夏原 想の少数異見 ーすべてを疑えー

混迷する世界で「真実はこの一点にあるとまでは断定できないが、おぼろげながらこの辺にありそうだ」を自分自身の言葉で追求する

「ウクライナ侵攻」戦争は何年も続き、結局、ロシア・欧米共倒れ?

2023-01-09 11:37:36 | 社会

 ロシアによるウクライナ侵攻で始まった戦争は、年を越しても終わる気配はまったくない。ウクライナのゼレンシキー政権は、クリミア半島まで含めた「領土奪還」を目指しており、NATOすなわち欧米はそれに合わせて大量でかつ強力な兵器の供給を続けている。
 それに対し、ロシアはウクライナで敗退することは、ロシアという国家存亡の危機と捉えているのである。それは、2022年12月20日NHKの取材に、ロシアの政治学者ドミトリー・ヴィタリエヴィチ・トレーニン (アメリカのワシントンに本部を置くカーネギー国際平和財団のモスクワセンター所長)が、「ロシアが敗北すれば、すべてが失われます。この戦争は、ロシアの国家(государство)、そしてロシアの国家性(государственность)の存在をかけたものであることを理解しなければなりません。」と答えていることからも明瞭である。ロシアにとっては、かつての「ソ連圏」であった東欧まで親西側勢力となり、「兄弟国」と思っていたウクライナまでも、2014年に親ロ派のヤヌコヴィッチ大統領が武力で追放され、アメリカ主導の西側が国境まで迫ってきていると感じているからだ。ウクライナでくい止めなければ、次は、ロシアという国家そのものが、危ういものとなる。こういった思いは、プーチン個人だけのものではなく、トレーニンが言うように、多数のロシア国民のものと考えるのが自然である。
 そもそも、侵攻したロシアが悪いのだから、ウクライナにいるロシア兵は敗北して全員死ぬべきだ、などと考えるロシア人などいないのだ。国際法違反であろうとなかろうと、戦争犯罪であろうとなかろうと、自国の兵士は生きていて欲しいのである。また、あり得ないが、プーチンが撤退を命じたとしても、その後のロシアの再侵攻を防ぐために、西側はNATOをさらに強化し、強大な軍事力でロシアをとり囲み、ロシアには武装蜂起すら要求するだろう。ウクライナに取り残された親ロ派ウクライナ人は、少数とはいえ、2014年以降の内戦のようにウクライナ民族主義者に虐殺される危機(ロシア兵がブチャで行ったように)を迎える。まさにその時は、ロシア国家は壊滅寸前に追い込まれるのである。この戦争は、表面的にはロシア・ウクライナ戦争だが、実態は西側とロシアの戦争なのである。
  欧米は、主要メディアの論調から分かるように、欧米、特にアメリカの強力な兵器は、ロシアのものよりはるかに優っているので、ウクライナ軍は何年かかろうとロシア軍と親ロ派勢力を撃退できると信じているようだ。それは、侵略を開始したロシアに対する正義の戦争というわけである。しかし、正義であろうとなかろうと、ロシアは国家の存亡の危機と捉えている以上、負けるわけにはいかず、総力を挙げて戦うしかないのである。それを抑えるには、ロシア領内の軍事施設を全滅させるしかないが、それは全面戦争を意味し、西側はその選択はできない。
 
結局、ロシア・欧米共倒れ?
 戦争は終わる見通しはない。そしてどうなるのかと言えば、両者ともに疲弊することである。見通しは立たない中で、それだけは間違いないだろう。ロシアは経済も国民生活も極度に疲弊する。西側は、特にヨーロッパ諸国では、エネルギー価格の高騰に見られるように、ロシアほどではないとして、経済は低迷し、国民生活の困窮は免れない。大量の軍事支援による軍事費の著しい増加(既に、ウクライナへ供給する弾薬は不足が指摘されており、生産を増加させなければならない。それは、1発数億円のミサイルを含む)により、福祉予算は削減される。著しい格差・不平等は、さらに加速するのである。恐らく、その時になって、ようやく和平の気運が生まれるだろう。それは勿論、両者ともに負けられない戦争なのだから、両者ともに敗北しないものである。つまり、簡単に言えば、現状維持での停戦しかないのである。
 
 
コメント
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