予算審査に臨み、評価、判断をすることの責任は重い。
一つ一つの施策の意義についても、単純ではなく、見方によって評価が異なる。
それでも、今の市民=私たちにとってのメリット、デメリットだけでなく、次世代の市民にバトンを渡すことを同時に考えながらの私たちなりの精いっぱいの評価、判断をした。
その結果、一般会計、国民健康保険、介護保険、後期高齢者医療制度、そして病院事業会計に「反対」、土地取得会計、水道、下水道会計には「賛成」した。
一般会計、病院会計には、私たちの会派以外にも反対があったが、他は全てに賛成で、全会計予算案が原案どうり可決成立した。
3月17日、本会議での意見表明を以下に掲載しておきます。良かったら読んでください。
日本共産党市会議員団を代表して、2022年度予算案に対する意見を申し上げます。
【一般会計】
一般会計につきましては、反対の立場で討論を行います。
先ほどの委員長報告に反映をしていただきました、本予算案に賛成できない「市制運営上の基本的問題」とは何か、以下、あらためて申し上げます。
第一に、住民にとって最も身近な基礎自治体として、市民生活の実態を把握し、市民の痛みに寄り添う施策においては不十分といわざるをないということです。
コロナ禍が、うきぼりにしたのは日本社会の根深い「貧困と格差」でした。もとより劣悪な条件で働く非正規雇用の女性がその仕事さえ失って自殺に追い込まれている現実。フードバンクで命をつなぐ学生が学ぶことをあきらめなければならない現実。地域経済を支える中小零細業者にとって国・府の支援策が届いていたのかどうか?一般論で済ませるのではなく、女性の貧困、若者の貧困、高齢者の貧困、市内事業者の苦境、それらが本市の中でどのような形であらわれているのか、市の責任で実態把握をしてください。貴重な国の財源措置、新型コロナ対応の地方創生臨時交付金の多くを投入したキャッシュレスポイント還元事業は、恩恵を受ける人とそうではない人の不公平感を増幅させました。そのことを直視し、多くの市民に届く支援策、一番苦しんでいるところに手厚い支援の手を差し伸べることを求めます。
第2には、「参画と協働の推進条例」の求める市の説明責任の放棄、政策決定の過程への市民参加を尊重する姿勢の欠如です。
2千万円余の費用と2年余の時間をかけて策定し2017年6月に成案とした「公共施設適正配置基本計画」は、第1期事業期間の当初から「計画」を無視した事業、すなわち「南公民館との複合化」とされていた図書館の駅前移転整備を推進してきました。「計画」と違う方向に進むなら、「参画と協働の条例」に則って、市民参加の手続きをとり「計画」の見直しを行うことを求めてまいりましたが、それは今に至ってなされていません。この街で暮らし、この街の歴史を創ってきた先輩たちが私たちに残してくれた市民共有の財産が、公共施設です。それらの全てを大切に使いながら、そこで新たな文化を創造しつつ、限られた財源の活用によって必要な再編整備を行って、次世代へとバトンを渡していくための道筋を見出すために、99の公共施設のすべてについてハード、ソフトの両面からの検討を行ったのが「公共施設適正配置基本計画」です。園児減少で廃園とした幼稚園を、将来、活用するのかしないのかも明らかにしないまま丸4年も放置する。そんな無駄遣いをしないために公共施設の計画的な整備のために作った「計画」ではなかったのでしょうか。
「計画」はすでに市民会館が廃止された時点、公共施設の総面積では約4%のマイナスからのスタートでした。2022年度「第2期事業期間」に入ろうとする時点で「総面積の2.7%削減の目標を達成している」ことをもって「計画は順調に推移している」という評価は、いかがなものでしょうか。今年から来年度に続く事業として、「教育施設配置計画」の策定がされていますが、今度こそ、市としての誠実な説明責任を果たし、市民・利用者を置き去りにしないことを強く求めます。
この際に、予算審査を振り返って以下の点について意見を申し上げます。
契約における透明性の確保、特にプロポーザル審査のあり方について。競争入札を原則とする公共事業の契約において随意契約という例外的な手法を選択するにも関わらず、所管の判断、裁量にだけに委ねるのは、公契約の信頼性を損なうものと言わなければなりません。大阪府の実施基準に準拠するなどの見直しを求めます。
図書館運営について。今年度、来年度と続けて3300万円の図書購入費が計上されています。旧来の図書館の図書購入費の7年分以上です。職員配置も、館長を含め正職員ゼロ、窓口は委託であった旧図書館と比較になりません。「図書館にもっと予算と人を」と求め続けてきた立場から、この潤沢な予算計上、人の配置は喜びたいと思います。図書館協議会の設置が年度末になりました。専門家のご意見も大切ですが、市民参加の窓口として図書館運営協議会が機能することを期待します。残念なのは、工事費に6億円2千万円余をかけて改修した施設はバリアフリー、ユニバーサルデザインとは、ほど遠い。もっと残念なのは、20年間の総額で9億3千万円の賃貸料負担の予定ですが、賃貸借契約の満了は18年後の2040年8月31日。20年後、市政施行100周年を祝う将来の市民にとって図書館はどこにあるのか、ないのか?わかりません。
教育について。市長の公約である「市独自の35人学級」実施は、来年度も見送られました。一方、イマ―ジョン教育(英語以外の教科で英語による授業を行う)導入されるということです。真に教育的な効果が期待され、必要なものなら全ての子どもに、公平に教育機会が保障されなければなりません。子どもたちにとっては、やりなおしのできない今。モデル校での実施で、いわば子どもを実験台にすることは、公教育の在り方を逸脱するもではないかと懸念を抱きます。学校現場でのより慎重な検討を求めます。
予算案には、認知症の早期発見のための検診事業、訪問理美容サービス、新生児の聴覚検査助成、子ども医療費助成の18歳までの引き上げ、学校図書費の増額、学校給食食材費の一部公費負担など前進した施策もありますが、先に述べた問題の重さ、大きさから、一般会計予算案に反対します。
【国民健康保険】
保険料・減免基準の大阪府による統一化で、本当に市民のためになるのかどうか?今、立ち止まって真剣に考えるときです。加入者には、生存権を脅かす過酷な保険料負担を強いながら、国保財政は黒字で基金を積み上げていくことは、到底市民の理解を得られるものではありません。国・府言いなりではなく、保険者としての主体的な判断と対応を期待して、予算案に反対します。
【介護保険】
コロナ禍のもと、高齢者の外出自粛、人との交流機会の減少などによって体も心も認知機能も衰えていることが問題となっています。介護サービスの基盤を支える事業者が、長引くコロナ禍で、大変な苦労を強いられています。次期「計画」の策定を待たずに、実態の把握と分析に努めることを求めました。主には国の制度の問題に起因するとはいえ、「保険あって介護なし」の状況が改善されない本事業の予算案には賛成できません。
【後期高齢者医療制度】
制度発足当初の保険料軽減措置の廃止によって、75歳以上高齢者の多くの保険料が大幅に、引き上げられています。この年度の後半からは2割近い方々の医療費窓口負担が2倍に引きあげられようといます。これらは国による制度改悪でありますが、本市の市民である高齢者の尊厳と安らぎを支える市の役割を果たす立場で、国にも大阪府広域連合にも制度改悪に声をあげていただくことを求め、本事業の予算案にも反対します。
【市立病院事業会計】
南出市政1期目の3年間、一般会計から病院会計への繰り出しは毎年度9億円に抑制してきました。市長が市民に向けて発したメッセージで「建っているだけで13億から15億かかる病院」と言いながら、必要な時に必要な財政支援を行わず、病院を疲弊させ、経営悪化の末に2019年12月末、社会医療法人生長会・府中病院を連携のパートナーとして病院再編・新病院建設に向けた「合意書」を結び、それを市民に知らせたのは翌2020年の「広報いずみおおつ2月号」でした。公立病院経営に民間の手法を取り入れる場合には、それぞれのメリット、デメリットをオープンな議論によって比較検討し、仮に指定管理者制度を導入するという選択をするなら、まずその是非について議会の議決を行う。その上で、指定管理者の指名についての議決を行うのという、自治体病院の経営形態の変更にとって最低必要なプロセスを経ることなく、地域医療連携推進法人の設立と言う形で、既成事実が作られています。
本市の病院が単独では担うのが困難な医療を他の医療機関との連携によって補い、地域医療に貢献する道を目指すことに異論はありません。しかし、そうであるなら、大阪府下ですでに設立された北河内の地域医療連携推進法人を含む全国の多くの先行事例と同様に、圏域において事業を展開する多くの事業者との連携、「泉州北部メディカルネットワーク」の名にふさわしい医療・介護の連携を創ることを真剣にめざすべきではないでしょうか。そうであってこそ、高度救急医療にも、安心安全の出産と子育てにも、疾病の早期発見早期治療の保障である健診事業にも、また新型コロナなど感染症にも対応し、市民の命と健康を守ることができるはずです。
病院再編計画が示されてから、それに伴う中長期の収支計画(案)は当初から大きく姿を変えていますが、2020年6月の第1回市立病院整備対策特別委員会で「起債許可を受けるためには地方財政法上の資金不足を10年間で解消する必要がある」と説明のあった「収支計画」案は未だ、示されていません。これまでの「計画」案には、現病院の改修費用は見込まれておらず、昨年8月の特別委員会では、現病院の改修整備にあたっては「基礎調査」の段階とのことでした。「基礎調査」の進捗の報告も、(仮称)小児周産期センターの「基本方針」さえ示されず、1億5千万円余の実施設計まで踏み込む予算が計上されました。
コロナ禍の医業収益の減少や診療報酬の動向等により、「従来提供してきた医療を、将来にわたって存続させることはますます困難」との説明がされていますが、その一方で、今、市と病院当局が進めようとしている病院再編計画によって、「従来、提供してきた医療を保障する」確かな道筋は示されていない。それどころか、新病院にしても産科・小児科に特化する現病院しても「どんな医療を提供しようとしているのか」さえ、明らかにされていません。羅針盤なき航海に、現在と将来の市民を道連れにするに等しいということを申し上げ、引き続くコロナ禍で、大阪の医療が全国のどこよりも危機的な状況に陥っているもとで、検査、ワクチン接種、患者の受け入れ、地域の医療機関との連携のもとに自宅療養者への支援など、公立病院としての使命を果たすことを求め、病院事業会計の予算案に反対いたします。
特別会計の土地取得事業会計、公営企業会会計の水道、下水道会計については、賛成といたします。