競争力の低下で円安と国際収支の赤字化が進み、不況と物価の上昇とが同居するスタグフレーションに陥る可能性が高い。

 本編は1997年6月1日より98年7月26日まで、朝日新聞朝刊に連載した小説を修正加筆したものだ。連載終了から書籍出版までに4年を要したのは、この連載が終了した直後に、私が小渕内閣の閣僚として、景気振興と経済構造の改革に当たることになり、修正加筆する時間的余裕がなかったためだ。その間に、内外の情勢もかなり変わった。連載当時の予測に比べてはるかに速く変わった分野もあれば、進まなかったところもある。速かったのは、金融などの企業構造の変化と情報産業の発達だ。この二つは私自身、経済企画庁長官や情報産業担当大臣として関与したところである。

 その一方、変わらなかったのは官僚主導の体制と、安全、平等、ことなかれの思想だ。この二つは、21世紀に入ってからむしろ強化されている。

 今回の出版に当たっては、こうした現実に沿っていくらかの修正加筆を行った。新聞連載という枠組みに捉われることなく、長編小説に仕上げられたと満足している。

■世界経済は逆転するか
 予測小説(または近未来小説)は、1975年に小説『油断!』で、私がはじめた創作手法だ。私はそのあとに『団塊の世代』などの予測小説を書いた。世界的にもこれに倣(なら)う作家が現れ、ポール・アードマンのような著名作家も誕生した。日本でも、ようやくこの手法が浸透、最近では大型倒産や金融破綻をテーマにした予測小説ができている。創作手法(文学ジャンル)の創始者として嬉しい限りだ。

 予測小説ではまず、経済社会の条件を「最もありそうな状況(予測の中央値)」に置く。そしてその中で主題とする事件(テーママター)が起こった場合の影響を可能な限り現実的に描く。従って、テーママター以外では正確かつ体系的な状況予測が欠かせない。

 本編の場合、まず重要なのは、平成30年の世界の経済情況と技術条件、国際情勢を考えることだ。
 冷戦構造の崩壊から30年、平成30年までには、世界の国境を大変化させるような大戦争や大革命は起こらないだろう。知価社会の進展と共に、国家は急速に稀薄化している。
 だが、経済の面では逆転する可能性が高い。物価下落の時期が終わり、稀少金属やエネルギー・食糧などが値上がりするだろう。
 20世紀になってから100年余、世界経済では30年の中で、国際物価は下落、ジリ高、急騰の三つを繰り返して来た。最近では1970年代が急騰、80年代がジリ高、90年代が下落である。

 現実的な予測でも、2010年までには国際物価が急騰するようなことがあってもおかしくない。中国などの工業化は、90年代には工業品供給力の拡大となって「大競争時代(メガコンペティション・エイジ)」を生み出したが、2000年代のうちには、世界の資源需要を膨張させる、と見られるからだ。

■日本は倫理と美意識を変えられるか
 そんな中で、日本では三つのことが確実に進む。
 第一は少子高齢化だ。平成30年には「団塊の世代」は60歳代後半の高齢者となり、その子供たちの「団塊ジュニア」も40歳代に入る。本編主人公の木下和夫とその父昭夫は「団塊とその子」だ。

 第二は地方の過疎化。もしその時までに日本が首都機能の移転をしていなければ、中山間地は凄まじい衰退に陥っているだろう。東京で営まれる官僚機構は、現在も将来も、東京一極集中の仕組みを保つだろう。

 第三は、知価社会化、様々な新産業と新製品が出現し、創業と閉業が増加しているに違いない。本編にも新しいビジネス・モデルを10以上も入れ込んだが、そのうちのいくつかは現実となっているだろう。それに伴って日本でも、改革は行われるだろう。だが、それが「盲腸の手術」に終わる可能性は高い。「何もしなかった日本」への道である。

 ■仕方から考え方へ――改革は進むか
 企業であれ国家であれ、組織が行き詰まり、事業の成績や評判が急落すると、改革改善の声が上がるのは当然だ。だが、それは、人事・仕方・仕掛け・仕組みの順で進み、根本の考え方、つまり倫理や美意識の転換に至るまでには、長い時間と幾度もの試行錯誤を経る。
 平成の日本もその通りのことをして来た。まず自民党内閣から7党1会派連立の内閣に代える人事の刷新をやってみた。橋本「六大改革」では仕方を幅広く変えた。小渕内閣は金融再生や会社法の改正で経済社会の仕掛けを変改した。これは一時日本経済を回復させる効果を上げたが、次の森・小泉内閣では難渋する。
 小泉内閣の掲げる道路四公団の民営化や郵便事業の公社化・民間参入などは、仕組みの改革を目指すものだ。

 平成になってからの14年間で11人の総理大臣が誕生したが、そのすべてが「改革」を叫んだ。平成の日本では改革が常習化している。というのは、本当の改革が行われていない証拠である。
 こうした情勢が、これからも――平成30年まで――続く可能性は高い。真の改革に必要なのは考え方の転換、つまり倫理と美意識の変更であることが、まだ知れ渡っていないからだ。

■改革者・織田信長に習うこと
 さて、これからの十数年、内には人口の高齢化、外には中国などアジアの工業化に直面しながら、日本が「遅進国」であり続けるなら、そのあとにはどんな改革があり得るだろうか。それが本編後半の主題である。

 いくつものシナリオが考えられる。私もいくつものシミュレーションを試みた。その中で最もありそうなのは織田信長型、つまり体制内の異端者が、周囲の分裂と抗争を利用して実力を蓄え、温和な仕組みの変革者から次第に過激な思想の改革者へと変貌する経路だ。
 この過程では、当初の改革賛同者も次々と脱落する。織田信長の史実がそうであったように。

 特に、この国の社会の実権を握る政府官僚と伝統ある大企業の中枢管理者は、政権政界の変化などは「上辺(うわべ)の細波(さざなみ)」とたかをくくっている。だから、政治(選挙)にはそれほど深入りしない。改革者は、その間隙を突き抜け、形式と思われていた政治を現実に変える道を辿るだろう。織田信長が、誰もが形式と信じていた足利幕府を手中にして、その号令を現実のものにしたのと同じ手法だ。

 これは、外国の力によらない非暴力改革だが、改革者にとっても、それを受ける側にとっても、緊張を胎んだ過程になるに違いない。この物語のあとが、どのように続くか、読者自身の創作に委ねたい。
 様々に空想を拡げて頂けることだろう。

平成14年5月 堺屋太一


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