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ハウリンメガネの『スーパーギタリスト列伝』 (五人目) 「ジョン・フルシアンテ」でレッチリ完全復活!!

2022-05-14 17:20:17 | 『ハウリンメガネ』コラム集

He is back!

もう皆様聴いただろうか?
今年頭に飛び込んできたニュースリリースに歓喜した方も多かろう。
ジョン・フルシアンテ復帰後のレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、満を持してのアルバム発売である。

2019年末、突如「ジョン・フルシアンテ、RHCPへ復帰」が大ニュースとなるも、復帰後のライブ映像もほぼ出回らず、ファンをやきもきさせた彼らだが、今年の4月1日、ついに新作「アンリミテッド・ラヴ」をリリース(私?当然アナログで買いました)。

現代において最も影響力のあるギタリストの一人であるジョン・フルシアンテ。
筆者も御多分にもれず彼のことは大好きで昔から追いかけているギタリストの一人である。
スーパーギタリスト列伝、今回はRHCPの最新作にしてジョン・フルシアンテ再復帰第一作となる「アンリミテッド・ラヴ」を題材に最新のジョン・フルシアンテとその変化について考察してみよう。

まず、今までのジョンのプレイについて。
ジョンは「白いジミヘン」の異名を持つとおり、ファンク、ブルースロックフィールの強いギタリスト。
元々RHCP初代ギタリストのヒレル・スロヴァクの大ファンで、ヒレル亡き後のRHCPに加入できたのはヒレル直系のプレイヤーだったからといってもいい。
マザーズ・ミルク、ブラッド・シュガー・セックス・マジックの頃のジョンが弾くギターはまさにヒレル直系といっていいファンキーかつパンキッシュな奔放なエネルギーに満ちたロックギターで(といってもこの頃からすでに後に通じるメロウなプレイも多分に含まれている)、この頃のアルバムをRHCPの最高傑作に挙げる人も多い。

その後、ショウビズ業界でのストレスからドラッグ中毒に陥って一度目の離脱(この前後にソロアルバムを2枚出している。2ndについては「クスリを買う金欲しさに出したんだ。今では後悔している」と語っているがジョンのメロディセンスの良さが剥き出しになっており、私は好き)。

1999年にフリーを筆頭にした友人達の助けを得てドラッグ中毒を克服しRHCPへ復帰。第一作のカリフォルニケイションでは味のあるメロウなプレイを強く打ち出したが、二作目のバイ・ザ・ウェイから一気にクリエイティビティが爆発。脱退前のハードさから復帰後のメロウさまで縦横無尽に行き来し、三作目のスタジアム・アーケディウムでは大量のエフェクトを駆使した複雑なサウンドテクスチャを構築。
一体どこまでいくのだろうか、と思った矢先、自身の音楽を追求したいとの理由で再度の脱退をしたのが2009年。
以降はエレクトロミュージックの世界へとのめり込んでいき、このままそっちの方向へ走っていくのかしら、と思ったところに今回の再復帰である。

10年の時を経てジョンはどんなギタリストになったのか、ドキドキしながら盤に針を落とした私。
ここからは今作で気づいた変化を箇条書きで拾っていこう。

・ギターリフで引っ張らなくなった
過去のジョンはカッティングにせよコードにせよフックのあるリフ的なフレーズで楽曲を引っ張っていくことが多かったが、今作では「A3.Aquatic Mouth Dance」のようにワンノートカッティングの繰り返しだったり、コードも白玉で伸ばすなど、耳を引っ掛けるのではなく、耳に残りつつもさらりと流れるようなフレージングが多い。「B3.It’s Only Natural」でのコード一発をディレイで飛ばすような間を活かしたバッキングもクール。

・過剰にエフェクティヴなプレイがなくなった
スタジアム・アーケディアムに比べてエフェクティヴな音がほぼ無くなっている。特にシーケンスフィルタ系のエフェクトは皆無。おそらくスタジアム〜でのジョンはエレクトロミュージック的なものに心が寄っており、その発露がシーケンスフィルタ系エフェクトの多様だったのだと思われる。
今作では「A1.Black Summer」で聴けるトレードマークのBOSS CE-1と思わしきコーラス・ヴィブラートサウンドや「C5.One Way Traffic」でのショートリバーブを活かしたカッティングなどジョンらしいエフェクトは聴こえるが、あくまで楽曲の彩りとして使っており、派手なエフェクトを前面に出した音はない。本人もインタビューで語っているが自身の音楽的欲求を出したいというエゴイズムがなくなり、よりバンドと溶け合おうという意識がこの音作りに出ていると思う。

この流れでもう一点。

・ワウがジェントルになっている
ジョンのワウといえばIbanezのWH10(私も再発のv3ですが持ってます)であり、「ワウワウ」というより「ギャウギャウ」というべき攻撃的なワウサウンドがジョンのワウサウンドだったが、今作でのワウプレイはとかくジェントル。
「B1.Poster Child」や「D2.Let‘Em Cry」でのワウプレイは柔らかく音を滲ませるような使い方に終始しており、これまた楽曲の呼ぶ音に合わせて自身の音を変えた結果であろう。

・歪みの質感が変わった
今作は基本的にジョン印といえるオールドマーシャルと思わしきナチュラルなクランチトーンが大半を占めるが、「C1.These Are The Ways」の中間部で聴けるヘヴィなバッキングなど強く歪んでいる箇所もある。
過去のジョンであればBOSS DS-2でのハイミッドが強調された粒子の細かいディストーションで弾きそうな箇所なのだが、今作では逆にローミッドの強調された粒の粗いファジーなドライヴトーンで弾いている。
またこれに関係するのか、ギターソロで使う音がウーマントーン寄りになっている。特に「B4.She’s A Lover」のエンディングでのギターソロはワウを踵側に踏んでいるような音でいなたく太いイイ音をしている。

そしてこれがここまで書いた要素の根底となる最重要なポイントなのだが、
・フリーとのコンビネーションが抜群によくなった
これに尽きる。

スーパーギタリスト列伝なのでここまでジョンの話に終始してきたが、実を言うと今作の主役はフリーだといっていい。明らかにもう一段上手くなっている。
今作でのジョンのギターがシンプル・イズ・ベストなプレイになっているのはフリーのベースラインが素晴らしいからだ。
ベースラインだけでコード進行を表現しつつ、ボーカルとギターのカウンターメロディを入れ、ドラムと一体となりバンドを前進させていくとんでもないプレイの嵐である(元々バケモノ級に上手いベーシストだが今作はフリーの最高傑作といってもいいくらい上手い)。
フリーのベースが楽曲の土台を支える(ボトムを支えるとかそんな話ではなく、本当に楽曲の根底をベースが支えている)ことでジョンのプレイが輝きを増す。
いいベーシストはギタリストの魅力を倍加させる。

総じて今作でのジョンの印象を一言で表すならば「一皮剥けた」。
思うにバイ・ザ・ウェイ〜スタジアム・アーケディウムでのジョンは自身の音楽的欲求(エゴイズム)をすべてRHCPにつぎ込んでいた。
それはある意味でRHCPをジョンの色に染めるという事であり、実際フリーはバイ・ザ・ウェイの製作中にジョンと衝突が絶えなかったと語っている。
その結果、友好的な決別だったもののジョンはバンドから離脱。RHCPは新たにジョシュ・クリングフォッファーという才能あるギタリストを迎えたもののやはり何かが違うことを隠せなかった(個人的にジョシュと作った2枚も良作だと思うし、ジョンがドラッグ問題で離脱した後、デイヴ・ナヴァロ(ジェーンズ・アデクション)を迎えて出したワン・ホット・ミニットも味わいは違えど良作だと思っているが、今作でやはりジョンはRHCPのギタリストとして別格、ヒレルと並ぶマスターピースであることが証明されたと思う)。
そんなジョンとRHCPが10年の時を経て、エゴイズムを捨てることに成功した結果が今作には現れている。

「アンリミテッド・ラヴ」、無制限の愛とはよくぞ名付けた。
全ギタリスト、全ベーシスト、全ミュージシャン必聴の名作。
ギタリストたちよ、やはり愛だ!無制限の愛が音楽を深化させる!
聴け!買え!アナログで!

さぁ、もっかい回そうっと。
じゃ、また!

22/5/14追記
なんてこった!昨日発売のギタマガ
(ジョン・フルシアンテ大特集号)を買ったら本人インタビューで筆者の予想より面白いアプローチをしているのが判明!


特にオーバーダブで使われたギターや今回のアプローチに至るまでの意識の流れなど
「え!そうだったのか!」の連続!
こっちもマストバイ!

《 ハウリンメガネ筆 》



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