中居・フジテレビ問題について、徐々にその真相が見えつつあるような感じがしてきた。この問題についての文春の第一報の一部に間違いがあるということを橋下弁護士が指摘して、文春も訂正記事を出したが、確かに、当日のパーティーへの誘いが、編成幹部のAからのものか、中居から直接なされたかは、フジテレビ幹部の直接的関与の度合いを想像する目安になると考えることも出来る。そうであるからこそ、この文春の記事が出るやいなや、フジテレビを応援したり、文春に反感を持っている人々から反撃の投稿がネットに溢れるようになった。でも、このことを持って、Aの関与が全く無く、女性社員に対するフジテレビ側の安全配慮義務が全うされていたとは言い難いものがある。普通の常識ある会社であれば、芸能人のような人達と接触する立場にある若い女性社員に対しては、「もし、芸能人から誘いがあったとしても、上司を盾にして断るように」との注意喚起を常日頃から行っていることだろう。ところが、文春のこれまでの記事によると、Aからは、別の日にだったかも知れないが、「仕事にも役立つから」と有力タレントとの接触の機会を勧めるかのような言葉があったとのこと。もちろん、証拠となるもの録音等がある訳で無ければ、Aが否認すれば被害に遭った女性アナウンサーの単なる思い込みとされるかもしれない。
渡邊渚さんのフォトエッセー等によると、6月の大雨の日、精神的に打撃となった深刻なトラブルに遭ったものの、それからも数日は、食事もろくに取れないままに仕事をしていて、ついに、心身の不調を訴えて入院に至ることとなり、当初は職場復帰の希望を持っていたものの、一年数か月にもわたり入院生活を送ったとのこと。
その間、いつの段階で、上司に対して、中居とのトラブルによって打撃を受けていると打ち明けたかは、今の段階では明らかになっていない。しかし、少なくとも7月には、Aを通じて中居から見舞いが届けられようとしたとのことであり、その段階で、少なくともフジテレビの少数の幹部は知っていたと思われる。問題の一つは、女性が、それほど深刻な打撃を受けているトラブルなのに、フジテレビ側が中居に厳しく問いただそうともせず、単なる男女間のトラブルであるとした中居の言い訳を信じて、漫然と中居の番組起用を続け、コンプライアンス専門部署等への報告を怠っていたことにある。
週刊誌報道によれば、これ以外にも、中居とA、被害者他の社員が参加した複数の飲み会があったとのこと。また、中居は、問題となった高級ホテルでの松本とのパーティにも参加していたとも報じられている。Aと中居との間にどれだけの交遊があったかは知らないが、フジテレビ関係者の間では、女子アナウンサーを交えた有力タレントとの飲み会が常態化していたとも想像される。
これを、そのような会合を持つことが、女性アナウンサーの業務の一環なのか、それとも、自由参加での単なる飲み会であると言えるのかによって、フジテレビの企業風土の是非が問われるだろう。
渡邊渚さんが、エッセーに書いていることが、全て真実であるかは分からないし、彼女にも、良い仕事に就きたいという思いと、Aの意向に逆らっては仕事を干されるのではないかという危惧もあっただろう。また、幾ら仕事の為とは言え、有力タレントが一人でいる部屋を女性ひとりで訪れた場合の危険性を予想出来なかったという油断も彼女にあったことも確かだろう。しかし、日本は法治国家であり、例え、男女が同じ部屋にいたとしても、襲っても良いという常識は無い。しかし、それでもなお、自らの性欲の為に相手の意思も確認せずに行為に及んだとすれば、特に30歳近くも年の離れた男性の行うべき行為ではないだろう。
橋本弁護士が、何の意図で、この段階で、文春に第一報の誤りを指摘したのかはわからないし、巨大なメディアコングロマリットの意向も判らない。しかし、どのような状況あっても、自社の社員よりも取引先への忖度が優先するという企業が、もし存在していたとすれば、厳しく断罪されるべきだろう。第三者委員会の公正な調査と報告が行われることを期待している。