いい本に出会いました。
2回、泣きました。
悲しいのではなく。
母がもし生きていれば、「この本を読んでみて」と言っただろうと思います。
そして、いろんな話をしたことだろうと思います。
著者:今村葦子
発行所:評論社
いい本に出会いました。
2回、泣きました。
悲しいのではなく。
母がもし生きていれば、「この本を読んでみて」と言っただろうと思います。
そして、いろんな話をしたことだろうと思います。
著者:今村葦子
発行所:評論社
2022年6月、東京都杉並区長選挙に立候補、現職区長を僅差で破り当選した岸本聡子さんとは、どういう人なのか?
そんな興味から手にとった。
「ヨーロッパの移民」とし20年。「自分のことは自分で決める」を貫いて「生きてみた」という。
地球の規模で環境、人権を考え、民主主義を創る市民の運動の中にいた著者が、日本に帰ってきて草の根の市民運動の人たちの要請に応えた。
「自分と意見を異にする人たちの声を聞き、対話の輪を広げていくよき進行役でありたい。そして自分の統合性とビジョンを失うことなく、自分の人生の新しい章を書いていこう。」(エピローグより)
コモンとは、「人々の共有財産」であって、その「人々」とは、「私たち」であって、けして誰か特定の人達の儲けの道具にしてはならないもの。
たとえば水。たとえば空気。そして教育や医療、保育や介護。
共有財産を守り、活かし、豊かにするためには、住民の自治の力。民主主義の成熟が求められる。
著者;岸本聡子
発行者;晶文社
友人が「おすすめ・・・」と言ってくれた瀬尾まいこさんの小説の世界は、私も人に「おすすめ」したくなります。
「ろくに学校にも行かず、かといって夢中になれるものもなく日々をやり過ごしてい太田」(裏表紙より)が主人公。1歳の女の子の子守を引き受けることになる。「泣き止まない、ごはんを食べない、小さな鈴香に振り回さる金髪少年はやがて――」
こんなリードに惹かれて読んだのが「君が夏を走らせる」
太田少年のことを知りたくなって、前作の「あと少し、もう少し」を読む。
駅伝のタスキをつなぐ6人の少年の一人一人が主人公。そのひとりが太田君。
そして、この2作よりも10年も前の作品、「天国はまだ遠く」の作者あとがきで、丹後地方で全校生徒30人の中学校の教師をしていたという作家の経歴を知りました。なるほど・・・だから、作中の少女たち、少年たちが、こんなにも生き生きと臨場感をもって描かれているのでは?と。
「あと少し、もう少し」
「君が夏を走らせる」
「天国は まだ遠く」
新潮文庫
それぞれの動物たちが、懸命に生き、そして子どもを守る。
命がけの営みに、たくさんの「なぜ?」を問いかける。
21の物語の全てを読み終わるまえに、誰かにこの本を知らせたくてたまらなくなった。そんな1冊だった。
著者、ドリアン助川さんは、映画「じんじん」の政策委員会が編んだ絵本「クロコダイルとイルカ」の作者として記憶にあった。
本書との出会いは、「しんぶん赤旗」の書評欄だった。
書評を書いてくださったのは中村桂子さん(JT生命誌研究館名誉館長)。
書評の一部を引用させていただきます。
動物たちについての深い知識と愛情とが ないまぜになった、柔らかで美しくユーモアのある文からは、彼らの声がそのまま聞こえてくる。隣で読んでいる長女の「なぜどのお話もこんなに哀しいのかしら」というつぶやきに、「生きているからじゃない」と答えながら、著者にお礼を言っていた。常に真剣に考え、時に悩みながら誠実に生きている動物の声を、ヒトという仲間として聞き取ってくださってありがとうございますと。
この1冊に出会わせてくださった評者、中村さんに心からの「ありがとうございます」を。
著者;ドリアン助川
出版社;集英社
愛知県の過疎の町で町立病院から人工透析がなくなる。
入院のベッドも救急医療もなくなる。
そういう医療行政に憤る住民の闘いを描いた小説。
フィクションであるが、多くが実話に基づく。
著者自身が、実体験にモデルがあるからこその臨場感。
ずっとワクワク ドキドキしながらページをめくった。
著者;浅尾大輔
新日本出版社
「万博の機運醸成」などと、言っている場合だろうか?
「万博は、国民がみんな笑える時に・・・」と、中学生の新聞投書が、「ほんとにそうだよね」と、頷いた。
万博につぎ込もうとしている予算を、人を、資材を今すぐ被災地へ!
著者;西谷文和
せせらぎ出版
3つの物語で構成される1冊。
背景となる場所も、そこで起きる出来事も、遠く日常から離れているのに、なぜかわかる。
わかる気がするのが不思議。
そして哀しみのなかから、新しい世界へと踏み出していく。
光が見える。
著者:小川 糸
幻冬舎文庫
トットちゃんの42年ぶりの「続編」を読んだら、やっぱり元々のトットちゃんを読みたくなる人が多いのだと思います。書店に平積みになっていました。
40年以上ぶりの再読。
記憶がはっきりしているところもれば、初めて読んだような気がしたところも多くありました。
そして、声を出して読みたくなる。
そんな一冊でした。ずっと手元に置きたいと思います。「続・・・」とともに。
著者;黒柳徹子
講談社文庫
「窓ぎわのトットちゃん」から42年。
「トットちゃん」に、母親になったばかりの私はずいぶん助けられたものだった。
2歳で保育所に行き始めた長女が「トットちゃんみたいな子」と言われるのが、とても嬉しく、私にとっては最大級の誉め言葉に聞こえた。
あとがきに「私が体験した戦争のことを書き残しておきたいと考えたことが『続 窓ぎわのトットちゃん』を書くきっかけのひとつ・・・」とある。
「九死に一生」という見出しもあるが、何度も何度も、よくぞ生きてくれたという場面がある。淡々とした書きぶりであるからこそリアルだ。
よく書いてくださったと思う。
著者;黒柳徹子
発行所;講談社
思うところあり、三浦綾子の「母」を再読した。
小林多喜二の母、小林セキさんを、セキさんの人生が一人称で語られる。
「日本共産党の百年」の中に描かれた時代、人々、その群像のなかにとてもリアルな存在感を持って、多喜二の姿が浮かぶような気がした。
三浦綾子
角川文庫
「ライオンのおやつ」と最初に出会ってから、小川糸さんの本を何冊読んだだろう。
どの作品も、命のギリギリの瀬戸際を描きだしてくれる。
「とわ」は主人公のなまえ。
「とわさん」が生きていて、幸せでいてくれてよかったと思う。
私たちは、とわさんのように、幸せな出会いに恵まれなかった命もたくさんあったことを知っている。
蕾のまま散った幼い命のことを考えてしまう。
どこに生まれても、どんなことがあったとしても、生きていることを喜べたはずなのに。
見上げた空は秋。
風はさわやか。
出かけるときは晴れていて、途中で降りだし、帰りは雨。
今日は、3回、雨にあった。
著者;小川糸
新潮文庫
8月6日、著者の講演を聞く機会があった。
2016年、「マイナンバーはこんなに怖い!」を読んで、本当に「怖い」と思った。
その怖さを、なかなか語ることができない。
伝えることが難しい。
そんなジレンマのなかにいた。
そして7年以上たって、今、起きていること。
マイナンバーカードと保険証をめぐるトラブルは、あとを断たない。
著者は「保険証廃止にストップをかけることができたとしても、マイナンバー制度そのものの本質的な問題が解消されるわけではない」ということに警鐘を鳴らす。
それにしても、あまりにも民主主義を蹂躙したプロセスで医療を受ける機会が奪われかねない「保険証廃止」の中止を求める事。その運動のなかで、マイナンバー制度そのものの問題を考えていくこと。そのために、必読の書だと思う。
著者;黒田充
出版社;日本機関紙出版センター
「ゆっくりでいいんだよー」の、中学1,2年の2年間を不登校で過ごした当事者の言葉から、気づかされること、納得できること、考えさせてくれること。たくさんありました。
子どもと教育について考えるための、とてもよいハンドブックだと思います。
著者;鈴木正輝 鈴木はつみ 鈴木正洋 梅原利夫
出版社;ふきのとう書房
「学校へ行けない子」は、今の社会の歪みにシグナルを発信してくれているように思います。
声にならない叫びに耳をすませたい。
本書を読んでいるうちに「子どもの権利条約」が、新鮮な輝きをもって、目のまえにあらわれた気がする。
いい本に出会えました。
著者;鈴木はつみ
協力;梅原利夫・増山均
発行;新日本出版社
青山美智子さんの本2冊。
どちらも、登場人物が入れ替わり、小さな物語の短編集のようでありながら、まとまりのある1冊。
「お探し物・・・」は図書館での出会いが、それぞれの人生の扉を開く。「何かお探しですか?」の一言から始まる絶妙なレファレンス。
「木曜日・・・」は、川沿いのカフェを舞台に行きかう人々。しりとりゲームのように、人と出来事がつながって大きな鎖の輪のように。
そういえば、最近も「つながっているなあ」と思うことが、実生活でもおこった。
そのひとつ。10年以上前に出会い、その後長く中断の時があって、再びの出会いのあと、今はご近所さんになって。よく話を聞いてみたら、30年以上前に「知り合う前から深いご縁があった」ことがわかってびっくり。
もうひとつ。30年以上前に、私を頼ってくださった方が、お友達のことで心痛めて相談の電話。これも、お話を聞いているうちに、そのお友達が誰なのか、聞かなくてもわかる方だった。その二人が偶然知り合ったことを嬉しく思った。
私には「お探し物・・・」の図書館の優秀な司書さんのようなレファレンスができる自信はない。「木曜日・・・」のマスターのように、おいしいココアで、冷えて固くなった心と体を癒すこともできそうにない。
それでも、出会えた人と過ごす時間を大切にしたい。
せっかく出会うことができたのだから。
お探し物は図書館で(ポプラ文庫)
木曜日にはココアを(宝島文庫)