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『Starman』が選ぶ『今夜のRock』は、この1枚!(Vol,3) The Searchers『Meet the Searchers』(UK Ver) &『Hear Hear』(US)

2024-10-27 12:55:12 | 『スターマン★アルチ 』音楽コラム集

今回も、時代の波に流され、忘れ去られてしまった「ブリティッシュ・ビート」のバンドをご紹介致しましょう!その名は「サーチャーズ」! 今では、というより随分前から全く語られることがなかったバンドなのですが、僕は彼らの事が昔から大好きです!とは言え、今まで生きて来て「サーチャーズイイですよね!」といった様な会話をした事は一度もなく今回は良い機会ですので、この場をお借りして、彼らの基本情報オススメの盤をご紹介していこうとうと思います。

ザ・サーチャーズリヴァプール出身の4人組です。出身地と言い「ベース、ギター2本、ドラム」という4人編成と言い「メンバー全員が歌える」点、そして、デビュー前にハンブルグのスタークラブにて修行巡業ライブを行っている点などなど、何かと「ビートルズ」との共通点が多い彼ら1963年にUKパイレコードから1stシングル「Sweets for my sweet」にてデビューしております。パイレコードと言えば「キンクス」となるでしょうが、彼らキンクスは1964年デビューですので、当時のブリティッシュビートグループの中でも、実はこのサーチャーズ、かなり早いデビューと言えるでしょう。それでは1963年の記念すべき1stアルバム「Meet The Searchers」(UKオリジナルMONO盤)に針を落としてみましょう。

前述のドリフターズのカバーであり1stシングルの「Sweets for my sweet」から始まります。多くの曲でリードヴォーカルをとる「トニー・ジャクソン」は、その高く甘い歌声が特徴なのですが、もう一つ注目なのは、彼の奏でるEpiphoneのRivoliベース(セミアコベース)のサウンドなのです。これはUKオリジナル盤で聴いたからこそ気づく音なのですが、ソリッドボディのベースとは異なる少しこもった音色が、少ない音数でも抜群の存在感を放っており、サーチャーズ・サウンドひとつの特徴となっております。そこにリードギターの「マイク・ペンダー」、リズムギターの「ジョン・マクナリー」という2本のギタリスト、最後は「歌えるドラマー」こと「クリス・カーティス」のシンプルでありながらここぞのフィルインで存在感を放つドラム、そこに乗っかってくる全員が歌える強みを生かしたコーラス!さらに付け加えて言うならば、やはりUKオリジナル盤だからこその「ダイレクトな音圧」が素晴らしい!

ビートルズと同じくハンブルグ修業をしていただけのことはあり、1stアルバムからコーラスも演奏も圧倒的に完成されている事が分かります。選曲も「Money」「Stand by me」「Twist and shout」など定番のR&Bから、サザンオールスターズもカバーした「恋の特効薬(Love Potion No. 9)」など、当時のアメリカのヒット曲を忠実にカバーしており、なおかつ日本でも有名なピート・シーガ―のフォークソング「花はどこへ行った」もプレイされているところも注目のポイントでしょう!ザ・バーズより早い段階で、フォークソングをバンドで演奏する「フォークロック」的なアプローチを1963年時点で行っている点はロックの歴史上でも非常に興味深いですね。

このアルバムは当時イギリスでは2位まで上がる大ヒットを記録し、その後も数枚のアルバムをリリースしておりますが、残念ながら徐々にチャートの順位は下がり人気もフェードアウトしてしまいます。改めて彼らのアルバムを聴いてみると、たとえばエリック・バードン(アニマルズ)のような黒いボーカリストがいるわけでも、前回ご紹介したフレディ&ドリーマーズのような強烈なコミカルさもありません。ピーター・ヌーン(ハーマンズハ―ミッツ)のようなアイドル的なキュートなルックスもなく、アラン・プライス(アニマルズ)イアン・マクレガン(スモールフェイセズ)の様な意表を付いた変化を付けられるような鍵盤弾きもバンドにはおりません。黒人R&Bを中心に演奏していながら、どこか英国的で抑えられた演奏に終始するのが魅力なのですが・・・。しかし彼ら最大の弱点は楽曲がカバーのみで構成されており、オリジナル曲を書けなかったという事実でしょう。それこそがグループを短命に終わらせてしまった理由の一つだと思います(一応ドラムのクリスが1965年のアルバムで数曲オリジナルを書いていますが、そこまでのヒットはしませんでした)。そう書きながらも、今回はもう一枚「Hear Hear」(USオリジナルMONO盤)も併せてご紹介したいのです!

こちらは前述して来たとおりデビュー前の1963年に行われたハンブルグ「スタークラブ」での修行公演をレコーディングしたライブ盤なのですが、後のガレージロックに通じる、ロックのダイナミックさや熱気が込められており「エフェクターも使っていないのに4人だけでここまでのグルーヴが出せるのか!」と彼らの演奏力の高さを痛感します。音楽ですらテクノロジーに依存し過ぎている・・・そう思われる読者様には新鮮に響く盤と言えるでしょう。こちらのライブ盤「UKオリジナル盤(フィリップス)」は19曲入りの2枚組みで、既にレア盤となっており、見かけなくなって参りました。今回のUS盤はそこからセレクトし1枚にまとめた盤(残りの音源はラットルズとのカップリングで後発されています)となりますが、内容的にもプライス的にもコレで十分!と言えるでしょう。お聴きになる読者は本盤を見つけて、ぜひ聴いて欲しいところです。

ちなみに余談ですが、後のロックシーンにはほとんど爪痕を残すことが出来なかったサーチャーズなのですが、実はドラムの「クリス・カーティス」は、サーチャーズ脱退後の1967年「ラウンドアバウト」というバンドを結成しております。このバンド、後にジョン・ロードとリッチー・ブラックモアが加入し、「ディープ・パープル」としてデビューする事になるのですが、クリス自身はデビューを待たずして失踪し、音楽業界から引退したそうです・・・サーチャーズや彼が居なければパープルも誕生していなかった!コレちょっとしたポイントですよね(笑)

そんなわけで素晴らしい演奏力とグルーヴを持ちながらも、同年代に活躍したバンドと比べ、いまいち個性もカリスマ性もなく、オリジナル曲を書けない弱点のため65年を最後に消えてしまったサーチャーズ。ここまで書くと全く良い印象を持たれないかもしれませんが、ビートサウンドの典型とも言うべき、バランスの取れた演奏とコーラスワークこそは一種の「職人芸」とも呼べる魅力があり、バンドマンや僕のように「刺さる」人も多く存在しているのも事実!かなり玄人的なバンドですが、ぜひこの機会に聴いてみて頂ければと思います。今夜はコレら2枚を聴いてグッスリ眠らせて頂きましょう!ではまた次回をお楽しみに!

《Starman★アルチ筆》

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