夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

ガーディアン紙に、「戦争を終わらせろ」という珍しい意見が載った。

2022-11-06 11:17:33 | 社会


 11月6日、英紙ガーディアンに、「我々は、この戦争を終わらせなくてはならない」という意見opinionが載った。「この戦争をすぐに終わらせなければならない緊急の理由はたくさんある」というものである。恐らく、この意見は、アメリカ民主党内左派が、ウクライナへの軍事支援には反対しないが、和平への外交交渉も模索すべき、というバイデンへの書簡が、民主党主流派から、ロシアを利するものとみなされ、反撃されて撤回したことを受けてのものだろう。この意見の主旨は、撤回された書簡の意見をさらに進めたものと思われる。

 しかし、このような「すぐに終わらせるべき」という意見は、西側の主要メディアでは、非常に珍しく、ほとんど見られないものだった。
 西側の主要メディアの論調は、西側政府、特にアメリカバイデン政権の主張とほぼ同じで、すべきことは、「ロシア軍をウクライナから排撃することで、ここで停戦するのは、ロシアの侵略を認めることに繋がり、そのためにウクライナへの軍事支援をやめてはならない」、つまり、戦争を継続すべき、というものだからである。言い換えれば、今の段階での和平交渉は、ウクライナ領内のロシアの一方的な支配地域を認めることになり、ロシア軍が撤退しないのなら、それを軍事力で排除するのが何よりも優先されるべきだ。そのためには、何人ウクライナ人が死のうと国土が破壊されようと、世界的食糧不足やエネルギー不足で貧国地域の人びとや庶民階層が餓死しようと困窮しようと、ロシアが悪いだから、我慢しろ、というものである。
 
 この意見の中で、ウクライナを「脆弱な民主主義国家 」としており、2020年に、「ジャーナリストに対する 171 件の身体的攻撃を含む、229 件の言論の自由 」抑圧があり、NGOフリーダムハウスが2021年2022年に「民主化率」を極めて低く評価したこと、ゼレンスキー政権は政府方針に反する「テレビ局を禁止し、11の野党政党を禁止している」とことに言及し、このまま戦争が長引けば、戦争のために言論封殺が正当化され、「ウクライナの脆弱な民主主義は、最終的な結果に関係なく生き残ることはできない」と主張している。それが、「この戦争をすぐに終わらせなければならない緊急の理由」の一つだというのである。
 さらに、この「戦争は世界経済にとって災難であり、石油価格の上昇に伴い各国政府がより多くの化石燃料を求めて環境を危険にさらし、穀物輸出が枯渇するにつれて数百万人が飢饉に直面する脅威となっている。軍事強化は、ワシントン DC、ヨーロッパ全体、そして世界中で増加しています 」とし、これらの理由は「この戦争を終わらせるのに十分なはず 」だと主張している。これらの主張は、西側メディアの論調に完全に反しており、ガーディアンでも極めて稀なものと言える。

西側メディアの論調
 こういった意見が西村主要メディアに載ることが珍しいのは、それだけではない。この中で「NATO が挑発的な東方拡大 」をしたことや、「米国は、ロシアの影響力に挑戦し、ネオナチ組織に関連する強力な極右勢力を含む、ウクライナの一連の政治的プレーヤーを支援して」きたことにも言及していることにも言及していることだ。
 西村メディアは、2月のロシアの侵攻以来、NATOの東方拡大、ウクライナに現存するネオナチ勢力、ゼレンシキー政権の言論弾圧については、一切記事にはしなかった。少なくとも、大きく取り上げることはなっかた。これらの指摘はすべて、ロシアの利益になることで、あたかも言ってはならないこととして扱ったきたのだ。さらには、ウクライナでの戦争が2022年2月に、突然始まったことのように書いている。これは、過去の日本の戦争が真珠湾攻撃から始まったとするようなもので、それ以前の日本のアジア侵攻にはなかったとするようなものである。現実には、ウクライナでは2014年から、親ロシア武装勢力と政府軍との内戦があり、国連の報告でも14,000人が殺害されているのである。
 ガーディアンも含め西側メディアは、ロシアの侵攻以前は、2014年からの内戦やウクライナの極右勢力の危険性に関する記事を数多く載せていた。それが、2月の軍事侵攻から一斉に記事にしなくなったのである。

 ガーディアンにこのような、今までと異なる論調の記事が載るのは、終わる気配がまったくないこの戦争の事実を直視する姿勢が表れてきたのかもしれない。西側メディアは、戦争の継続が、核戦争の危険性を増大させ、世界を破滅的状況に陥れることへの危惧に、やっと気づいた証なのかもしれない。
 
コメント
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